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高校生編
第10話 ジェネティック リーコムビネイション(遺伝子組み換え)
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鈴木の父さんの実家へ半ば強引に招待された俺達は、その親族の多さに圧倒されていた。
この家に住む家族は九人だと聞いていたが、鈴木の家族やその他の親族を含めて二十人を軽く超えている。
しかも、今夜はどうしても泊まってくれと、曾祖父母さんを初め親族一同から一斉にそう言われてはどうしようもなく、押し切られた状態のままここに居る。
こんな人数が居るって言うのに、俺達の寝る場所なんてあるのだろうか?
そして、夕方になると親族の数は更に増え、夜になってからはその人数は数える事が出来ない程になっていた。
何処からともなく現れた小学生や、何やら幼い子供の数も増えている。
そしていつの間にか、愛美達中三トリオはちびっ子たちのアイドル化しており、彼女達の辺りは託児所の様になっていた。
やはりこれは祭りと言った方が早いかも知れない。
人の多さに耐え切れなくなった俺と悠菜は、こっそりと部屋から出て広い縁側へ移動すると、俺達に気づいた鈴木がこちらへ歩いて来た。
「す、凄い人数だな……」
俺は集まって来た人数に驚いて鈴木にそう言うと、彼は大部屋を見廻して頭を掻いた。
「ああ、近所の人も集まって来たからなー」
「そうなのか? もう、誰が誰だか分かんねーし」
「だろー? 年に何回かはこうなるんだ」
「マジかっ! 俺、人酔いしちゃってるわ」
「えっ⁉ 大丈夫かよ……あ、看護師やってる親戚も来てるから呼んで来るか⁉」
「あーいやいや、少し外の空気吸って来るわ」
「そうか? じゃ、俺も行くよ」
「って、お前が居なくて良いのか?」
「ああ、こうなったら誰が居ても居なくても気づかれないさ」
「まあ、そうだろうな」
そうして俺達が外まで出て来ると、電話をしている灰原さんの姿が目に入った。
今夜、俺達がここに泊まる事になった事を、恐らく沙織さんに報告してくれているんだろう。
すると、俺達に気付いた灰原さんが手を上げてこちらへ来た。
「いやー凄い人数だね~」
「ですね~近所の人達も集まっている様ですよ」
「あ、やっぱり? 田舎は驚く事も多いね~」
すると鈴木が灰原さんの前に一歩出た。
「灰原さん、霧島の同級の鈴木茂です!」
「あーよろしくねー」
「あのっ! あの車、元はスカラビーですよね⁉」
「お、良く知ってるねー」
「やっぱりっ! 六輪って事はやはり……」
「あ、詮索は駄目だぜー?」
そう言ってニヤッと笑う。
「あ……はいっ! 機密事項って奴ですねっ!」
「んーそう言うことかな?」
「分かりましたっ!」
こいつ、何が分かったんだ?
鈴木と灰原さんのそんなやり取りを呆れて見ていると、不意に声を掛けられた。
「霧島君、影浦さん」
「え? あ、はい?」
確か鈴木のお婆さんだったと思うが、頭を深々と下げている。
「今日は重ね重ね、本当にすみませんでした」
「あ、いえいえっ!」
「聞けば学校のクラスメイトさんだとか……」
「ええ、そうなんです」
「本当にすみません。お夕飯の支度が出来ましたので」
「すみません、何だかありがとうございます」
「とんでもございませんっ! ですがこの通り、多くの親族やご近所の方々もおりまして、騒がしくて申し訳ありません」
「こちらこそかえって気を遣わせてしまって……」
「いえいえ、皆様のお食事は別部屋にご用意してますので」
「あ、そうなんですか……」
何だか、かえって手間をかけさせている様な気持ちになった。
今はこうして近所の人達も手伝いに来ている様にも見えるし、俺達が居る事で仕事が増えてしまっているに違いない。
「あの、出来たら皆さんと一緒でも僕らは構いませんよ? むしろ、茂君や近所の方と一緒で構いません」
「いえいえっ! 滅相も無いっ! そう言う訳には……」
そう否定されては仕方ない。
ここは鈴木に振ってみるか。
「なあ、鈴木ー! お前と一緒に夕飯ご馳走になって良いか?」
俺がそう鈴木に訊くと、彼は少し驚きながらも頷いた。
「え? あ、ああ、お前が良いなら……」
すると、鈴木の言葉を遮る様におばさんが声を荒げた。
「これっ、茂っ! お父さんに叱られるよっ⁉」
「うっ……やっぱ駄目だよ霧島」
「じゃあ、僕がお願いしますよ? どなたに伺えばいいですか? あ、迷惑でしたら無理には言いませんけど……」
「え……でも霧島君……」
「聞いて下さい。今、凄くお忙しいのは、この状況を見れば僕にだって分かります。きっと、まだまだ田植えの準備とか色々とあるんでしょうね。猫の手も借りたい位のこの時期に、こうして沢山の人が集まっている場所に、僕らをおもてなしして頂ける、そのお気持ちだけで十分ですよ」
「まあ……霧島君……」
「宜しければ何ですけど、今夜泊めて戴く代わりに、明日は僕に田植えを体験させて下さい。僕に出来る事があればの話ですけど……。それから、食事も皆さんとご一緒させて下さい」
「き、きりしまぁーありがとう……」
「何て良い子が茂のお友達に……こらっ! 茂っ! あんた、今日から霧島君に足向けて寝るんじゃないよっ⁉」
「う、うんうんっ! 分かってる!」
「ちょっとお父さんにっ! あんたもお爺さんに言っといでっ!」
「あっ! 分かったっ!」
鈴木とお婆さんが慌てて母屋へ入って行くのを見て、ハッと我に返った。
マズい……思い付きで言ってしまった……愛美に怒られるぞ、こりゃ。
俺は思い出した様に灰原さんに振り返った。
「は、灰原さんっ!」
「お、お? どした?」
「どうしよう……」
「ん? 何が?」
「愛美に相談も無くあんな事言っちゃったよ……」
「あ、そっちか! まあ、あの子っちはそこらで遊んでても良いんじゃないか?」
「そ、そう? いや、でも、俺に放ってかれたとか……なっ? 悠菜はどう思う?」
そう言って悠菜を見るが、無表情でジッと俺を見ているだけだ。
「ゆ、悠菜ぁ……」
「まあ、あの年頃だし、三人居たら退屈も無いと思うぜ?」
灰原さんはそう言ってニヤッと笑った。
「そうかな?」
「そうさー車の中だって、植物園だってそうだったろ? 今もアイドルごっこしてるんじゃないか?」
げっ、灰原さん鋭い!
この人へらへらとしてるかと思ったが、案外洞察力は凄いかも知れない。
「三人残して大丈夫かな……」
「ああ、大丈夫じゃないかなー?」
「そうですか……」
「ま、俺も田植えの経験は無いからなー。明日は楽しみだわ」
「えっ? 灰原さんっ!」
「な、何だよ悠斗君、急にっ!」
「一緒に田植えまでっ⁉ ありがとうございますっ!」
「あーいやいや、何と無く俺、悠斗君好きになったわ」
「え……」
そう言ってニヤッと笑った灰原さんを見てしまった。
まさか人生初めて好きだって言われたのが男の人だなんて……。
「そっちじゃねーよっ! 人として……かな」
「そ、そうですか」
不意に真顔になった灰原さんが俺の目を見た。
「あのさ、悠斗君」
「はい?」
「君のご両親がいるだろう?」
「え? ええ、まあ」
「そして、愛美ちゃんや悠菜さんが居る。勿論沙織さんもだ」
「ああ、そうですね」
「まあ家族って奴な?」
「はい」
「人ってさ、どう生まれたかじゃ無くて、どう育ったかだと俺は思うんだわ」
「どう育ったか……ですか?」
「ああ、生まれた場所や血縁何て、然程その人には関係無くてさ、どう育ってどう生きて来たかで、人ってもんが出来るんだなーってね」
「あ……そうですねー」
「ま、そう言う事さ。失礼」
「え?」
灰原さんはそう言うと煙草に火をつけた。
何だかその姿がクールに感じて、俺には恰好良く見えた。
ただ、灰原さんがどうしてそんな話をしたのかは、その時の俺には分からなかったが……。
すると間もなく、鈴木のお父さんやらお爺さん達が、わらわらと母屋から出て来た。
気づけば、あっという間に二十数名の人だかりが俺達の目の前に出来ていた。
「霧島君っ! そんなに気を遣ってくれてありがとうっ!」
「茂の友達には勿体無い位の良い子だっ!」
「うちの婿にっ!」
「バカやろっ! お前んちに行かせるかっ! うちの嫁をっ!」
何だか凄い事になって来た。
「ちょっと、お兄ちゃん何やったのっ⁉」
気付くと愛美がびっくりした表情で俺の腕を掴んだ。
「何だか、すみませんっ! お兄ちゃんもほらっ!」
そう言って頭を下げながら俺の腕を引っ張る。
「ぬあっ! な、何でっ⁉」
「何でって、知らないわよっ! 兎に角謝ってよっ!」
「謝るって⁉」
「いやいや、お嬢さん、霧島君が凄く出来た人だって事で、わしらは拝みに来たんだよ?」
一人のおじさんがそう言うと、我も我もと愛美に群がって来る。
「えっ? どういう事……」
「いや、君が妹さんかっ! さっきうちの孫を遊んでくれていたっ⁉」
「ほら、次男坊の信二さんとこの長男が、騙して連れて来た友達だってさっ!」
「そうだったんかっ! 信二のせがれがっ⁉」
「あの馬鹿垂れがっ!」
「でもねっ、怒りもしないで手伝ってくれるんだと!」
「何と……心の広いっ!」
「信二さんとこの長男のご友人だとか⁉」
「ああっ! 信二んとこの長男坊がやっと目を出したかっ!」
「おおーっ! 茂は何処行ったっ⁉」
「あいつも褒めてやらんとな!」
このまま鈴木が祭り上げられたら、俺はこの場から避難出来るんだが、どうやらそうもいかない様だ。
母屋の方からまだまだ人が出て来た。
既にカオスだ。
もう、誰が何を言ってるのかよく分からない。
「ほら、あの子だよっ!」
「どの子、どの子⁉」
「あ、ちょっと握手しておくれ」
おばさんががやがやと群がって来たが、その内の一人がどういう訳か握手を求めて来た。
「え? あ、握手⁉ 何故っ⁉」
「あーうちの娘もこっちに居たら良かったのに、今は東京の大学に……」
「あんたんとこは大学生だろが! うちの子は社会人だけど、どうだい?」
「うちの孫は看護師だから苦労はさせないよっ⁉」
「ちょ、ちょっと待って下さいっ!」
「あーはははっ!」
突然、噴き出すように灰原さんが大笑いした。
「灰原さんっ! 何大笑いしてんっすかっ!」
「あーすまんすまん、面白いなー田舎って」
「お、こちらの方も霧島さんのお連れですね?」
それに気づいた一人が灰原さんに声を掛けた。
「ええ、明日は私も田植えに参加希望でーす!」
「おおーっ!」
あちこちで拍手喝采が沸き起こる。
「男手は助かるわー!」
「あら、こちらさんは浅黒くてイイ男じゃない!」
「あ、そっすかぁ~?」
灰原さんはおばちゃん連中に囲まれて、案外まんざらでもなさそうだ。
「ちょ、田植えって何っ⁉」
すると、愛美がびっくりした表情で俺に訊いた。
「あ、稲植えるの」
「そんな事は知ってるわよっ! どういう事⁉」
「あ、愛美も田植えする?」
「どうしてっ⁉」
やはり状況が掴めないらしい。
そりゃそーだよね。
「まあ……流れでこうなってしまった」
「どんな流れで田植えになるのよ……ところで、祭りは?」
「あーそれな……実は……」
その後、愛美に宥め聞かせてようやく伝わった。
まあ、殆どは悠菜が話してくれたんだが。
♢
その日の夕食は鈴木の親戚やら、近所の人達とで大宴会となった。
近所の幼い子供達はその親に連れられて帰って行ったが、帰る時は中三トリオとの別れ際に、まだ帰りたくないと泣きわめくわの大騒ぎとなった。
そうして、子供たちの人気者となった中三トリオは、今は大人たちに持て囃されている。
そして俺は、食べる物には困らせないと言っていた、鈴木の言葉を思い出していた。
確かにあいつが言う通り大量の料理が用意されており、俺達を目一杯持て成そうと、鈴木の本家を筆頭に一族が総力を挙げたに違いない。
寝床は大広間にいくつも敷かれた布団ではあったが、それがまた修学旅行の様であり、愛美達も大喜びだった。
俺と灰原さんは鈴木と奴の弟や従妹と同じ大部屋で、愛美達は鈴木の鳩子や従妹の女性方と同部屋らしい。
他にも男性の大部屋と女性の大部屋が二つ三つあるらしいが、勿論俺に把握など出来る筈も無い。
夕飯を済ませて順番にお風呂を頂いた後は、愛美達や他の女性陣が俺達の大部屋に来て、UNOやトランプ大会をしていた。
それも十二時を過ぎる頃にはお開きとなり、俺は鈴木と灰原さんの間に仰向けに寝ていた。
鈴木の弟は同年代らしき親戚の子と話していたが、今はもう寝ている様だ。
「なあ、霧島。今日は本当にごめんよ」
「ああ、もういいさ。お前が何かを企んでたのは分かってたし、それはそれで愉しみだったんだがな」
「えっ⁉ お前、俺が企んでると思ってたのか⁉」
「ああ、まあなー」
「俺は別に企むつもりじゃ無かったんだよ⁉」
「はぁ? 祭りって嘘ついて誘い出して、田植えをやらせようとしたんだろ?」
「あ、田植えをさせようとした訳じゃ無いんだよ! 祭りって言うのは……あれだけど……」
「そうなのか?」
「うんうん! 親父の実家はこの通り古い農家でさ。毎年、田植えと稲刈りには親戚が集まって、こうしてワイワイやるんだよ。歳の近い従妹や鳩子もいるけど、今年は受験で来て無いし、他はあまり知らない人も多くてさ、お前とか悠菜さんが遊びに来てくれたらいいなーって、ただそれだけだったんだよ」
「何だ、そうだったのかよ」
「ああ、毎年こうして大部屋に雑魚寝だから、お前たちが来ても寝る所とか食べるもんも困らないしさ」
「あー確かに、それは納得。あの状態じゃ誰が居ても分からないかもな」
「だろー? 俺だってよく知らない人もマジで多いんだわ」
「でも、お前が田植えしてる時に、俺達をどうしようと思ったんだ?」
「ああ、実はこの辺りにパワースポットとか観光する所が多いからさ、お前たちに行って貰おうと保存してあったんだ」
そう言って鈴木はごそごそと携帯を見せた。
「そうだったのか……んじゃ、俺もお前を勘違いしてた所があったわ。ごめんな?」
「いや、いいんだよ。俺がちゃんと話していれば良かった事だしさ」
「あーまあ、そういやそーだ」
「あははは」
鈴木が笑うと俺も何だか可笑しくなって来た。
「ふっ、あははは」
「でもさ、お前が田植えを手伝ってくれるって言ってくれて、申し訳なくてさ」
「あーいいんだよ。何だかやってみたくなっただけだし。愛美に説明は大変だったけどな。それと、灰原さんにも申し訳なくてね」
「あ、そうだよっ! 灰原さん、すみませんでした!」
鈴木が身を起こして灰原さんへ頭を下げた。
「あー全然いいよー気にしないでくれよ、鈴木氏」
そう言って灰原さんがニヤッと笑った。
「えっ⁉」
「あー君がヲタクだと悠菜さんから情報を得てるんで」
「ぬぉっ⁉ マジっすか! 悠菜さんが俺の事を話しているんですかっ⁉」
鈴木は急に目を輝かせて、俺の上まで身を乗り出した。
「そこかよっ! てか、重いよっ!」
「灰原さんっ! 悠菜さんは他に言って無かったですかっ⁉」
「んー? (彼女から何か企んでると聞いていたとは言えないしなー)他に何か言ってたかなぁ」
灰原さんは思い出そうとしているのか、仰向けに寝たまま頭の上で両腕を組んだ。
「なあ、霧島! 悠菜ちゃん、俺に興味あるのかな⁉」
「あーないない。あいつは誰にも興味持たないから」
「えーっ⁉ だって、俺がヲタクって知っているという事は……」
「いや、クラスの奴みんな知ってるから」
「それでも、悠菜ちゃんが灰原さんに話したって事は、学校以外で俺の話をしてるって事だよな⁉」
「まあ、そりゃそうだな。なあ、もう寝ようぜ?」
「何だよぉー、きーりーしーまー」
鈴木が俺の身体を揺さぶり始めた。
「うっせぇよ? 明日の田植えに支障出たら、お前の爺さんに談判するよ?」
「あっ! それは言っちゃダメだよ~ゆっくり寝て頂戴」
「そお? んじゃ、灰原さんおやすみなさい」
「はいよーおやすみー」
「霧島君、どう? 寒くない?」
「何だよお前は……キモいよ? 寝付けなくなるからやめて?」
その後も何かと鈴木がちょっかいを出して来た様だが、俺はいつの間にか寝ていた。
でもまあ、たまにはこういうのも悪くない。
俺にとっては新鮮な経験だった。
♢
翌朝――。
時刻はまだ五時過ぎ。
俺にとってはかなりな早朝だが、聞き慣れない騒音で目が覚めてしまった。
窓の外で何やら物凄いエンジン音がしているのだ。
何事かと部屋の中を見廻すと、灰原さんが窓の外を眺めていた。
隣で寝ていた鈴木の姿は無いが、向こうには弟ともう一人中学生位の子が寝ていた。
「灰原さん、おはようございます……」
「おお、悠斗君おはようさん。流石に目を覚ましたかい?」
「ええ、まあ。これ何の音ですか?」
「ああ、田植え機だなーしかも、五台程集まって来てる」
「えっ? そんなに?」
「近所の家からも運び込んでる様だよ」
五台もエンジンかけてたらかなりの騒音な訳だ。
普段はこんな時間に起きはしないが、枕も違う為かすっかり目が覚めてしまった。
すると、大部屋に鈴木が眠そうな表情で入って来た。
「お、霧島起きたのか?」
「ああ、お前、朝早いんだなー」
「いや、さっき父さんに叩き起こされた」
「そうなんだ? 俺ぐっすり寝てたわ」
「お前はまだ寝てていいんだよ、直樹起こしに来たんだわ」
「いや、目がすっかり覚めちまった」
「あーこの音だしなーおい、直樹、正人も起きろー!」
そう言うと、弟ともう一人を揺り起こしている。
「霧島が起きたんなら朝飯の支度頼んで来るか」
「もう朝飯なの?」
「いや、俺達は田んぼへ行ってからそこで食う」
「は? 田んぼで⁉」
「ああ、後で女衆が握り飯持って来てくれるんだ」
「そ、そうなんだ?」
「今から一斉に田植えの準備さ」
「それであんなに機械が……」
「ああ、田植え機な。小さな奴しか無いから、一台、二台だと手間かかるんだってさ。まあ、霧島はゆっくりしといてくれよ」
「あ、ああ」
鈴木はそう言うと、起こした二人と部屋を出て行った。
農家って大変なんだな……。
窓から数台の田植え機と、忙しそうに動き回る人達を眺めながらそう思っていた。
やがてそれぞれの田植え機が敷地から出て行く。
その後を男達がぞろぞろとついて行った。
先程迄の大きなエンジン音が遠ざかって行き、やがて音が殆ど聞こえなくなると部屋の中を見廻した。
大きな広間に俺と灰原さんの二人だけと気づくと、何だか取り残された様な感覚になる。
「愛美は起きたかな」
ふと、そう呟くと灰原さんがこっちを向いた。
「どうだろうねータバコ吸いに外へ行く時に、残ってる人にそれと無く訊いてみようか?」
「あ、俺も外へ行きます」
鈴木の弟も仕事に駆り出されたと言うのに、俺だけがこの部屋に独りで残る気にはなれなかった。
「ん、じゃあ、行ってみようか」
「はい」
俺達が部屋を出ると、偶然通りかかったおばさんに声を掛けられた。
「あら、お早いお目覚めで……あ、機械が煩かったですものね! もう静かですから寝なおしても良いんですよ?」
「あ、いえいえ。目が覚めたので起きちゃいますよ」
「そうですか、ごめんなさいねぇ。農家の朝はこんなんですよぉ、朝ご飯ご用意しましょうね!」
「いえいえ! 皆さんと一緒で良いので……あ、田んぼで一緒に戴きますから!」
「え? そう言う訳には……」
「本当に構わないんです」
「そうですかー? 最近の若い人は本当に朝ご飯食べないんですねぇ」
「あ、いえっ! 茂君と田んぼで戴きます」
「あ、そうですか? あ、妹さんは台所におりますよ?」
「え? 愛美が?」
「ええー、ほんに良い子達ですねぇ」
「そうですか、すみません」
「いえいえっ! 助かりますよぉー」
そう言っておばさんは去って行った。
「台所って何処だろ」
「んーでも、今行ったら邪魔になるかもよ?」
「あ、そうですね」
きっと女性人たちが台所で、大量のおにぎりを作っている事は想定出来る。
そこへ俺達が顔を出したら作業の邪魔になるだろう。
「俺は外でこれを」
灰原さんはそう言って煙草を見せた。
「あ、ですね! 僕も外へ行きますよ」
俺と灰原さんがまだ薄暗い外へ出ると、東の空が薄っすらと赤くなって来ている。
そしてカシュッと音がした方を見ると、灰原さんの掌の中がライターの炎で真っ赤に染まった。
そして、彼がゆっくりと吐き出した煙を眺めていた。
「飲む?」
急に傍で声がしてゾクッとしたが、その声は俺には馴染みのあるものだ。
すぐに目をやるとやはり悠菜だった。
手にしたパックのお茶を、俺と灰原さんへ差し出している。
「おお、ありがと!」
「あ、悪いね頂くよ」
「もしかして、悠菜も手伝ってるんだ?」
無表情で頷いた。
「愛美と友達二人も今は台所でおにぎり作ってる」
「うわっ! マジか! あいつ、おにぎり作れるっけ?」
「愛美も佳苗も上手。蜜柑は練習中」
「あ、そうなの? 蜜柑ちゃん大丈夫そう?」
灰原さんがそう聞くと、悠菜は灰原さんを見て頷いた。
「蜜柑には経験が必要」
「あ、そうなのかー」
そうして悠菜はそのまま母屋へ入って行った。
「そっか、蜜柑は練習中かー」
灰原さんはため息交じりにそう言うと、フッと微笑んで二本目の煙草に火をつけた。
「さてと、俺は鈴木の所へ行って見ますけど……」
「ああ、彼が何処だか分かる?」
「あ、何処だろう……」
「んじゃ、俺も散歩がてら一緒に行くかな」
俺と灰原さんは二人、田舎道を歩き出した。
♢
その後、あちこちに点在する田んぼを巡る内に、辺りはすっかり明るくなってから、ようやく鈴木の姿を見つけた。
その時俺は妙に嬉しくなってしまった。
何故だか分からない。
あいつを見つけて嬉しくなるとは、少し癪でもある。
田んぼの脇にはプランターに入れられた沢山の苗を積み上げており、田植え機はその苗が入ったプランターを幾つも積んでいる。
「よーし、ここはこんなもんだな。次はあっちだ!」
おじさんの一人がそう言って軽トラックに乗り込むと、男衆がわらわらと移動する。
やがて、一段落したのだろうか鈴木が歩いて来た。
「霧島来たのかー? そろそろここに朝飯来るんだってよ?」
「そうなんだ? お疲れさん」
「朝飯食って暫くしたら田植え開始だ」
「ほー」
「ま、殆どは機械で植えるから、空いたプランターとか片付けるんだ」
「了解」
すると、軽トラが近づいて来た。
さっきのとは違う軽トラだ。
そして助手席には見慣れた姿があった。
「あー! お兄ちゃんこんなとこにいたー!」
「お? 愛美⁉ 手伝ってるんだってな!」
「そうだよ⁉ あんなにおむすび握ったの初めて!」
「そうかーお疲れさんだなー」
「じゃ、あたしあっちにもおむすび届けに行くからー!」
そう言うと軽トラの助手席に乗り込んだ。
ああやって軽トラックで大量のおむすびを配っている様だ。
男衆に混ざっておにぎりを頂いたが、よく見ると幾つかはいびつな物があった。
恐らく慣れていない人が握った物であろうが、そんな事は全く気にならなかった。
早くに起きた為かお腹も空いている。
一つ手にしてそれを頬張ると、塩気が更に食欲をそそる。
そして、口に入れたご飯を何度か噛むと、口いっぱいに旨味が拡がる。
しかし、この数を大人数で握ったとは言え、それは大変な作業だったに違いない。
自然と有難味が感じられた。
田舎の朝の空気は清々しく、その中で食べるおむすびとたくあんが、本当に美味しかった。
塩辛い筈のたくあんが、おむすびと一緒に食べると甘く感じられた。
あっという間に大量のおにぎりが消えると、早速田植え機のエンジン音が辺りに響き渡る。
同時に男衆がわらわらと作業を始めた。
勿論、俺と灰原さんも鈴木に混じって作業の手伝いを始める。
慣れない作業ではあったが、基本的には鈴木の真似事で、時折おじさん達に呼ばれて指示を受けていた。
その後は慣れないを夢中になって覚えながら俺は動き回ていた。
どの位プランターを片付けただろう。
不意にお茶の時間だと言われ手を休めると、俺達には冷たいお茶と饅頭が配られた。
そして暫く休憩した後、俺達はまたプランターを運んだり、呼ばれてそちらへ走ったりと、あちこちへ動き回っていた。
広い田舎の田んぼを移動しながら汗をかいた。
それでも何だか清々しく、凄く気持ちいい。
そして、どの位の時間が経ったのか分からないが、朝と同様におにぎりの配給が来ると、その時にお昼だと気付いた。
昼にはおにぎりと唐揚げ、冷やされたトマトとキュウリが用意してあった。
カットはされておらず、トマトもキュウリも皆は丸ごと齧っている。
俺も真似をしてみたが、こんなに甘いトマトを食べたのは初めてだ。
そして、キュウリに味噌をちょっとつけて齧ると、歯ごたえとみずみずしさがあって、病みつきになる。
そうして昼飯を済ませた後に作業を始めた訳だが、幾らも動かない内に今度はお茶休憩だと言う。
何だかまだ昼飯が胃袋で消化されてない気もするが……。
その休憩中に聞かされたのは、既に大方作業は終わりだという事だった。
時間で働くOLやサラリーマンとは全く違うよね?
こう言う仕事もあるものなのかと、見分を広げた気分だった。
しかし、あっという間に感じたが、慣れない作業に神経を集中していた為なのか、終りだと聞くと急に疲れが出て来た。
体中のあちこちが痛み出す。
しかも、ジーンズもTシャツも泥だらけだ。
田んぼに入っている訳では無いのに、まるで泥投げでもしたかの様だ。
出がけに母さん達に言われて、ジーンズの着替えを持って来ておいて良かったと心底思った。
そんな事を思っていると、田植え機を軽トラックに積み終えた灰原さんが、腕をぐるぐると回しながらこっちへ歩いて来る。
「いやあ、いい汗かいたなー!」
「そうですねー! 田植えってほんっとに大変なんですね」
「ああ。それにしても悠斗君、随分と汚れたなー」
「ええ、何だか偉い事になってました」
灰原さんはおじさんにやってみるかと言われて、初めてだと言う田植え機を運転していた。
その操作がかなり上手だったらしく、おじさん達に代わって最後まで田植え機に乗っていた。
「灰原さんは田植え機も運転出来るんですね」
「いや、初めてだったけどね。案外出来るもんだわ」
「結局最後まで田植えしちゃってたし、一番働いてたと思いますよ」
「そうかい? あの人達煽てるから参ったわーでも、こうした実体験は財産だぜ?」
「そうなんですね」
「ああ、経験が糧となりスキルとなる」
「なるほど!」
「これが人を作るんだ。そうだ、よ?」
「え?」
「俺も受け売りだけどね、実際そう思うよ」
「そっかぁ」
きっと灰原さんにも諭してくれた人が居たのだろう。
こんな大人の人でも、最初から大人じゃない。
きっと色々な経験をして来たのだろうと、ただ漠然と思っていた。
♢
その後、俺達が鈴木の実家へ戻ると、母屋に残っていた女性達からそれぞれ労いの言葉をかけられた。
「皆さん、お疲れ様でしたー!」
「いやいや、女性陣のおにぎりもありがとうねー!」
ここではこうやって男衆が集まって田植えをし、女衆は裏方に徹してサポートするらしい。
「いやー皆さんが手伝ってくれたお陰で、今年は随分早く終わりましたよ」
「そうですね、本当に皆さんありがとうございました」
そう言って鈴木のお爺さんとお婆さんが皆に頭を下げると、数名がこちらを振り向いた。
「特に灰原さんの田植え機の扱いが、初めてとは思えない位でしたね!」
「そうそう! まるで手足の様に!」
鈴木の父さんとお爺さんにそう言われ、灰原さんは照れた様に頭を掻いた。
「いやあ、何だか煽てられると伸びるタイプだったみたいです」
「そうかい、そうかい! んじゃ来年も頼みますか! わははは!」
皆が楽しそうに話しているが、俺も初めての田植え体験に何気に満足している。
鈴木にまんまとハメられた感はあったが、今となってはどうでも良い。
普段何気なく口にしていた白米が、この様に作られていたとはね。
灰原さんが言う様に、こう言う事も経験の一つだろう。
「おーい、霧島ー! 今夜も泊って行ってくれよ?」
「え? いや、悪いってば」
「いやいや、これで帰したら俺が叱られるからっ!」
「そうなのか?」
「ああ! 頼むから泊まって言ってくれよ!」
「ああ、わかったよ。んじゃ、遠慮なく泊めさせて貰うよ」
「おおーっ! よし、んじゃ親戚に言って来る!」
そう言うと、鈴木は足早に去って行った。
結局、俺達はもう一泊する事になってしまった。
まあ、こうなったら鈴木の顔を立ててやるか。
その後、夕飯と風呂を頂くと、朝早くから起きていた為だろう、俺達はすぐに寝ついてしまった。
♢
翌朝。
昨夜は早く寝た為に、今度は早くに目が覚めてしまった。
こうやって早寝早起きって出来ちゃうものなんですね。
まあ、明日からはいつもの生活になるだろうけどさ。
鈴木も弟も、他の親戚の子もまだ寝ている様だ。
だが、灰原さんの姿はない。
二度寝する気も起きずに外へ出ると、母屋の前で灰原さんが煙草を吸っていた。
ああ、この人も早く起きちゃったのか。
「灰原さん、おはようございます!」
「お、悠斗くんおはよーさん。早いねー」
「ええ、何だか目が覚めちゃいました」
「早くに寝たからなー」
「ええ、いつの間にか寝ちゃってました」
「昨日は朝早かったからね、たまにはいいんじゃないか?」
「はい、何だか清々しいです!」
住んでいる家も都会では無いが住宅街ということもあり、こんなに自然を感じた事はない。
しかしここは田んぼや畑に囲まれた敷地の広い大きな一軒家。
朝の空気は爽やかで清々しい。
その新鮮な空気は何だか甘さも感じられる程だ。
そして何より静かだ。
聞こえるのは鳥のさえずりや風に揺れる木々の葉の音。
「そうそう、悠斗君」
「はい?」
「昨日植えた苗ね、新種なんだってよ」
「新種ですか?」
「ああ、コシヒカリと他の品種を掛け合わせたものだってさ」
「そうなんですね」
「毎年品種改良は行っているらしいけど、数年数十年規模で品種改良しているらしいよ」
「数十年ですかぁ、大変なんですね」
「だねぇ。結局は掛け合わせて育ててみないと分からないんだろうね」
「そっかぁ……朝も早いし手間もかかって、農家さんって大変なんですね」
「そうだねぇ……。人間の子供じゃあ、そう言う訳にはいかないからなぁ」
「そ、そりゃそうですよ。人間は品種改良何てしませんし」
すると、灰原さんは煙草に火をつけながら否定した。
「いや、似た様な研究は進んでるんだよ」
「え? まさかぁ」
人間の品種改良とは信じられない。
子供って、普通に父親と母親から子孫として出来るものでしょ?
「人間の遺伝子を研究して交配している研究もあるんだぜ?」
「な、何の為に?」
「癌などの新病に抗体を持てる遺伝子や、各種のストレスに強い遺伝子をつくる為……かな」
「え……それで生まれた子供はどうなるの?」
「そうは言っても、作物や動物じゃ無いからな。普通に人の子供として育てられるらしいけどね。今じゃその辺りの法律もしっかりしてるし」
「そうなんですか……」
「だけど、そうやって研究対象の卵子と精子を受精させ、子宮提供者に産ませるんだよ」
「子宮提供者って……」
「お腹で育てて産むだけの母体って奴さ」
「そんな……」
「そうして産まれた子が、どの様な環境で育てられるのかは分からないけどね」
「切なくなりますね……」
「ああ。まあ、そうして強い遺伝子を創ろうとする研究さ」
「何だかパンドラの箱を開こうとしているみたいですね」
「パンドラの箱かぁ、上手い事言うね悠斗君」
「人の遺伝子操作……やって良いものなのか……不安です」
「まあ、聞こえはいいもんじゃ無いけどね。それも人類の為と考えての研究だろうね」
「人類の為……ですか」
「ああ、そう考えてるのは間違い無いだろうよ。それが正しいのかは別としてね」
灰原さんはそう言うと、短くなった煙草を携帯灰皿に収めた。
この家に住む家族は九人だと聞いていたが、鈴木の家族やその他の親族を含めて二十人を軽く超えている。
しかも、今夜はどうしても泊まってくれと、曾祖父母さんを初め親族一同から一斉にそう言われてはどうしようもなく、押し切られた状態のままここに居る。
こんな人数が居るって言うのに、俺達の寝る場所なんてあるのだろうか?
そして、夕方になると親族の数は更に増え、夜になってからはその人数は数える事が出来ない程になっていた。
何処からともなく現れた小学生や、何やら幼い子供の数も増えている。
そしていつの間にか、愛美達中三トリオはちびっ子たちのアイドル化しており、彼女達の辺りは託児所の様になっていた。
やはりこれは祭りと言った方が早いかも知れない。
人の多さに耐え切れなくなった俺と悠菜は、こっそりと部屋から出て広い縁側へ移動すると、俺達に気づいた鈴木がこちらへ歩いて来た。
「す、凄い人数だな……」
俺は集まって来た人数に驚いて鈴木にそう言うと、彼は大部屋を見廻して頭を掻いた。
「ああ、近所の人も集まって来たからなー」
「そうなのか? もう、誰が誰だか分かんねーし」
「だろー? 年に何回かはこうなるんだ」
「マジかっ! 俺、人酔いしちゃってるわ」
「えっ⁉ 大丈夫かよ……あ、看護師やってる親戚も来てるから呼んで来るか⁉」
「あーいやいや、少し外の空気吸って来るわ」
「そうか? じゃ、俺も行くよ」
「って、お前が居なくて良いのか?」
「ああ、こうなったら誰が居ても居なくても気づかれないさ」
「まあ、そうだろうな」
そうして俺達が外まで出て来ると、電話をしている灰原さんの姿が目に入った。
今夜、俺達がここに泊まる事になった事を、恐らく沙織さんに報告してくれているんだろう。
すると、俺達に気付いた灰原さんが手を上げてこちらへ来た。
「いやー凄い人数だね~」
「ですね~近所の人達も集まっている様ですよ」
「あ、やっぱり? 田舎は驚く事も多いね~」
すると鈴木が灰原さんの前に一歩出た。
「灰原さん、霧島の同級の鈴木茂です!」
「あーよろしくねー」
「あのっ! あの車、元はスカラビーですよね⁉」
「お、良く知ってるねー」
「やっぱりっ! 六輪って事はやはり……」
「あ、詮索は駄目だぜー?」
そう言ってニヤッと笑う。
「あ……はいっ! 機密事項って奴ですねっ!」
「んーそう言うことかな?」
「分かりましたっ!」
こいつ、何が分かったんだ?
鈴木と灰原さんのそんなやり取りを呆れて見ていると、不意に声を掛けられた。
「霧島君、影浦さん」
「え? あ、はい?」
確か鈴木のお婆さんだったと思うが、頭を深々と下げている。
「今日は重ね重ね、本当にすみませんでした」
「あ、いえいえっ!」
「聞けば学校のクラスメイトさんだとか……」
「ええ、そうなんです」
「本当にすみません。お夕飯の支度が出来ましたので」
「すみません、何だかありがとうございます」
「とんでもございませんっ! ですがこの通り、多くの親族やご近所の方々もおりまして、騒がしくて申し訳ありません」
「こちらこそかえって気を遣わせてしまって……」
「いえいえ、皆様のお食事は別部屋にご用意してますので」
「あ、そうなんですか……」
何だか、かえって手間をかけさせている様な気持ちになった。
今はこうして近所の人達も手伝いに来ている様にも見えるし、俺達が居る事で仕事が増えてしまっているに違いない。
「あの、出来たら皆さんと一緒でも僕らは構いませんよ? むしろ、茂君や近所の方と一緒で構いません」
「いえいえっ! 滅相も無いっ! そう言う訳には……」
そう否定されては仕方ない。
ここは鈴木に振ってみるか。
「なあ、鈴木ー! お前と一緒に夕飯ご馳走になって良いか?」
俺がそう鈴木に訊くと、彼は少し驚きながらも頷いた。
「え? あ、ああ、お前が良いなら……」
すると、鈴木の言葉を遮る様におばさんが声を荒げた。
「これっ、茂っ! お父さんに叱られるよっ⁉」
「うっ……やっぱ駄目だよ霧島」
「じゃあ、僕がお願いしますよ? どなたに伺えばいいですか? あ、迷惑でしたら無理には言いませんけど……」
「え……でも霧島君……」
「聞いて下さい。今、凄くお忙しいのは、この状況を見れば僕にだって分かります。きっと、まだまだ田植えの準備とか色々とあるんでしょうね。猫の手も借りたい位のこの時期に、こうして沢山の人が集まっている場所に、僕らをおもてなしして頂ける、そのお気持ちだけで十分ですよ」
「まあ……霧島君……」
「宜しければ何ですけど、今夜泊めて戴く代わりに、明日は僕に田植えを体験させて下さい。僕に出来る事があればの話ですけど……。それから、食事も皆さんとご一緒させて下さい」
「き、きりしまぁーありがとう……」
「何て良い子が茂のお友達に……こらっ! 茂っ! あんた、今日から霧島君に足向けて寝るんじゃないよっ⁉」
「う、うんうんっ! 分かってる!」
「ちょっとお父さんにっ! あんたもお爺さんに言っといでっ!」
「あっ! 分かったっ!」
鈴木とお婆さんが慌てて母屋へ入って行くのを見て、ハッと我に返った。
マズい……思い付きで言ってしまった……愛美に怒られるぞ、こりゃ。
俺は思い出した様に灰原さんに振り返った。
「は、灰原さんっ!」
「お、お? どした?」
「どうしよう……」
「ん? 何が?」
「愛美に相談も無くあんな事言っちゃったよ……」
「あ、そっちか! まあ、あの子っちはそこらで遊んでても良いんじゃないか?」
「そ、そう? いや、でも、俺に放ってかれたとか……なっ? 悠菜はどう思う?」
そう言って悠菜を見るが、無表情でジッと俺を見ているだけだ。
「ゆ、悠菜ぁ……」
「まあ、あの年頃だし、三人居たら退屈も無いと思うぜ?」
灰原さんはそう言ってニヤッと笑った。
「そうかな?」
「そうさー車の中だって、植物園だってそうだったろ? 今もアイドルごっこしてるんじゃないか?」
げっ、灰原さん鋭い!
この人へらへらとしてるかと思ったが、案外洞察力は凄いかも知れない。
「三人残して大丈夫かな……」
「ああ、大丈夫じゃないかなー?」
「そうですか……」
「ま、俺も田植えの経験は無いからなー。明日は楽しみだわ」
「えっ? 灰原さんっ!」
「な、何だよ悠斗君、急にっ!」
「一緒に田植えまでっ⁉ ありがとうございますっ!」
「あーいやいや、何と無く俺、悠斗君好きになったわ」
「え……」
そう言ってニヤッと笑った灰原さんを見てしまった。
まさか人生初めて好きだって言われたのが男の人だなんて……。
「そっちじゃねーよっ! 人として……かな」
「そ、そうですか」
不意に真顔になった灰原さんが俺の目を見た。
「あのさ、悠斗君」
「はい?」
「君のご両親がいるだろう?」
「え? ええ、まあ」
「そして、愛美ちゃんや悠菜さんが居る。勿論沙織さんもだ」
「ああ、そうですね」
「まあ家族って奴な?」
「はい」
「人ってさ、どう生まれたかじゃ無くて、どう育ったかだと俺は思うんだわ」
「どう育ったか……ですか?」
「ああ、生まれた場所や血縁何て、然程その人には関係無くてさ、どう育ってどう生きて来たかで、人ってもんが出来るんだなーってね」
「あ……そうですねー」
「ま、そう言う事さ。失礼」
「え?」
灰原さんはそう言うと煙草に火をつけた。
何だかその姿がクールに感じて、俺には恰好良く見えた。
ただ、灰原さんがどうしてそんな話をしたのかは、その時の俺には分からなかったが……。
すると間もなく、鈴木のお父さんやらお爺さん達が、わらわらと母屋から出て来た。
気づけば、あっという間に二十数名の人だかりが俺達の目の前に出来ていた。
「霧島君っ! そんなに気を遣ってくれてありがとうっ!」
「茂の友達には勿体無い位の良い子だっ!」
「うちの婿にっ!」
「バカやろっ! お前んちに行かせるかっ! うちの嫁をっ!」
何だか凄い事になって来た。
「ちょっと、お兄ちゃん何やったのっ⁉」
気付くと愛美がびっくりした表情で俺の腕を掴んだ。
「何だか、すみませんっ! お兄ちゃんもほらっ!」
そう言って頭を下げながら俺の腕を引っ張る。
「ぬあっ! な、何でっ⁉」
「何でって、知らないわよっ! 兎に角謝ってよっ!」
「謝るって⁉」
「いやいや、お嬢さん、霧島君が凄く出来た人だって事で、わしらは拝みに来たんだよ?」
一人のおじさんがそう言うと、我も我もと愛美に群がって来る。
「えっ? どういう事……」
「いや、君が妹さんかっ! さっきうちの孫を遊んでくれていたっ⁉」
「ほら、次男坊の信二さんとこの長男が、騙して連れて来た友達だってさっ!」
「そうだったんかっ! 信二のせがれがっ⁉」
「あの馬鹿垂れがっ!」
「でもねっ、怒りもしないで手伝ってくれるんだと!」
「何と……心の広いっ!」
「信二さんとこの長男のご友人だとか⁉」
「ああっ! 信二んとこの長男坊がやっと目を出したかっ!」
「おおーっ! 茂は何処行ったっ⁉」
「あいつも褒めてやらんとな!」
このまま鈴木が祭り上げられたら、俺はこの場から避難出来るんだが、どうやらそうもいかない様だ。
母屋の方からまだまだ人が出て来た。
既にカオスだ。
もう、誰が何を言ってるのかよく分からない。
「ほら、あの子だよっ!」
「どの子、どの子⁉」
「あ、ちょっと握手しておくれ」
おばさんががやがやと群がって来たが、その内の一人がどういう訳か握手を求めて来た。
「え? あ、握手⁉ 何故っ⁉」
「あーうちの娘もこっちに居たら良かったのに、今は東京の大学に……」
「あんたんとこは大学生だろが! うちの子は社会人だけど、どうだい?」
「うちの孫は看護師だから苦労はさせないよっ⁉」
「ちょ、ちょっと待って下さいっ!」
「あーはははっ!」
突然、噴き出すように灰原さんが大笑いした。
「灰原さんっ! 何大笑いしてんっすかっ!」
「あーすまんすまん、面白いなー田舎って」
「お、こちらの方も霧島さんのお連れですね?」
それに気づいた一人が灰原さんに声を掛けた。
「ええ、明日は私も田植えに参加希望でーす!」
「おおーっ!」
あちこちで拍手喝采が沸き起こる。
「男手は助かるわー!」
「あら、こちらさんは浅黒くてイイ男じゃない!」
「あ、そっすかぁ~?」
灰原さんはおばちゃん連中に囲まれて、案外まんざらでもなさそうだ。
「ちょ、田植えって何っ⁉」
すると、愛美がびっくりした表情で俺に訊いた。
「あ、稲植えるの」
「そんな事は知ってるわよっ! どういう事⁉」
「あ、愛美も田植えする?」
「どうしてっ⁉」
やはり状況が掴めないらしい。
そりゃそーだよね。
「まあ……流れでこうなってしまった」
「どんな流れで田植えになるのよ……ところで、祭りは?」
「あーそれな……実は……」
その後、愛美に宥め聞かせてようやく伝わった。
まあ、殆どは悠菜が話してくれたんだが。
♢
その日の夕食は鈴木の親戚やら、近所の人達とで大宴会となった。
近所の幼い子供達はその親に連れられて帰って行ったが、帰る時は中三トリオとの別れ際に、まだ帰りたくないと泣きわめくわの大騒ぎとなった。
そうして、子供たちの人気者となった中三トリオは、今は大人たちに持て囃されている。
そして俺は、食べる物には困らせないと言っていた、鈴木の言葉を思い出していた。
確かにあいつが言う通り大量の料理が用意されており、俺達を目一杯持て成そうと、鈴木の本家を筆頭に一族が総力を挙げたに違いない。
寝床は大広間にいくつも敷かれた布団ではあったが、それがまた修学旅行の様であり、愛美達も大喜びだった。
俺と灰原さんは鈴木と奴の弟や従妹と同じ大部屋で、愛美達は鈴木の鳩子や従妹の女性方と同部屋らしい。
他にも男性の大部屋と女性の大部屋が二つ三つあるらしいが、勿論俺に把握など出来る筈も無い。
夕飯を済ませて順番にお風呂を頂いた後は、愛美達や他の女性陣が俺達の大部屋に来て、UNOやトランプ大会をしていた。
それも十二時を過ぎる頃にはお開きとなり、俺は鈴木と灰原さんの間に仰向けに寝ていた。
鈴木の弟は同年代らしき親戚の子と話していたが、今はもう寝ている様だ。
「なあ、霧島。今日は本当にごめんよ」
「ああ、もういいさ。お前が何かを企んでたのは分かってたし、それはそれで愉しみだったんだがな」
「えっ⁉ お前、俺が企んでると思ってたのか⁉」
「ああ、まあなー」
「俺は別に企むつもりじゃ無かったんだよ⁉」
「はぁ? 祭りって嘘ついて誘い出して、田植えをやらせようとしたんだろ?」
「あ、田植えをさせようとした訳じゃ無いんだよ! 祭りって言うのは……あれだけど……」
「そうなのか?」
「うんうん! 親父の実家はこの通り古い農家でさ。毎年、田植えと稲刈りには親戚が集まって、こうしてワイワイやるんだよ。歳の近い従妹や鳩子もいるけど、今年は受験で来て無いし、他はあまり知らない人も多くてさ、お前とか悠菜さんが遊びに来てくれたらいいなーって、ただそれだけだったんだよ」
「何だ、そうだったのかよ」
「ああ、毎年こうして大部屋に雑魚寝だから、お前たちが来ても寝る所とか食べるもんも困らないしさ」
「あー確かに、それは納得。あの状態じゃ誰が居ても分からないかもな」
「だろー? 俺だってよく知らない人もマジで多いんだわ」
「でも、お前が田植えしてる時に、俺達をどうしようと思ったんだ?」
「ああ、実はこの辺りにパワースポットとか観光する所が多いからさ、お前たちに行って貰おうと保存してあったんだ」
そう言って鈴木はごそごそと携帯を見せた。
「そうだったのか……んじゃ、俺もお前を勘違いしてた所があったわ。ごめんな?」
「いや、いいんだよ。俺がちゃんと話していれば良かった事だしさ」
「あーまあ、そういやそーだ」
「あははは」
鈴木が笑うと俺も何だか可笑しくなって来た。
「ふっ、あははは」
「でもさ、お前が田植えを手伝ってくれるって言ってくれて、申し訳なくてさ」
「あーいいんだよ。何だかやってみたくなっただけだし。愛美に説明は大変だったけどな。それと、灰原さんにも申し訳なくてね」
「あ、そうだよっ! 灰原さん、すみませんでした!」
鈴木が身を起こして灰原さんへ頭を下げた。
「あー全然いいよー気にしないでくれよ、鈴木氏」
そう言って灰原さんがニヤッと笑った。
「えっ⁉」
「あー君がヲタクだと悠菜さんから情報を得てるんで」
「ぬぉっ⁉ マジっすか! 悠菜さんが俺の事を話しているんですかっ⁉」
鈴木は急に目を輝かせて、俺の上まで身を乗り出した。
「そこかよっ! てか、重いよっ!」
「灰原さんっ! 悠菜さんは他に言って無かったですかっ⁉」
「んー? (彼女から何か企んでると聞いていたとは言えないしなー)他に何か言ってたかなぁ」
灰原さんは思い出そうとしているのか、仰向けに寝たまま頭の上で両腕を組んだ。
「なあ、霧島! 悠菜ちゃん、俺に興味あるのかな⁉」
「あーないない。あいつは誰にも興味持たないから」
「えーっ⁉ だって、俺がヲタクって知っているという事は……」
「いや、クラスの奴みんな知ってるから」
「それでも、悠菜ちゃんが灰原さんに話したって事は、学校以外で俺の話をしてるって事だよな⁉」
「まあ、そりゃそうだな。なあ、もう寝ようぜ?」
「何だよぉー、きーりーしーまー」
鈴木が俺の身体を揺さぶり始めた。
「うっせぇよ? 明日の田植えに支障出たら、お前の爺さんに談判するよ?」
「あっ! それは言っちゃダメだよ~ゆっくり寝て頂戴」
「そお? んじゃ、灰原さんおやすみなさい」
「はいよーおやすみー」
「霧島君、どう? 寒くない?」
「何だよお前は……キモいよ? 寝付けなくなるからやめて?」
その後も何かと鈴木がちょっかいを出して来た様だが、俺はいつの間にか寝ていた。
でもまあ、たまにはこういうのも悪くない。
俺にとっては新鮮な経験だった。
♢
翌朝――。
時刻はまだ五時過ぎ。
俺にとってはかなりな早朝だが、聞き慣れない騒音で目が覚めてしまった。
窓の外で何やら物凄いエンジン音がしているのだ。
何事かと部屋の中を見廻すと、灰原さんが窓の外を眺めていた。
隣で寝ていた鈴木の姿は無いが、向こうには弟ともう一人中学生位の子が寝ていた。
「灰原さん、おはようございます……」
「おお、悠斗君おはようさん。流石に目を覚ましたかい?」
「ええ、まあ。これ何の音ですか?」
「ああ、田植え機だなーしかも、五台程集まって来てる」
「えっ? そんなに?」
「近所の家からも運び込んでる様だよ」
五台もエンジンかけてたらかなりの騒音な訳だ。
普段はこんな時間に起きはしないが、枕も違う為かすっかり目が覚めてしまった。
すると、大部屋に鈴木が眠そうな表情で入って来た。
「お、霧島起きたのか?」
「ああ、お前、朝早いんだなー」
「いや、さっき父さんに叩き起こされた」
「そうなんだ? 俺ぐっすり寝てたわ」
「お前はまだ寝てていいんだよ、直樹起こしに来たんだわ」
「いや、目がすっかり覚めちまった」
「あーこの音だしなーおい、直樹、正人も起きろー!」
そう言うと、弟ともう一人を揺り起こしている。
「霧島が起きたんなら朝飯の支度頼んで来るか」
「もう朝飯なの?」
「いや、俺達は田んぼへ行ってからそこで食う」
「は? 田んぼで⁉」
「ああ、後で女衆が握り飯持って来てくれるんだ」
「そ、そうなんだ?」
「今から一斉に田植えの準備さ」
「それであんなに機械が……」
「ああ、田植え機な。小さな奴しか無いから、一台、二台だと手間かかるんだってさ。まあ、霧島はゆっくりしといてくれよ」
「あ、ああ」
鈴木はそう言うと、起こした二人と部屋を出て行った。
農家って大変なんだな……。
窓から数台の田植え機と、忙しそうに動き回る人達を眺めながらそう思っていた。
やがてそれぞれの田植え機が敷地から出て行く。
その後を男達がぞろぞろとついて行った。
先程迄の大きなエンジン音が遠ざかって行き、やがて音が殆ど聞こえなくなると部屋の中を見廻した。
大きな広間に俺と灰原さんの二人だけと気づくと、何だか取り残された様な感覚になる。
「愛美は起きたかな」
ふと、そう呟くと灰原さんがこっちを向いた。
「どうだろうねータバコ吸いに外へ行く時に、残ってる人にそれと無く訊いてみようか?」
「あ、俺も外へ行きます」
鈴木の弟も仕事に駆り出されたと言うのに、俺だけがこの部屋に独りで残る気にはなれなかった。
「ん、じゃあ、行ってみようか」
「はい」
俺達が部屋を出ると、偶然通りかかったおばさんに声を掛けられた。
「あら、お早いお目覚めで……あ、機械が煩かったですものね! もう静かですから寝なおしても良いんですよ?」
「あ、いえいえ。目が覚めたので起きちゃいますよ」
「そうですか、ごめんなさいねぇ。農家の朝はこんなんですよぉ、朝ご飯ご用意しましょうね!」
「いえいえ! 皆さんと一緒で良いので……あ、田んぼで一緒に戴きますから!」
「え? そう言う訳には……」
「本当に構わないんです」
「そうですかー? 最近の若い人は本当に朝ご飯食べないんですねぇ」
「あ、いえっ! 茂君と田んぼで戴きます」
「あ、そうですか? あ、妹さんは台所におりますよ?」
「え? 愛美が?」
「ええー、ほんに良い子達ですねぇ」
「そうですか、すみません」
「いえいえっ! 助かりますよぉー」
そう言っておばさんは去って行った。
「台所って何処だろ」
「んーでも、今行ったら邪魔になるかもよ?」
「あ、そうですね」
きっと女性人たちが台所で、大量のおにぎりを作っている事は想定出来る。
そこへ俺達が顔を出したら作業の邪魔になるだろう。
「俺は外でこれを」
灰原さんはそう言って煙草を見せた。
「あ、ですね! 僕も外へ行きますよ」
俺と灰原さんがまだ薄暗い外へ出ると、東の空が薄っすらと赤くなって来ている。
そしてカシュッと音がした方を見ると、灰原さんの掌の中がライターの炎で真っ赤に染まった。
そして、彼がゆっくりと吐き出した煙を眺めていた。
「飲む?」
急に傍で声がしてゾクッとしたが、その声は俺には馴染みのあるものだ。
すぐに目をやるとやはり悠菜だった。
手にしたパックのお茶を、俺と灰原さんへ差し出している。
「おお、ありがと!」
「あ、悪いね頂くよ」
「もしかして、悠菜も手伝ってるんだ?」
無表情で頷いた。
「愛美と友達二人も今は台所でおにぎり作ってる」
「うわっ! マジか! あいつ、おにぎり作れるっけ?」
「愛美も佳苗も上手。蜜柑は練習中」
「あ、そうなの? 蜜柑ちゃん大丈夫そう?」
灰原さんがそう聞くと、悠菜は灰原さんを見て頷いた。
「蜜柑には経験が必要」
「あ、そうなのかー」
そうして悠菜はそのまま母屋へ入って行った。
「そっか、蜜柑は練習中かー」
灰原さんはため息交じりにそう言うと、フッと微笑んで二本目の煙草に火をつけた。
「さてと、俺は鈴木の所へ行って見ますけど……」
「ああ、彼が何処だか分かる?」
「あ、何処だろう……」
「んじゃ、俺も散歩がてら一緒に行くかな」
俺と灰原さんは二人、田舎道を歩き出した。
♢
その後、あちこちに点在する田んぼを巡る内に、辺りはすっかり明るくなってから、ようやく鈴木の姿を見つけた。
その時俺は妙に嬉しくなってしまった。
何故だか分からない。
あいつを見つけて嬉しくなるとは、少し癪でもある。
田んぼの脇にはプランターに入れられた沢山の苗を積み上げており、田植え機はその苗が入ったプランターを幾つも積んでいる。
「よーし、ここはこんなもんだな。次はあっちだ!」
おじさんの一人がそう言って軽トラックに乗り込むと、男衆がわらわらと移動する。
やがて、一段落したのだろうか鈴木が歩いて来た。
「霧島来たのかー? そろそろここに朝飯来るんだってよ?」
「そうなんだ? お疲れさん」
「朝飯食って暫くしたら田植え開始だ」
「ほー」
「ま、殆どは機械で植えるから、空いたプランターとか片付けるんだ」
「了解」
すると、軽トラが近づいて来た。
さっきのとは違う軽トラだ。
そして助手席には見慣れた姿があった。
「あー! お兄ちゃんこんなとこにいたー!」
「お? 愛美⁉ 手伝ってるんだってな!」
「そうだよ⁉ あんなにおむすび握ったの初めて!」
「そうかーお疲れさんだなー」
「じゃ、あたしあっちにもおむすび届けに行くからー!」
そう言うと軽トラの助手席に乗り込んだ。
ああやって軽トラックで大量のおむすびを配っている様だ。
男衆に混ざっておにぎりを頂いたが、よく見ると幾つかはいびつな物があった。
恐らく慣れていない人が握った物であろうが、そんな事は全く気にならなかった。
早くに起きた為かお腹も空いている。
一つ手にしてそれを頬張ると、塩気が更に食欲をそそる。
そして、口に入れたご飯を何度か噛むと、口いっぱいに旨味が拡がる。
しかし、この数を大人数で握ったとは言え、それは大変な作業だったに違いない。
自然と有難味が感じられた。
田舎の朝の空気は清々しく、その中で食べるおむすびとたくあんが、本当に美味しかった。
塩辛い筈のたくあんが、おむすびと一緒に食べると甘く感じられた。
あっという間に大量のおにぎりが消えると、早速田植え機のエンジン音が辺りに響き渡る。
同時に男衆がわらわらと作業を始めた。
勿論、俺と灰原さんも鈴木に混じって作業の手伝いを始める。
慣れない作業ではあったが、基本的には鈴木の真似事で、時折おじさん達に呼ばれて指示を受けていた。
その後は慣れないを夢中になって覚えながら俺は動き回ていた。
どの位プランターを片付けただろう。
不意にお茶の時間だと言われ手を休めると、俺達には冷たいお茶と饅頭が配られた。
そして暫く休憩した後、俺達はまたプランターを運んだり、呼ばれてそちらへ走ったりと、あちこちへ動き回っていた。
広い田舎の田んぼを移動しながら汗をかいた。
それでも何だか清々しく、凄く気持ちいい。
そして、どの位の時間が経ったのか分からないが、朝と同様におにぎりの配給が来ると、その時にお昼だと気付いた。
昼にはおにぎりと唐揚げ、冷やされたトマトとキュウリが用意してあった。
カットはされておらず、トマトもキュウリも皆は丸ごと齧っている。
俺も真似をしてみたが、こんなに甘いトマトを食べたのは初めてだ。
そして、キュウリに味噌をちょっとつけて齧ると、歯ごたえとみずみずしさがあって、病みつきになる。
そうして昼飯を済ませた後に作業を始めた訳だが、幾らも動かない内に今度はお茶休憩だと言う。
何だかまだ昼飯が胃袋で消化されてない気もするが……。
その休憩中に聞かされたのは、既に大方作業は終わりだという事だった。
時間で働くOLやサラリーマンとは全く違うよね?
こう言う仕事もあるものなのかと、見分を広げた気分だった。
しかし、あっという間に感じたが、慣れない作業に神経を集中していた為なのか、終りだと聞くと急に疲れが出て来た。
体中のあちこちが痛み出す。
しかも、ジーンズもTシャツも泥だらけだ。
田んぼに入っている訳では無いのに、まるで泥投げでもしたかの様だ。
出がけに母さん達に言われて、ジーンズの着替えを持って来ておいて良かったと心底思った。
そんな事を思っていると、田植え機を軽トラックに積み終えた灰原さんが、腕をぐるぐると回しながらこっちへ歩いて来る。
「いやあ、いい汗かいたなー!」
「そうですねー! 田植えってほんっとに大変なんですね」
「ああ。それにしても悠斗君、随分と汚れたなー」
「ええ、何だか偉い事になってました」
灰原さんはおじさんにやってみるかと言われて、初めてだと言う田植え機を運転していた。
その操作がかなり上手だったらしく、おじさん達に代わって最後まで田植え機に乗っていた。
「灰原さんは田植え機も運転出来るんですね」
「いや、初めてだったけどね。案外出来るもんだわ」
「結局最後まで田植えしちゃってたし、一番働いてたと思いますよ」
「そうかい? あの人達煽てるから参ったわーでも、こうした実体験は財産だぜ?」
「そうなんですね」
「ああ、経験が糧となりスキルとなる」
「なるほど!」
「これが人を作るんだ。そうだ、よ?」
「え?」
「俺も受け売りだけどね、実際そう思うよ」
「そっかぁ」
きっと灰原さんにも諭してくれた人が居たのだろう。
こんな大人の人でも、最初から大人じゃない。
きっと色々な経験をして来たのだろうと、ただ漠然と思っていた。
♢
その後、俺達が鈴木の実家へ戻ると、母屋に残っていた女性達からそれぞれ労いの言葉をかけられた。
「皆さん、お疲れ様でしたー!」
「いやいや、女性陣のおにぎりもありがとうねー!」
ここではこうやって男衆が集まって田植えをし、女衆は裏方に徹してサポートするらしい。
「いやー皆さんが手伝ってくれたお陰で、今年は随分早く終わりましたよ」
「そうですね、本当に皆さんありがとうございました」
そう言って鈴木のお爺さんとお婆さんが皆に頭を下げると、数名がこちらを振り向いた。
「特に灰原さんの田植え機の扱いが、初めてとは思えない位でしたね!」
「そうそう! まるで手足の様に!」
鈴木の父さんとお爺さんにそう言われ、灰原さんは照れた様に頭を掻いた。
「いやあ、何だか煽てられると伸びるタイプだったみたいです」
「そうかい、そうかい! んじゃ来年も頼みますか! わははは!」
皆が楽しそうに話しているが、俺も初めての田植え体験に何気に満足している。
鈴木にまんまとハメられた感はあったが、今となってはどうでも良い。
普段何気なく口にしていた白米が、この様に作られていたとはね。
灰原さんが言う様に、こう言う事も経験の一つだろう。
「おーい、霧島ー! 今夜も泊って行ってくれよ?」
「え? いや、悪いってば」
「いやいや、これで帰したら俺が叱られるからっ!」
「そうなのか?」
「ああ! 頼むから泊まって言ってくれよ!」
「ああ、わかったよ。んじゃ、遠慮なく泊めさせて貰うよ」
「おおーっ! よし、んじゃ親戚に言って来る!」
そう言うと、鈴木は足早に去って行った。
結局、俺達はもう一泊する事になってしまった。
まあ、こうなったら鈴木の顔を立ててやるか。
その後、夕飯と風呂を頂くと、朝早くから起きていた為だろう、俺達はすぐに寝ついてしまった。
♢
翌朝。
昨夜は早く寝た為に、今度は早くに目が覚めてしまった。
こうやって早寝早起きって出来ちゃうものなんですね。
まあ、明日からはいつもの生活になるだろうけどさ。
鈴木も弟も、他の親戚の子もまだ寝ている様だ。
だが、灰原さんの姿はない。
二度寝する気も起きずに外へ出ると、母屋の前で灰原さんが煙草を吸っていた。
ああ、この人も早く起きちゃったのか。
「灰原さん、おはようございます!」
「お、悠斗くんおはよーさん。早いねー」
「ええ、何だか目が覚めちゃいました」
「早くに寝たからなー」
「ええ、いつの間にか寝ちゃってました」
「昨日は朝早かったからね、たまにはいいんじゃないか?」
「はい、何だか清々しいです!」
住んでいる家も都会では無いが住宅街ということもあり、こんなに自然を感じた事はない。
しかしここは田んぼや畑に囲まれた敷地の広い大きな一軒家。
朝の空気は爽やかで清々しい。
その新鮮な空気は何だか甘さも感じられる程だ。
そして何より静かだ。
聞こえるのは鳥のさえずりや風に揺れる木々の葉の音。
「そうそう、悠斗君」
「はい?」
「昨日植えた苗ね、新種なんだってよ」
「新種ですか?」
「ああ、コシヒカリと他の品種を掛け合わせたものだってさ」
「そうなんですね」
「毎年品種改良は行っているらしいけど、数年数十年規模で品種改良しているらしいよ」
「数十年ですかぁ、大変なんですね」
「だねぇ。結局は掛け合わせて育ててみないと分からないんだろうね」
「そっかぁ……朝も早いし手間もかかって、農家さんって大変なんですね」
「そうだねぇ……。人間の子供じゃあ、そう言う訳にはいかないからなぁ」
「そ、そりゃそうですよ。人間は品種改良何てしませんし」
すると、灰原さんは煙草に火をつけながら否定した。
「いや、似た様な研究は進んでるんだよ」
「え? まさかぁ」
人間の品種改良とは信じられない。
子供って、普通に父親と母親から子孫として出来るものでしょ?
「人間の遺伝子を研究して交配している研究もあるんだぜ?」
「な、何の為に?」
「癌などの新病に抗体を持てる遺伝子や、各種のストレスに強い遺伝子をつくる為……かな」
「え……それで生まれた子供はどうなるの?」
「そうは言っても、作物や動物じゃ無いからな。普通に人の子供として育てられるらしいけどね。今じゃその辺りの法律もしっかりしてるし」
「そうなんですか……」
「だけど、そうやって研究対象の卵子と精子を受精させ、子宮提供者に産ませるんだよ」
「子宮提供者って……」
「お腹で育てて産むだけの母体って奴さ」
「そんな……」
「そうして産まれた子が、どの様な環境で育てられるのかは分からないけどね」
「切なくなりますね……」
「ああ。まあ、そうして強い遺伝子を創ろうとする研究さ」
「何だかパンドラの箱を開こうとしているみたいですね」
「パンドラの箱かぁ、上手い事言うね悠斗君」
「人の遺伝子操作……やって良いものなのか……不安です」
「まあ、聞こえはいいもんじゃ無いけどね。それも人類の為と考えての研究だろうね」
「人類の為……ですか」
「ああ、そう考えてるのは間違い無いだろうよ。それが正しいのかは別としてね」
灰原さんはそう言うと、短くなった煙草を携帯灰皿に収めた。
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