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Aの真実
①
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―――初めて彼と会った時、嗚呼、母がまた変なのを拾って来たのだなと思った。
スラム街の子供よりも小さな身体は、吹けば飛ぶのではないかと思う程に細く頼りない。
そんな身体だからか酒には弱く、少し呑んだだけで前後不覚になる程だ。
俺は正直、コイツと関わりたくないと思っていた。
酒も呑めないし、そもそもこんな弱い身体じゃ仕事も出来ず足手まといでしかないだろうと。
母は社員との飲み会が好きだから、頻繁に開催している。
勿論、社員達の都合が優先だから、出たくない奴は出なくて良い。
評価が下がる訳でもないし。
それなのにアイツは、呑めないくせに好きなのか毎回参加してはチビチビと呑んでいた。
そんなことをされると、嫌でも視界に入る。
新人教育という名のお守りを任されているあの男が哀れだなと思ったが、見れば嬉々として世話を焼いている。
空調の風が強いのか寒がる軟弱さなのに、あの男はこの間わざわざ買ったというブランケットで包んでやっていた。
アイツの何が良いんだ?
母も妙に気に入ってるようだが、媚びるのが上手いのか?
そう思いながら仕事をしている彼を見ていて、気付いた。
彼は良く気付き、良く働いていた。
しかもそれは媚び等ではなく、そうすることで労働環境が良くなると分かっている人間の動きだった。
彼はこういった仕事をしたことがあるのだろうか?
そういう風には見えないが………
「お疲れ様です。今日は暑いので、水分補給はしっかりしてくださいね。」
しかし、彼の仕事は正直誰よりも早かったし、正確だった。
外商先や営業先の資料を頼めば、誰よりも分かりやすく見やすい資料をハイスピードで用意してくれるし、しかも心の底からの労りの言葉もセットだ。
そんなことされたら、気になってしまうに決まってる。
だがそれは全社員同じなので、勘違いはしない。
そもそも彼にとっての【特別】は―――
「先輩!俺は思うんですよ。」
「んー?何をだ?」
楽しそうな笑い声。
彼は役職関わらずある意味一定の態度を示すが、教育担当のあの男には休憩中や業務時間外等に良く笑い良く懐いていた。
やはり最初に世話を焼いたから懐いているのか?
飲み会だってあの男は甲斐甲斐しく彼の世話を焼いていたし、そもそも二人とも社員寮として商会が持っているアパートで隣同士の部屋だからっていうのもあるのだろう。
―――ズルいと、思った。
明らかに【特別】なあの男と、その他大勢でしかない俺。
こんなにも差が広がるならば、俺だって彼の教育担当になりたかった。
ふわふわと笑う彼を、愛しそうに見つめるあの男。
付き合ってるのだろうか。
ただほんの少し、認識されるのが早かっただけなのに。
内緒話をするように、身長差や体格差を気にしていないような素振りで身を寄せ合って笑う。
ズルいだろ。
その位置に、俺だって居たかった。
俺はそう思いながら、溢れそうな感情を拳に込めて握り締める。
俺の方が、彼を幸せに出来る。
俺は何の根拠もなく、そう思い込んだ。
スラム街の子供よりも小さな身体は、吹けば飛ぶのではないかと思う程に細く頼りない。
そんな身体だからか酒には弱く、少し呑んだだけで前後不覚になる程だ。
俺は正直、コイツと関わりたくないと思っていた。
酒も呑めないし、そもそもこんな弱い身体じゃ仕事も出来ず足手まといでしかないだろうと。
母は社員との飲み会が好きだから、頻繁に開催している。
勿論、社員達の都合が優先だから、出たくない奴は出なくて良い。
評価が下がる訳でもないし。
それなのにアイツは、呑めないくせに好きなのか毎回参加してはチビチビと呑んでいた。
そんなことをされると、嫌でも視界に入る。
新人教育という名のお守りを任されているあの男が哀れだなと思ったが、見れば嬉々として世話を焼いている。
空調の風が強いのか寒がる軟弱さなのに、あの男はこの間わざわざ買ったというブランケットで包んでやっていた。
アイツの何が良いんだ?
母も妙に気に入ってるようだが、媚びるのが上手いのか?
そう思いながら仕事をしている彼を見ていて、気付いた。
彼は良く気付き、良く働いていた。
しかもそれは媚び等ではなく、そうすることで労働環境が良くなると分かっている人間の動きだった。
彼はこういった仕事をしたことがあるのだろうか?
そういう風には見えないが………
「お疲れ様です。今日は暑いので、水分補給はしっかりしてくださいね。」
しかし、彼の仕事は正直誰よりも早かったし、正確だった。
外商先や営業先の資料を頼めば、誰よりも分かりやすく見やすい資料をハイスピードで用意してくれるし、しかも心の底からの労りの言葉もセットだ。
そんなことされたら、気になってしまうに決まってる。
だがそれは全社員同じなので、勘違いはしない。
そもそも彼にとっての【特別】は―――
「先輩!俺は思うんですよ。」
「んー?何をだ?」
楽しそうな笑い声。
彼は役職関わらずある意味一定の態度を示すが、教育担当のあの男には休憩中や業務時間外等に良く笑い良く懐いていた。
やはり最初に世話を焼いたから懐いているのか?
飲み会だってあの男は甲斐甲斐しく彼の世話を焼いていたし、そもそも二人とも社員寮として商会が持っているアパートで隣同士の部屋だからっていうのもあるのだろう。
―――ズルいと、思った。
明らかに【特別】なあの男と、その他大勢でしかない俺。
こんなにも差が広がるならば、俺だって彼の教育担当になりたかった。
ふわふわと笑う彼を、愛しそうに見つめるあの男。
付き合ってるのだろうか。
ただほんの少し、認識されるのが早かっただけなのに。
内緒話をするように、身長差や体格差を気にしていないような素振りで身を寄せ合って笑う。
ズルいだろ。
その位置に、俺だって居たかった。
俺はそう思いながら、溢れそうな感情を拳に込めて握り締める。
俺の方が、彼を幸せに出来る。
俺は何の根拠もなく、そう思い込んだ。
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