スライム牧場番外編

かかし

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ナチオルド子爵令息の華麗なる転落⑥

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拾った野良猫ジェームズは、2日もすれば完全に懐いた。
全く以てチョロいものだと、酒を吞んでとろんとした顔をして寄りかかるジェームズの髪を撫でてやりながら、オズワルドは酒を舐めた。
これはもう、手を出して良いのでは?
最近は市長業務の補助をさせてみても違和感なくスムーズにこなしている。
元々貴族子息だし、身体を動かすことよりも頭を動かすことの方が向いていたのだろう。
しかしその業務は本来、市長のパートナーがやることだということは気付いているだろうか。
髪を撫でていた手をゆっくりと下ろし、そっと唇を撫でる。

「オズ?」

兄と呼ぶのを止めるように言えば、素直に止めた。
愛称で呼ぶように言えば、素直に呼ぶようになった。
なんだこの子は。
試してるのか?
今だって無遠慮に唇を撫でるオズワルドの指を受け入れて、酒の力で潤んだ瞳で上目遣いをしてくる。
これは寧ろ手を出さない方が失礼なのでは?
思わず舌なめずりをすれば、潤んだ瞳に熱が籠る。
やはり試していたらしい。
あー、ほんと。
単純で愚かで可愛い子だ。

「おいで、ジム。」

手をゆっくりと離しながらそう言えば、ジェームズはカッと顔を赤くしつつもオズワルドの膝の上に乗った。
目の前に来た身体は酒臭く甘いロマンチックな夜とは言い難かったが、自分達には丁度の良いのかもしれないと思いながらオズワルドはジェームズの唇を舐めた。
ぴくりとジェームズの身体が震えたが、それが嫌悪ではないことは目を見れば分かる。
閉じられず逸らされることのないその瞳に灯った欲望の熱は、消えるどころか煌々と灯り続けている。
後頭部に手を添え、ほんの少しだけ力を込めればジェームズの方から近付いて来るのだから愛らしい。
酒の味がする触れるだけのキスを交わしながら体勢を変え、ゆっくりとソファに押し倒す。
ベッドじゃないのも、笑える。

「逃げられなく訳だが、良いね?」
「逃がすつもりなんて、最初からないクセに。」

ジェームズは最初は本当に分からなかったけれど、補佐業務を任された時にちゃんと気付いた。
それがどういう意味なのか。
でも本当になのか、今日まで少し不安だっただけ。
オズワルドは見た目だけでは頭も良く、スタイルだって良いからどんな美女だって虜にするだろう。
体格だって立派なのだから、男だって選び放題な筈だ。
それをわざわざ自分みたいな突出した能力も見た目もしていない男を選ぶ筈がないのだと、思えてしまうから。
するりと、オズワルドの首筋を撫でることでジェームズの方からアピールをしてみる。
こういうのはしたこともされたことも無かったから上手く出来ているのか不安だったけれど、オズワルドから喰らうようなキスをされてちょっと上手く出来たのかもしれないと安心した。

「ああ。逃がさないよ。はね、基本的にチャンスは一度しかあげないんだ。」

悪い笑顔をしながらそう言い、オズワルドはジェームズのシャツに手を入れた。
筋肉質だし酒が入っているからか、掌は火傷しそうな程に熱い。
ただキスをして触られているだけなのに、もう溶けてしまいそうだ。
そっと目を開けば、目が合ってドキリとする。
自分とは比にならない程の欲望の炎が灯った目に今から全部喰うぞと宣言されているようで、それだけで腰に快感が走る。
なんて初めてだけど、オズワルドの髪を掻き混ぜるように手を伸ばして舌も動かして、ジェームズなりに必死に応えた。

「ああ。な。」
「ふぇっ………っぁ!」

揶揄うように言われた意味が分かり、ジェームズは顔を赤くして俯いた。
でも嫌じゃない。
全身に込み上げる羞恥を誤魔化すように、ジェームズはキッとオズワルドを睨み上げた。
逆効果だとは、思いもせずに。
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