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Eの悔恨
①
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私には幼い頃からの自負があった。
それは私が誰よりも優れているという確固たる事実だ。
頭脳も、魔力も、力も………そして顔も。
勿論、だからといって他者を侮っている訳ではない。
こんな自負なんて、油断していると足元からごっそりと崩れ去る砂上の楼閣だということは分かっていたから。
私は常に努力を重ね、誰からも引きずり下ろされないようにしてきた。
私のちっぽけなプライドだ。
しかしそれは私自身が選んだ道だ。
だというのに、私はそんな日々に疲れてしまった。
他の騎士達から向けられた嫉妬ややっかみの視線、私の顔と実家の権力や金ばかり見る他人達。
その何もかもにうんざりとしていた。
ましてや実力もあるから第三王子の護衛騎士団の一員になってしまったことで、その視線はますます強くなるばかり。
だから言い訳をするならば、私は本当に疲れていたしイライラしていたんだ。
『何処へ行く。』
聖女が見付かったあの日、盲目の聖女を甲斐甲斐しくエスコートをしていた見窄らしい男。
正直に言えば私は見下していた。
盲目が故に爪弾きにされていた聖女と共に身を寄せ合って暮らしていた謎の男。
第三王子も頬を赤く染め聖女を褒めちぎり囲む中、男は興味無さそうな顔で欠伸をしながら儀式の間を出て行った。
平民の分際で、なんて無責任な奴だ。
こういう奴は聖女が権力と富を持ったら付き纏うに決まっていると、私は何の根拠もなくそう思い込み男に声を掛けた。
否、声を掛けたというよりも威圧したという方が正しかった。
『別に。貴方には関係無いのでは?』
しかし、男は予想に反して当たり前のように私を睨み付けて反論する。
男は身長も低く、華奢というよりもただの痩せぎすな体型だった。
それなのに、怯むこともなく男は私に言葉を発する隙も与えずに言葉を続けていく。
平民以下の存在の癖に、なんて無礼な奴だと思った。
殺してやろうか。
どうせこんな男が一人居なくなったことで誰も気にしない。
『アンタ達に俺は羽虫以下の命かもしれないけど、俺だって生きていたいんだよ。』
だが、涙をじんわりと浮かべながらもそう言われた瞬間、私は殴られたような衝撃を受けた。
当たり前の話だ。
誰もが、生きている。
だが私は彼に対して何と思っていた?
私は初めて、自分自身を恥じた。
何も言えずに黙り込む私を見捨てるように、男は背を向けて走り出した。
この時に謝罪をきちんとしていたら、何か変わったのだろうかと今でも思う。
けれども現実の私は何も言えなかったし、どうにも動くことが出来なかった。
これが一度目の、私の後悔
それは私が誰よりも優れているという確固たる事実だ。
頭脳も、魔力も、力も………そして顔も。
勿論、だからといって他者を侮っている訳ではない。
こんな自負なんて、油断していると足元からごっそりと崩れ去る砂上の楼閣だということは分かっていたから。
私は常に努力を重ね、誰からも引きずり下ろされないようにしてきた。
私のちっぽけなプライドだ。
しかしそれは私自身が選んだ道だ。
だというのに、私はそんな日々に疲れてしまった。
他の騎士達から向けられた嫉妬ややっかみの視線、私の顔と実家の権力や金ばかり見る他人達。
その何もかもにうんざりとしていた。
ましてや実力もあるから第三王子の護衛騎士団の一員になってしまったことで、その視線はますます強くなるばかり。
だから言い訳をするならば、私は本当に疲れていたしイライラしていたんだ。
『何処へ行く。』
聖女が見付かったあの日、盲目の聖女を甲斐甲斐しくエスコートをしていた見窄らしい男。
正直に言えば私は見下していた。
盲目が故に爪弾きにされていた聖女と共に身を寄せ合って暮らしていた謎の男。
第三王子も頬を赤く染め聖女を褒めちぎり囲む中、男は興味無さそうな顔で欠伸をしながら儀式の間を出て行った。
平民の分際で、なんて無責任な奴だ。
こういう奴は聖女が権力と富を持ったら付き纏うに決まっていると、私は何の根拠もなくそう思い込み男に声を掛けた。
否、声を掛けたというよりも威圧したという方が正しかった。
『別に。貴方には関係無いのでは?』
しかし、男は予想に反して当たり前のように私を睨み付けて反論する。
男は身長も低く、華奢というよりもただの痩せぎすな体型だった。
それなのに、怯むこともなく男は私に言葉を発する隙も与えずに言葉を続けていく。
平民以下の存在の癖に、なんて無礼な奴だと思った。
殺してやろうか。
どうせこんな男が一人居なくなったことで誰も気にしない。
『アンタ達に俺は羽虫以下の命かもしれないけど、俺だって生きていたいんだよ。』
だが、涙をじんわりと浮かべながらもそう言われた瞬間、私は殴られたような衝撃を受けた。
当たり前の話だ。
誰もが、生きている。
だが私は彼に対して何と思っていた?
私は初めて、自分自身を恥じた。
何も言えずに黙り込む私を見捨てるように、男は背を向けて走り出した。
この時に謝罪をきちんとしていたら、何か変わったのだろうかと今でも思う。
けれども現実の私は何も言えなかったし、どうにも動くことが出来なかった。
これが一度目の、私の後悔
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