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エネミースレイヤーズ

2-5『真田君、もうそろそろ入っても大丈夫かな?』

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 外からここのダンジョンへ転移できる?

 チート定番の転移が使える? これは凄いのでは無いかな? つまりは、ダンジョン探索を中断する時にポイント設定しておいて、こちらに転移して続きは明日とか出来るのか……いや、説明を見るとこの倉庫ダンジョンを出ると解除されてしまうみたいだ。

 じゃあ、この倉庫ダンジョンで快適に休めるように環境を整えれば……いや、駄目だ、ダンジョンに物を置くと1時間くらいで消えてしまう。う~ん、残念ながら転移で楽々チートは出来ないか。

 いや、まだ諦めるのは早いよね? 他のダンジョンメニューを確認してみよう。

【ダンジョン種の変更:ダンジョン経験値を使い、ダンジョンの種類を変更可能です】

 これは経験値を使ってダンジョンの種類を変更出来る……現状は通常迷宮だけれど。

【フィールド:森  1000P】
【フィールド:山  1000P】
【フィールド:海  1000P】
         ・
         ・
         ・
         ・
【建物:城   1000P】
【建物:屋敷  1000P】
         ・
         ・
【-】
【-】
         ・
         ・
         ・
【材質を変更  1000P】
【色を変更   100P】

 結構な種類を変更可能みたいだ。【-】はまだ解放されていないダンジョンかも? 秘宝迷宮のポイントはとんでもなく高いけれども、景色を変えるだけの場合は安めのポイントで変更可能みたいだ。ちょっと試してみようかな?

 僕は早瀬さんがびっくりしないようにスマホで連絡してから【建物:屋敷】を選んだ。すると、迷宮がゴージャスなお屋敷風に変更された。壁は明るめのベージュ色、天井には等間隔でシャンデリアが……これは凄い。とりあえずこのメニューは一旦いいか……次は……

【ダンジョン環境の変更:環境を変更可能です。特殊な設定には経験値を使います】

【ダンジョンマップを表示】
【ダンジョンマップの設定】
【エネミーの設定】
【-】
【-】

 こっちにも未解放の【-】があるね、もっとダンジョンレベルを上げないと駄目なのだろうね。【ダンジョンマップの表示】を使うと、MAP以外にもダンジョン内に存在する人、エネミー等も表示されるのだけれど、【ハイド】とか気配を消しても表示されるみたい。
 ボス部屋に入ると解除されてしまうのはそこら辺に関係あるのかも?   それはともかく、マップを変更してみよう……これは、頭の中にマップ表示されたのだけれど『RPGツークル』みたいなゲーム感覚でマップ変更が出来る。

 ちなみに『RPGツークル』というのは名前から想像が付くと思うけれども、自分でRPGゲームを作れるゲームなのだ。このシリーズも僕が生まれる前から常に改良された新しい物が出続けていて、最新作は作ったゲームをスマホで遊んだり出来るんだ。自分を主役としたハーレムRPGは僕の黒歴史として今でもPCのHDDに保管されているよ。美百合は面白いって言ってくれたけれど、一生表に出る事はないと思う。

 ……よし、また早瀬さんに連絡してから試してみよう。何があるか分からないから一旦ダンジョン外の倉庫に移動してもらおう。ちなみに封鎖された出入り口は、転移の時と同じ手を繋ぐ事で行き来できるみたい。最初の頃こそシャイな僕と早瀬さんはキモオタ&腐女子にジョブチェンジしていたけれど、ようやく慣れてきたよ。



 色々試行錯誤の末、僕なりに過ごしやす作りになったはずだ。それでは巧美のリフォームの全貌をご覧戴きましょう。

 ちゃらちゃらちゃらちゃらら~ちゃららららん~♪ ※脳内BGM

 入り口を入ると暗闇が続き、一歩先も見渡せない明かりなしではとても歩けない通路が……広く明るい玄関ホールとなって、ダンジョンに来た来客を温かく迎えてくれる事でしょう。

 暗く長く続いた通路を越えると、薄暗い分かれ道が多く、ゴブリンも出る迷宮が……なんと言う事でしょう……中央には大人数で集まって多目的に使えるフロアに、左右にはそれぞれ用途別に使える部屋が10個も……これなら早瀬さんの錬金術も、新しい武器を試す練習の場所にも困る事はありません。これも巧美の心遣いです……あれ? スマホの着信だ。

『真田君、もうそろそろ入っても大丈夫かな?』

「ごめん、ちょっと妄想……いや、考え事をしていて、もう大丈夫だよ」

 僕は【ダンジョンコア】を使って入り口に転移すると早瀬さんを迎えに行った。


「わぁ、すごーい! 綺麗だね、これだとダンジョンだと思わないね……あれ? 真田君凄いドヤ顔だよ?」

「やっぱり、リフォームが終わって依頼人が驚く所までがセットじゃないとね」

「?」

「とりあえず適当な作りにしちゃったけれど、早瀬さんの要望があれば変更出来るから、気軽に言ってね」

「うん、ありがとう」

 その後、僕らはダンジョンマップを互いの意見を交えながらダンジョンメイクしていくのだった。ある程度メイクが落ち着くと、早瀬さんが錬金した物を見せてくれる。

「え? ダイニングテーブル?」

「そう、ドロップ素材の木で作ってみたんだけれど……」

 見た目はリビングに置いてあっても違和感ないオシャレなテーブルなのだけれど、【鑑定】してみると【DO:テーブル】と出た……DOって何だ? と言う事で、更に【鑑定】をかけてみると【ダンジョンオブジェクト:ダンジョンに設置可能なオブジェクト ダンジョンに吸収されない】と出た。

「早瀬さん、これダンジョンに設置できるアイテムだよ……他にも作れるの?」

「え? ダンジョンで消えないって事? えーと、他にも家具は一通り作れるよ。ベッドとかソファーは毛皮系の素材がもっと必要だけれど……」

 そこでピーンときた。この倉庫ダンジョンに家具を配置して快適に過ごせるように出来れば、外部からの転移を組み合わせてより深い階層へ潜れるのでは無いか? 色々出来る事を想像してテンションが上がってきた。早瀬さんにもそのことを伝えると……

「とりあえず、B1に素材の出るエネミーを配置して、やれる事をやっちゃおうか?」

「賛成!! よし、作りたい物に必要な素材をピックアップして」

 それから僕らはアレもほしいコレもほしいと、作るために必要な素材を調べて、ダンジョンに対象のエネミーを配置するとひと狩りしては錬金してひと狩りしては錬金することになった。後先考えない暴走の結果……。



「勢いで揃えたけれど、ヤバいね、ダイニングキッチン一式、リビングみたいにふかふかソファー、オシャレなローテーブルとか……」

「キッチン……水とかお湯が出るんだけれど、どういう仕組みなんだろうね? 水の魔石とか素材に使ったからかな?」

「トイレとバスルームとか……仕組みとか考えるのは止めておこう……もうここに住めるよ」

「カーペットの上に置いた物ならダンジョンオブジェクトじゃ無くても消えないね。家から漫画とかもって来ちゃおうかな?」

 自重しないダンジョンハウス? とでも呼んでおこうかな? ちょっと、思い付くもの全てを作っていったので、とんでもない物が出来てしまったよ。

 10個の部屋にはそれぞれ机にソファー、ベッド、バス、トイレを備え付けて、中央には多目的ルームとは別に作った、広々としたリビング、キッチンスペース。

 各部屋の壁に備え付けられたコンセントは、ダンジョンの経験値を消費しながら電力供給可能で、家電を持ってくれば動くのです……もう意味分かりません……でも便利なので深く考えるのは止めます。

「あとね、こんなのも作ってみたんだけど、これなら役に立ちそう」

 早瀬さんがアイテムボックスから出した物は……テントだ。え? でもここに転移できるなら要らないんじゃない? なんて思ったのだけれど、そこはさすがの早瀬さん。今でこそ先輩の見つけたダンジョンを先行して探索しているけれど、ギルドも人が増えてきたし今後は人目のある場所で行動する可能性がある。テントで目隠ししてダンジョンハウスに転移するなんて事も出来るのでは? と言う事だ……よく思いつくよね。



 その後、自重しないダンジョンハウス作成のせいで、外は真っ暗だった。早瀬さんを家の近くまで送ってから、家電量販店でダンジョンハウスに置きたい家電やゲーム機を、『TSURUYA』で既に所持しているのも含める漫画、ゲーム、アニメのブルーレイソフトを買って帰った。

 美百合の集めているコミックの新刊をお土産で渡して喜ばれたのだけれど、バイト代が出る前に無駄遣いはするなと父さんに注意された。そうだね、いくらお金があるからって調子に乗って豪遊しないように気をつけないとね……あれ? もう遅い?


 僕はその後、夕食とお風呂を済ませて学校の予習復習を終えると、ダンジョンハウスに転移して購入してきた家電を設置。音量を気にせずにオーディオコンポでアニソンを流しベットに寝転びながら漫画を読んで深夜まで過ごしたのだった。



 ……快適すぎて引きこもってしまいそうだよ。



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