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「吉塚も康田も、ホモなの?」
心無い言葉を浴びせるものはいくらでも居る。
隣のクラスとの体育の合同授業で、わざわざニヤニヤと笑いながら声をかけてきた男子生徒に、吉塚も康田も特に気にすることなく柔軟体操を続けた。
「吉塚身体柔らかいよなー。」
「入浴後のストレッチを欠かさないだけでもわりと柔らかくなるぞ。」
「おいシカトすんなよ!」
声を掛けてきた男子生徒が吠えた瞬間、高城も蒔田も此方を注目した。
蒔田に至っては向かって来る気満々である。
面倒な事になるなと、吉塚は取り敢えず康田から背中を押された状態で蒔田に向こうへ行けとジェスチャーする。
通じたかは知らないし、どうでもいい話だ。
「俺達が男と付き合ってるからってお前になんの関係があるんだよ。もしかしてアレか?俺も狙われるかもはぁとなんてあったま悪いこと考えてるクチか?だったら心配ご無用過ぎて笑いしか込み上げて来ねぇわ。俺らにも選ぶ権利さんはあるんでね。」
もしかしてアレか?の時点でソッと康田は吉塚の背中から手を離し、男子生徒を睨みつけていた蒔田の方へと駆け寄った。
吉塚の性格の苛烈さは、康田もよく知っている。
触らぬ吉塚に祟りなし。
尚、吉塚の祟りは範囲攻撃なので近付かぬが吉である。
それが分かっているクラスメイト達は、一斉に康田と同じように吉塚から距離を取った。
「なっ!馬鹿か!自惚れんな!大体俺はホモだから近寄んなって………」
「自惚れはお前だろ。わざわざ俺の視界に入るな気持ち悪ぃ。近寄んなって言われる前から俺も康田もお前とか知らんし近寄るつもりもねぇんだよ。」
男子生徒が1を言う前に、吉塚が10の言葉で殴る。
恐らく男子生徒を煽ったのだろう、先程までニヤニヤとしていた隣のクラスの他の男子達が、青褪めた顔で事の成り行きを見ている。
そんな一同を見渡して、吉塚はケタケタと笑い声を上げて挑発をする。
教科担任は準備の為にこの場には居ないからとやりたい放題である。
主に吉塚が。
「吉塚絶好調だなー。」
「いいのか、高城。アイツ今にも吉塚に手を出しそうだけど。」
吉塚が煽れば煽る程、男子生徒の顔が怒りで真っ赤になっていく。
握られた拳は震えていて、今にも吉塚に振り上げられそうな程に力が篭っていた。
勿論、吉塚もそれを分かっている。
分かっていて煽りまくっているのだから、タチの悪い男である。
「んー、あと少し様子見かなー。」
存在は分かっているからこそ、動きを見せないストーカーというのも気持ちが悪く、思った以上に二人に精神的負荷をかけていた。
いっそ行動してくれれば警察に対処してもらえるし、それを理由に解雇することもできるのにそれさえ出来ない。
そのストレスを筋トレやらセックスやらで発散してはいるものの、家の中ではストレスを発散するよりも警戒して溜め込む方が多くなってしまう。
そんな時にコレなので、吉塚的にはとうとうストレスが爆発したようなモノだ。
可能な限りスッキリさせてやりたい。
「高城にケツ掘られてるクセに!」
「だからなんだよ。嫉妬か?お前もレオンに抱かれたかったとか?は?渡すかよボケ。レオンは俺のだ。」
立って怒鳴り声をあげている男子生徒と、胡座をかいて座り込んでいる吉塚。
体制的にも身長差的にも男子生徒の方が有利なのに、吉塚の方が有利に見えるのはその余裕さからか。
か弱い猫だと思ったらスナネコだったとか、そんな心境だろうなと、康田と蒔田は思った。
骨の髄まで喰われるぞ、と。
ギリギリと歯を食いしばった男子生徒の顔が、どんどん赤黒くなっていく。
そんな男子生徒を鼻で笑いながら吉塚が口を開き―――
「むぐっ」
「はい、大地ストップ。そろそろ先生来るからいい加減にしな。」
声を発する前に高城が吉塚を横向きに抱え上げると、首を支える方の手で器用に口を掌で覆った。
わりと屈辱的な体制に吉塚は暴れるが、本気じゃない上に実はかなり鍛えている高城にはどこ吹く風。
逆に引き寄せてがっしりと固定すると、突然のことに呆気に取られる男子生徒に視線を合わせた。
「………大地と随分楽しそうに遊んでんなぁ、彼氏の目の前で何のつもりだ?」
間に入ったが、高城的には謝るつもりは毛頭に無かった。
言い過ぎだとは思うが、言われて当然だなとも思っていたからだ。
絡み方も気に入らなければ、態度も気に入らない。
吉塚のストレス発散という名目でなければ、真っ先に蹴り上げていた所だ。
ホモだから何だと言うのか。
もしかしてアレか?俺も大地を抱きたいと思っているクチか?ふざけんな、大地は俺のだ。
………等と、口には出さないが思っている時点で血の気の多い似た者カップルである。
「いや!そんなつもりなくて………!」
「そんなつもりねぇのに人の恋人に………しかも恋人だって分かってて彼氏の目の前で下ネタ吹っかけるのがお前の流儀なのか?」
ゆっくりと大人しくなった吉塚の口から掌を離しながら、高城は威嚇するように男子生徒を詰める。
尚、この時点で男子生徒に対して興味を失った吉塚は大人しく高城の首に腕を回しながら、後方に居る康田に手を振った。
特に意味は無い模様。
「お前ら何騒いでいるんだ、授業始めるぞ!」
言い訳を聞いてやろうかと思っていた高城だったが、担当教師が戻って来たので小さく舌打ちをしながら吉塚を降ろした。
勿論………
「言い訳考えてろよ。授業終わったら聞きに来るから。」
脅すのは忘れずに。
因みにこの時点で高城もスッキリとしていたし、授業終わりには高城も吉塚も騒動を覚えておらずそのまま着替えに戻るのだが………そんなオチになるとは露知らず、男子生徒は怯えながら体育の授業を過ごすこととなった。
心無い言葉を浴びせるものはいくらでも居る。
隣のクラスとの体育の合同授業で、わざわざニヤニヤと笑いながら声をかけてきた男子生徒に、吉塚も康田も特に気にすることなく柔軟体操を続けた。
「吉塚身体柔らかいよなー。」
「入浴後のストレッチを欠かさないだけでもわりと柔らかくなるぞ。」
「おいシカトすんなよ!」
声を掛けてきた男子生徒が吠えた瞬間、高城も蒔田も此方を注目した。
蒔田に至っては向かって来る気満々である。
面倒な事になるなと、吉塚は取り敢えず康田から背中を押された状態で蒔田に向こうへ行けとジェスチャーする。
通じたかは知らないし、どうでもいい話だ。
「俺達が男と付き合ってるからってお前になんの関係があるんだよ。もしかしてアレか?俺も狙われるかもはぁとなんてあったま悪いこと考えてるクチか?だったら心配ご無用過ぎて笑いしか込み上げて来ねぇわ。俺らにも選ぶ権利さんはあるんでね。」
もしかしてアレか?の時点でソッと康田は吉塚の背中から手を離し、男子生徒を睨みつけていた蒔田の方へと駆け寄った。
吉塚の性格の苛烈さは、康田もよく知っている。
触らぬ吉塚に祟りなし。
尚、吉塚の祟りは範囲攻撃なので近付かぬが吉である。
それが分かっているクラスメイト達は、一斉に康田と同じように吉塚から距離を取った。
「なっ!馬鹿か!自惚れんな!大体俺はホモだから近寄んなって………」
「自惚れはお前だろ。わざわざ俺の視界に入るな気持ち悪ぃ。近寄んなって言われる前から俺も康田もお前とか知らんし近寄るつもりもねぇんだよ。」
男子生徒が1を言う前に、吉塚が10の言葉で殴る。
恐らく男子生徒を煽ったのだろう、先程までニヤニヤとしていた隣のクラスの他の男子達が、青褪めた顔で事の成り行きを見ている。
そんな一同を見渡して、吉塚はケタケタと笑い声を上げて挑発をする。
教科担任は準備の為にこの場には居ないからとやりたい放題である。
主に吉塚が。
「吉塚絶好調だなー。」
「いいのか、高城。アイツ今にも吉塚に手を出しそうだけど。」
吉塚が煽れば煽る程、男子生徒の顔が怒りで真っ赤になっていく。
握られた拳は震えていて、今にも吉塚に振り上げられそうな程に力が篭っていた。
勿論、吉塚もそれを分かっている。
分かっていて煽りまくっているのだから、タチの悪い男である。
「んー、あと少し様子見かなー。」
存在は分かっているからこそ、動きを見せないストーカーというのも気持ちが悪く、思った以上に二人に精神的負荷をかけていた。
いっそ行動してくれれば警察に対処してもらえるし、それを理由に解雇することもできるのにそれさえ出来ない。
そのストレスを筋トレやらセックスやらで発散してはいるものの、家の中ではストレスを発散するよりも警戒して溜め込む方が多くなってしまう。
そんな時にコレなので、吉塚的にはとうとうストレスが爆発したようなモノだ。
可能な限りスッキリさせてやりたい。
「高城にケツ掘られてるクセに!」
「だからなんだよ。嫉妬か?お前もレオンに抱かれたかったとか?は?渡すかよボケ。レオンは俺のだ。」
立って怒鳴り声をあげている男子生徒と、胡座をかいて座り込んでいる吉塚。
体制的にも身長差的にも男子生徒の方が有利なのに、吉塚の方が有利に見えるのはその余裕さからか。
か弱い猫だと思ったらスナネコだったとか、そんな心境だろうなと、康田と蒔田は思った。
骨の髄まで喰われるぞ、と。
ギリギリと歯を食いしばった男子生徒の顔が、どんどん赤黒くなっていく。
そんな男子生徒を鼻で笑いながら吉塚が口を開き―――
「むぐっ」
「はい、大地ストップ。そろそろ先生来るからいい加減にしな。」
声を発する前に高城が吉塚を横向きに抱え上げると、首を支える方の手で器用に口を掌で覆った。
わりと屈辱的な体制に吉塚は暴れるが、本気じゃない上に実はかなり鍛えている高城にはどこ吹く風。
逆に引き寄せてがっしりと固定すると、突然のことに呆気に取られる男子生徒に視線を合わせた。
「………大地と随分楽しそうに遊んでんなぁ、彼氏の目の前で何のつもりだ?」
間に入ったが、高城的には謝るつもりは毛頭に無かった。
言い過ぎだとは思うが、言われて当然だなとも思っていたからだ。
絡み方も気に入らなければ、態度も気に入らない。
吉塚のストレス発散という名目でなければ、真っ先に蹴り上げていた所だ。
ホモだから何だと言うのか。
もしかしてアレか?俺も大地を抱きたいと思っているクチか?ふざけんな、大地は俺のだ。
………等と、口には出さないが思っている時点で血の気の多い似た者カップルである。
「いや!そんなつもりなくて………!」
「そんなつもりねぇのに人の恋人に………しかも恋人だって分かってて彼氏の目の前で下ネタ吹っかけるのがお前の流儀なのか?」
ゆっくりと大人しくなった吉塚の口から掌を離しながら、高城は威嚇するように男子生徒を詰める。
尚、この時点で男子生徒に対して興味を失った吉塚は大人しく高城の首に腕を回しながら、後方に居る康田に手を振った。
特に意味は無い模様。
「お前ら何騒いでいるんだ、授業始めるぞ!」
言い訳を聞いてやろうかと思っていた高城だったが、担当教師が戻って来たので小さく舌打ちをしながら吉塚を降ろした。
勿論………
「言い訳考えてろよ。授業終わったら聞きに来るから。」
脅すのは忘れずに。
因みにこの時点で高城もスッキリとしていたし、授業終わりには高城も吉塚も騒動を覚えておらずそのまま着替えに戻るのだが………そんなオチになるとは露知らず、男子生徒は怯えながら体育の授業を過ごすこととなった。
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