8 / 9
最低の御伽噺しか得られない僕は(ゆうちゃん視点)
その他大勢は無価値と等しい
しおりを挟む
けれどもその翌日辺りから、大翔は俺にスマホを返す日が増えた。
やはり大翔にとってゆうちゃんが恋慕を抱くのは邪魔なのか?
それともゆうくんと何かあったのか?
どれもこれも口に出せない疑問ばかりで、でも俺は必死に大翔を引き留めてみたけれど、けれども大翔の気を何一つ引けなかった。
―――どうすれば良い?
焦れば焦る程絡まる思考の中で、俺はふと【大翔は無駄を嫌う】という事を思い出した。
食材や時間、そして金。
ギリギリを生きている大翔にとって、無駄は大袈裟じゃなく命取りだ。
だから俺は、ほぼ同じ手段で行くことにした。
衣食住は嫌がるのならばと、大翔専用のノートをわざわざ作ってそれで釣った。
半信半疑で受け取ったが、目に見えて成績が上がったので大翔は上機嫌で俺をゆうちゃんのままで居させてくれた。
それでも放課後は滅多に明け渡してくれないから、俺は学校に居る間だけスマホを渡して空き教室で大翔を抱いた。
終わったら返って来るそれが切なくて仕方ないけれど、所詮はセフレだから何も言えなかった。
『空き教室においで』
そう呼べば来てくれる、抱かせてくれる。
聖人は大翔にとって何の価値も無い存在でも、ゆうちゃんはまだ価値があるんだと思ってた。
でも違ったんだ。
「良かったじゃん、長谷川くん」
でも今思うと、そもそも学校で抱くべきではなかったし、自我を持った時点でゆうちゃんは大翔にとって何の価値も無かったんだ。
しかも余分な存在に目を付けられてしまったから、俺はもう取り返しのつかないことになってしまった。
「待って、待って大翔。何で?何でそれ返すの?何で呼んでくれないの?」
久しぶりに呼ばれた自分の名前。
でもそれは苗字で、下の名前ですらない。
そして突き返された俺のノート。
それだけで、俺は大翔が何をしたいか分かってしまった。
けれども認めたくない。
嫌だ。
「もう要らないから」
それはノートのことではない。
明らかに、【長谷川聖人】と【ゆうちゃん】のことだった。
嫌だ、嫌だ、嫌だ何で!
泣いてしまってはいけないと分かってはいるけれど、涙が止まらない。
大翔の表情が不快そう歪み、ヤバいと思ったけれど口からは縋る言葉ばかりが零れた。
捨てないで。
お願い。
頑張るから、チャンスをください。
「バイバイゆうちゃん。楽しかったよ。フカフカのベッドもありがとう。」
けれども大翔は俺にそう言って手を振ると、踵を返してもう二度と振り向いてはくれなかった。
やめて、おねがい、おいていかないで。
必死に願ってももう遅くて、翌日、大翔は急に【転校】してしまった。
意味が分からなくて居ないと分かってて大翔の生家に行ってももぬけの殻で、公園に行ってホームレス達に聞いて回っても誰も何も知らなかった。
ただ一つ気になったのは、そのホームレス達の中にあの【ゆうくん】は居なかったことだった。
やはり大翔にとってゆうちゃんが恋慕を抱くのは邪魔なのか?
それともゆうくんと何かあったのか?
どれもこれも口に出せない疑問ばかりで、でも俺は必死に大翔を引き留めてみたけれど、けれども大翔の気を何一つ引けなかった。
―――どうすれば良い?
焦れば焦る程絡まる思考の中で、俺はふと【大翔は無駄を嫌う】という事を思い出した。
食材や時間、そして金。
ギリギリを生きている大翔にとって、無駄は大袈裟じゃなく命取りだ。
だから俺は、ほぼ同じ手段で行くことにした。
衣食住は嫌がるのならばと、大翔専用のノートをわざわざ作ってそれで釣った。
半信半疑で受け取ったが、目に見えて成績が上がったので大翔は上機嫌で俺をゆうちゃんのままで居させてくれた。
それでも放課後は滅多に明け渡してくれないから、俺は学校に居る間だけスマホを渡して空き教室で大翔を抱いた。
終わったら返って来るそれが切なくて仕方ないけれど、所詮はセフレだから何も言えなかった。
『空き教室においで』
そう呼べば来てくれる、抱かせてくれる。
聖人は大翔にとって何の価値も無い存在でも、ゆうちゃんはまだ価値があるんだと思ってた。
でも違ったんだ。
「良かったじゃん、長谷川くん」
でも今思うと、そもそも学校で抱くべきではなかったし、自我を持った時点でゆうちゃんは大翔にとって何の価値も無かったんだ。
しかも余分な存在に目を付けられてしまったから、俺はもう取り返しのつかないことになってしまった。
「待って、待って大翔。何で?何でそれ返すの?何で呼んでくれないの?」
久しぶりに呼ばれた自分の名前。
でもそれは苗字で、下の名前ですらない。
そして突き返された俺のノート。
それだけで、俺は大翔が何をしたいか分かってしまった。
けれども認めたくない。
嫌だ。
「もう要らないから」
それはノートのことではない。
明らかに、【長谷川聖人】と【ゆうちゃん】のことだった。
嫌だ、嫌だ、嫌だ何で!
泣いてしまってはいけないと分かってはいるけれど、涙が止まらない。
大翔の表情が不快そう歪み、ヤバいと思ったけれど口からは縋る言葉ばかりが零れた。
捨てないで。
お願い。
頑張るから、チャンスをください。
「バイバイゆうちゃん。楽しかったよ。フカフカのベッドもありがとう。」
けれども大翔は俺にそう言って手を振ると、踵を返してもう二度と振り向いてはくれなかった。
やめて、おねがい、おいていかないで。
必死に願ってももう遅くて、翌日、大翔は急に【転校】してしまった。
意味が分からなくて居ないと分かってて大翔の生家に行ってももぬけの殻で、公園に行ってホームレス達に聞いて回っても誰も何も知らなかった。
ただ一つ気になったのは、そのホームレス達の中にあの【ゆうくん】は居なかったことだった。
10
あなたにおすすめの小説
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』
バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。 そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。 最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる