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7歳の秋
赤ちゃん大爆発
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「飯食ったら、ニール達の手伝いに行くつもりなんだよ。まだ遊べない。」
ウィルが言った言葉は、パープルスライムを一度通り抜けて戻って来た。
帰ってきたのに、またどっか行っちゃうの?
遊べないの?
なんで?
赤ちゃんに理屈は通用しない。
今までだってなんとなく、お仕事なるものを邪魔しちゃいけないと分かっているからちゃんとお見送りはするが、そこまでだ。
行って帰って来たらおしまい!一緒に遊べる!
そう思っていたのに、ひどく裏切られた気分だ。
スライムは鳴かないし、泣かない。
そうする為の器官が無いからだ。
けれどもだからって感情が無い訳じゃないし、自己主張ができない訳じゃない。
「うぉっ!落とす!」
「あらあら。」
ビチビチと活きの良い魚のように暴れ出したパープルスライムにウィルは驚きつつも、落とさないようにしっかりと支える。
なんだか懐かしそうな目をしているシルビアが気になるが、それ以上に急に暴れ始めたパープルスライムの方が気になる。
今まで大人しくて跳ねることすらそうなかったパープルスライムなのに、今はウィルの腕の中で反り返ったりかと思えばウィルにボディをぶつけたりと大忙しだ。
「どうしたんだ?どっか痛いのか?」
「あら、懐かしー。クリスとカイルも、つい最近までリースが仕事行く度にやってたわよねー。」
「思えばセドリックもしてたわねぇ。子供の成長は早いわぁ。」
ウィルが見当違いなことを言うものだから、パープルスライムはますますビチビチと暴れる。
のんびりとしたママ二人の意見から察するに、お父さんお仕事行かないでの舞いであろう。
しかしだからと言って、長男のメンタルケアもしてあげたい。
それが出来るのは、召喚士として契約しているニールだけの筈だ。
「ほら、パープルスライム。ウィルさんが帰って来るまで私と一緒に遊びましょう?」
クィル神官が宥めるようにそう言ったけれど、パープルスライムのイヤイヤは止まらない。
関係ない奴は下がってろということかと思い少し距離を取れば、逆に火がついたように暴れ出す。
どうやらクィル神官も一緒に居ないとダメらしい。
「あっ!ミルク吐いた!」
「泣きすぎたのかしら………タオル取ってくるわね!」
そうこうしているとパープルスライムは気が付けば先程飲んだばかりのミルクを吐き出していた。
どうやらまだ消化しきれてなかったミルクが、興奮と大暴れで逆流してしまったようだ。
けぽけぽと苦しそうなボディを撫でてやるも、イヤイヤ状態は止まらない。
「………これ無理ね。多分、暫く止まらないわよ。」
呆れたようにマチルダからそう言われ、ウィルは頭を抱えたくなった。
どうしてこういう時にこういう騒動が起きるんだ………。
早くニールの所に連れて行ってやりたいのに………。
「ん?どうした?」
そう考えていたウィルだったが、シグルドはそんなウィルを大きなボディでグイグイと押して椅子に座らせた。
一体どういうことだろう。
首を傾げるウィルに、シグルドは珍しくボディを寄せた。
大きさから少し圧迫感があるが、それでも柔らかくされたボディの押し付け方は優しい。
「ああ、そうですね。シグルドはお兄ちゃんですから。弟に弱った所は見せられない。」
クスクスと笑いながらクィル神官がそう言えば、シグルドは照れ臭そうにボディを震わせた。
そう。
シグルドには兄として、そして契約モンスターとしてのプライドがある。
今センチメンタルな気持ちな状態なのを、見られたくないのだ。
「………なるほどな。じゃあ、今日はゆっくりするか。」
ぽんぽんとパープルスライムのボディを撫でつつ、シグルドのボディに寄りかかる。
嗚咽するようにひくひくと震えていたパープルスライムは、少し落ち着いてきたのかグリグリとまたボディを押し付け始めた。
「ニール達が帰ってくるまでいっぱい遊ぼうな。」
ウィルが言った言葉は、パープルスライムを一度通り抜けて戻って来た。
帰ってきたのに、またどっか行っちゃうの?
遊べないの?
なんで?
赤ちゃんに理屈は通用しない。
今までだってなんとなく、お仕事なるものを邪魔しちゃいけないと分かっているからちゃんとお見送りはするが、そこまでだ。
行って帰って来たらおしまい!一緒に遊べる!
そう思っていたのに、ひどく裏切られた気分だ。
スライムは鳴かないし、泣かない。
そうする為の器官が無いからだ。
けれどもだからって感情が無い訳じゃないし、自己主張ができない訳じゃない。
「うぉっ!落とす!」
「あらあら。」
ビチビチと活きの良い魚のように暴れ出したパープルスライムにウィルは驚きつつも、落とさないようにしっかりと支える。
なんだか懐かしそうな目をしているシルビアが気になるが、それ以上に急に暴れ始めたパープルスライムの方が気になる。
今まで大人しくて跳ねることすらそうなかったパープルスライムなのに、今はウィルの腕の中で反り返ったりかと思えばウィルにボディをぶつけたりと大忙しだ。
「どうしたんだ?どっか痛いのか?」
「あら、懐かしー。クリスとカイルも、つい最近までリースが仕事行く度にやってたわよねー。」
「思えばセドリックもしてたわねぇ。子供の成長は早いわぁ。」
ウィルが見当違いなことを言うものだから、パープルスライムはますますビチビチと暴れる。
のんびりとしたママ二人の意見から察するに、お父さんお仕事行かないでの舞いであろう。
しかしだからと言って、長男のメンタルケアもしてあげたい。
それが出来るのは、召喚士として契約しているニールだけの筈だ。
「ほら、パープルスライム。ウィルさんが帰って来るまで私と一緒に遊びましょう?」
クィル神官が宥めるようにそう言ったけれど、パープルスライムのイヤイヤは止まらない。
関係ない奴は下がってろということかと思い少し距離を取れば、逆に火がついたように暴れ出す。
どうやらクィル神官も一緒に居ないとダメらしい。
「あっ!ミルク吐いた!」
「泣きすぎたのかしら………タオル取ってくるわね!」
そうこうしているとパープルスライムは気が付けば先程飲んだばかりのミルクを吐き出していた。
どうやらまだ消化しきれてなかったミルクが、興奮と大暴れで逆流してしまったようだ。
けぽけぽと苦しそうなボディを撫でてやるも、イヤイヤ状態は止まらない。
「………これ無理ね。多分、暫く止まらないわよ。」
呆れたようにマチルダからそう言われ、ウィルは頭を抱えたくなった。
どうしてこういう時にこういう騒動が起きるんだ………。
早くニールの所に連れて行ってやりたいのに………。
「ん?どうした?」
そう考えていたウィルだったが、シグルドはそんなウィルを大きなボディでグイグイと押して椅子に座らせた。
一体どういうことだろう。
首を傾げるウィルに、シグルドは珍しくボディを寄せた。
大きさから少し圧迫感があるが、それでも柔らかくされたボディの押し付け方は優しい。
「ああ、そうですね。シグルドはお兄ちゃんですから。弟に弱った所は見せられない。」
クスクスと笑いながらクィル神官がそう言えば、シグルドは照れ臭そうにボディを震わせた。
そう。
シグルドには兄として、そして契約モンスターとしてのプライドがある。
今センチメンタルな気持ちな状態なのを、見られたくないのだ。
「………なるほどな。じゃあ、今日はゆっくりするか。」
ぽんぽんとパープルスライムのボディを撫でつつ、シグルドのボディに寄りかかる。
嗚咽するようにひくひくと震えていたパープルスライムは、少し落ち着いてきたのかグリグリとまたボディを押し付け始めた。
「ニール達が帰ってくるまでいっぱい遊ぼうな。」
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