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「大地ー、ただいま。」
「ん。おかえりレオン。」
いつもの出迎えの挨拶を交わすも、ここは病室だ。
レオンからのハグやキスを受け入れる度に、早く帰りたいという想いが募っていく。
巡回の時間やタイミングが分からないので、いつ看護師や医師が入ってくるのか分からない状況だ。
こんなのだと、キスに集中ができない。
「不満そー。」
高城はケラケラと笑いながら吉塚の下唇を甘噛みした。
甘噛みだから痛くはないけれど、スキンシップ不足を感じている吉塚にとってはある意味痛い。
仕方ないので吉塚は苛立ちのままもう一度重ねようとした高城の唇に思いっきり歯を立てた。
「痛っ!きょーぼーだなぁ………」
「キスしたい。」
「しようとしたじゃん、今」
「違う。」
ガルガルと不機嫌に唸れば、高城は噛まれた唇を押さえながらも苦笑する。
何を求めているかは分かっているけれど、百瀬と石重からしっかりと釘を刺されている身としては我慢してとしか言いようがない。
「俺もしたいけど、明後日まで一緒に我慢しよ?ね?」
明後日になれば無事に家に帰れる。
土曜日だから朝から高城が迎えに行って共に帰る予定だし、その時までは………
そういう思いを込めて吉塚の頭を撫でてやれば、不満気な溜息を吐かれたものの回答そのもの自体には満足らしく大人しく高城の掌に体重を預けた。
「一緒に?」
「一緒に。当たり前じゃん。俺だって大地にキスしたいんだもん。」
ベッドに腰掛け、吉塚の頭を抱えるように引き寄せる。
未だに夜に吉塚が魘されているのは知っているから、それ以上をしようとは思わないけれど、だからこそ高城は吉塚が受け入れるキスだけは何度も交わしたかったのだ。
「キスだけなのか?」
「お前ねぇ………」
だというのにこの子は。
思い切りがいいのも大概にして欲しいと高城は呆れたように溜息を吐く。
しかし、いい加減にして欲しいと思うのは吉塚も同じだった。
確かにトラウマ級に恐ろしかったし気持ち悪かった。
でも思い出す現状がそこで止まっていると、いつまで経っても悪夢から覚めることが出来ない。
つまりだ。
「上書きしてよ。悪夢見る暇も無いくらい。」
べっと舌を出してそう言えば、その舌に向かって噛み付くようなキスをされる。
いつ誰が来るとも分からない、集中できないシチュエーション。
それでも高城と吉塚は互いの歯がぶつかることも気にせずに、まるで喰い合うようにキスをした。
「男前だよねー、大地は」
「当たり前だろ?俺はお前のメスだからな」
息継ぎの合間に高城がそう言って笑えば、吉塚も自信満々に鼻で笑った。
吉塚大地は、高城レオンの為のメスだ。
高城レオンは、吉塚大地の為のオスだ。
例え誰が何と言おうとも。
「「愛してる」」
声を揃えて、また噛み合う。
そうしながら吉塚はふと、もしもケモノであることをやめたなら、或いは最初からケモノでなかったらと考えて………直ぐにやめた。
ケモノであるからこそ自分は自分で、高城は高城で。
だからこそ、高城は吉塚に惹かれて吉塚はどこか怯えながらもそれでも高城に手を伸ばしたのだ。
「そういえばさー」
「んー?」
「アイツにケモノは似合わないって言われた。」
立ち振る舞い、生き方そのものを否定された。
それはなかなかにショックの大きな話だったのだけれども、それでも高城は寧ろ腹を抱えて笑い始めたのだから、吉塚は思わず唖然としてしまった。
恋人の受けた罵声を、そこまで笑わなくて良くないか?
「アイツ見る目無さすぎだろ!大地はケモノだから綺麗で可愛いのに!」
ひーひーと涙を出すまで笑う高城に、吉塚は先程とは別の意味で唖然とし………そして笑った。
やはり高城こそが吉塚にとって一番の似合いのオスなのだ。
例えば自分達がケモノをやめたのだとしたら………それはとてもとても、つまらなくて息苦しい世界へと変貌するのだろう。
「ん。おかえりレオン。」
いつもの出迎えの挨拶を交わすも、ここは病室だ。
レオンからのハグやキスを受け入れる度に、早く帰りたいという想いが募っていく。
巡回の時間やタイミングが分からないので、いつ看護師や医師が入ってくるのか分からない状況だ。
こんなのだと、キスに集中ができない。
「不満そー。」
高城はケラケラと笑いながら吉塚の下唇を甘噛みした。
甘噛みだから痛くはないけれど、スキンシップ不足を感じている吉塚にとってはある意味痛い。
仕方ないので吉塚は苛立ちのままもう一度重ねようとした高城の唇に思いっきり歯を立てた。
「痛っ!きょーぼーだなぁ………」
「キスしたい。」
「しようとしたじゃん、今」
「違う。」
ガルガルと不機嫌に唸れば、高城は噛まれた唇を押さえながらも苦笑する。
何を求めているかは分かっているけれど、百瀬と石重からしっかりと釘を刺されている身としては我慢してとしか言いようがない。
「俺もしたいけど、明後日まで一緒に我慢しよ?ね?」
明後日になれば無事に家に帰れる。
土曜日だから朝から高城が迎えに行って共に帰る予定だし、その時までは………
そういう思いを込めて吉塚の頭を撫でてやれば、不満気な溜息を吐かれたものの回答そのもの自体には満足らしく大人しく高城の掌に体重を預けた。
「一緒に?」
「一緒に。当たり前じゃん。俺だって大地にキスしたいんだもん。」
ベッドに腰掛け、吉塚の頭を抱えるように引き寄せる。
未だに夜に吉塚が魘されているのは知っているから、それ以上をしようとは思わないけれど、だからこそ高城は吉塚が受け入れるキスだけは何度も交わしたかったのだ。
「キスだけなのか?」
「お前ねぇ………」
だというのにこの子は。
思い切りがいいのも大概にして欲しいと高城は呆れたように溜息を吐く。
しかし、いい加減にして欲しいと思うのは吉塚も同じだった。
確かにトラウマ級に恐ろしかったし気持ち悪かった。
でも思い出す現状がそこで止まっていると、いつまで経っても悪夢から覚めることが出来ない。
つまりだ。
「上書きしてよ。悪夢見る暇も無いくらい。」
べっと舌を出してそう言えば、その舌に向かって噛み付くようなキスをされる。
いつ誰が来るとも分からない、集中できないシチュエーション。
それでも高城と吉塚は互いの歯がぶつかることも気にせずに、まるで喰い合うようにキスをした。
「男前だよねー、大地は」
「当たり前だろ?俺はお前のメスだからな」
息継ぎの合間に高城がそう言って笑えば、吉塚も自信満々に鼻で笑った。
吉塚大地は、高城レオンの為のメスだ。
高城レオンは、吉塚大地の為のオスだ。
例え誰が何と言おうとも。
「「愛してる」」
声を揃えて、また噛み合う。
そうしながら吉塚はふと、もしもケモノであることをやめたなら、或いは最初からケモノでなかったらと考えて………直ぐにやめた。
ケモノであるからこそ自分は自分で、高城は高城で。
だからこそ、高城は吉塚に惹かれて吉塚はどこか怯えながらもそれでも高城に手を伸ばしたのだ。
「そういえばさー」
「んー?」
「アイツにケモノは似合わないって言われた。」
立ち振る舞い、生き方そのものを否定された。
それはなかなかにショックの大きな話だったのだけれども、それでも高城は寧ろ腹を抱えて笑い始めたのだから、吉塚は思わず唖然としてしまった。
恋人の受けた罵声を、そこまで笑わなくて良くないか?
「アイツ見る目無さすぎだろ!大地はケモノだから綺麗で可愛いのに!」
ひーひーと涙を出すまで笑う高城に、吉塚は先程とは別の意味で唖然とし………そして笑った。
やはり高城こそが吉塚にとって一番の似合いのオスなのだ。
例えば自分達がケモノをやめたのだとしたら………それはとてもとても、つまらなくて息苦しい世界へと変貌するのだろう。
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