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ウィナーズ
3-30「ふはははは、自分を強いと思っているやつに『NO』と断るのは最高のエクスタシーだお!!」
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「やったお……やっつけたお!」
巨人の消えた足下には、それはまた巨大な金属の延べ棒と対照的に小さなハンマーが落ちていた。
部屋の最奥には魔法陣が光っている……多分これで地上に出られるのだろう。
【SR+:アダマンタイトインゴット アダマンタイト製の武具、道具を精製、錬成に必要な金属】
【ダンジョンコア:ダンジョンの管理権限を得る事ができるデバイス】
おお、ゲームであるあるな金属だ……ミスリルより強いのかな? そして【ダンジョンコア】もちゃんと出てきたのでとりあえず一安心だ。
【アダマンタイトインゴット】を収納してから【ダンジョンコア】を手に取ると、脳裏にお馴染みの説明が思い浮かんだ。どうやら今まで手に入れた物と同じようにダンジョンの操作をできるようだ。
「巧美様……最後の一撃は、レベル70のボスを一撃で倒してしまうなんて、あまりにも強力すぎですわ」
「スキルを一瞬で六回も使っていたわね……それに二刀流なんて使えたの?」
「巧美様、お見事です。あのような強力なお力を隠されていましたとは……流石でございますね」
しまった! つい勢いで本気をだしちゃったけれど、茜と美百合以外には見せたらマズかったのかも?
「そんな事よりも南側の増援がまだ残っているでござる、急いで回復して備えないとなりませぬぞ」
「確かにそうね、色々聞きたい事はあるけれど帰還してからにしましょう」
茜はMPポーションを体に掛けながら皆に注意を促す。そうそう、まだ終わってはいないから油断しちゃだめだよね。僕は旨く話が逸れたので少し安心した……一時しのぎにしかなっていないかもしれないけれど。
「む、これは!?」
「どうしたんですの? セバスチャン」
「うそ、敵が……どんどん消えているわ」
「え~? ボスを倒しても消えないんじゃなかったの?」
「これは、消えていると言うよりは、たぶんもの凄い勢いで倒されていっているのでござるな」
「救援に来ている人達がやっているって事なのかお?」
既に僕の索敵に掛かる敵までもが、もの凄い勢いで消えている。信じられないほどの殲滅力だ。
隣でアイシャがスマホでこちらは何とかなったと連絡を取っているようだが、聞こえる会話から相手はそのままこちらに来るようだ。
「12人でこの殲滅力のスレイヤーズって、うちのギルド所属で日本へ来た方はいらっしゃらないでわよね?」
「そうですね、ですがうちの管轄のダンジョンに来たからには関係者です……提携したばかりの『ウィナーズ』所属のスレイヤーズの可能性が高いですね」
「そうよ、相手は『ウィナーズ』所属クラン『アロガンツ』のトップ達よ」
「はっ、あの方達ですの!? 嫌ですわ、こんな所であの顔を見るなんて不快ですわ」
アイシャは複雑な表情で相手の所属を明かすと、エリザが不機嫌そうな声を上げる。二人が人に対してそんな態度を取るなんて初めて見たよ。
「知り合いでござるか?」
「不本意ながら、あたしとエリザはそのクランリーダーと面識があるわ」
「性格が悪い人なのかお?」
「まぁ、クラン名がその人柄を表していると言いますか……まもなくそれも分かるでしょう」
ゴオオオンッ!! 遠くから壁が崩れる音がする。どうやら敵を殲滅してボス部屋まで到着したらしい。砂煙の向こうから見える人影がどんどん増えていく。
「ふん、本当にボスを殺りやがったようだな……どんな手を使いやがったんだ?」
「この規模のレイドボスを1パーティー……6人で攻略するなんて、とても信じられませんね」
そこには一人の男を先頭に11人の美女達の集団が現れたのだ……まさか、これは、ハーレムパーティーなのか!?
先頭の男は身長2メートル近くの長身だけれど筋肉質ではなく厳ついイメージはない。長い髪を後ろで結んだワイルドイケメンで、体にはオレンジ色の蛮族のような鎧を纏っている。
「『ウィナーズ』所属クラン『アロガンツ』のマスター『アインハルト・フォン・シュナイダー』だ……久しぶりだな、アイシャ、エリザ、元気だったか?」
「気安く名前で呼ばないで……救援に来てくれた行動だけは感謝しておくわ」
「右に同じですわ、こちらはもう問題ないですからどうぞお帰りなさって下さいませ」
うわ、名前で呼ぶのに抵抗がないはずのアイシャや、誰にでも丁寧に接するエリザまでこの塩対応!?
「ふはははははっ、おいおいつれないじゃねーか、お前ら俺の子供が欲しいんだろ? あれか? 確か日本ではツンドラとか言うやつか?」
「若、ツンデレですよ。あと本気で嫌がっていると思いますよ」
はっ!? なななな何と!? 子供が欲しいって、それはアレがアレして生まれてくるアレの事!? あと隣にいる黒髪美人は日本人だよね? とにかくこの急展開について行けない。
「わたくしは最初から種馬を必要と言った事は無くってよ」
「まぁ、エリザの家はそうか……だがアイシャ、お前は没落寸前だから優秀な後継者が必要なんだろ? 30分あればいいか……ちょっとそこで種をくれてやっても良いぞ」
「若、最低ですよ……」
さ、30分でって一体何をする気なの!? チェリーな僕には意味がさっぱり分からないよ!!
「下品な男ね……結構よ、こちらは順調よ。このまま功績を上げ続ければ今まで以上に家を大きく出来るわ」
「大きく出たな……だが、後継者はどうするんだ? 俺の種は今のところ100%素質ありだぜ。いくら家が持ち直しても、お前の所は素質無しばっかだから落ちぶれたんだろうが」
「くっ、それは……」
彼女が悔しそうに下を向いたあと、ふと僕と目が合った……あ、すっごくやな予感。
「あんたよりも、ずっとずーーーっと優秀な男がいるから問題ないわ……この子はもの凄く優秀なのよ!!」
「へ?」
突然アイシャが僕の腕を取ると、とんでもない事を言い出した。
「ん? なんだその豚は?」
ブヒッ!? たった今、僕の存在に気付いたとばかりこちらを蔑んだ目で見てくる。ちょ、待って、怖いんですけど……
「まぁ、アイシャ!! 勝手な事を言ってはいけませんわ!! 巧美様はわたくしの婿養子としてラヴレス家に来ると決まっているんですわよ!!」
「待つでござる!! それは駄目でござるよ!!」
「やー!! おにぃはみゅーのおにぃなんだもん!!」
一気に女性陣が僕に詰めかけて来た!! なんだか収集が付かなくなってきたぞ!?
「おい、俺は何か悪い夢でも見ているのか? 女どもが豚を取り合っているように見えるんだが……」
「若、夢ではございません、それと豚とか失礼ですから」
相手の事をそっちのけで僕等のPTの女の子達が言い合いを始めている。
「全く気のない振りをしていたのに、唐突に卑怯ですわ!! あなたはいつもそうです!!」
「言った者勝ちは駄目でござるよ!!」
「ちょっと、今は話しを合わせなさいよ!!」
「だめー!! だめー!!」
「痛いお!! 引っ張らないで欲しいお!!」
「ほっほっほっ、これが若さでございますな」
『早く帰ってツナ缶を食べたいぞ』
ガツン!!! 突然大きな音がすると、男……アインハルトが大きな両手剣を地面に突き立てていた。
「いい加減にしろよ……この俺、アインハルトに勝る奴がいるわけねーだろ。スレイヤーズとしても実力実績共に……ランクAの俺がその豚に劣るとかどんな冗談だよ」
「本人は自称最強ですが、実際にはもっと強いスレイヤーズはいます……ですが、若はダンジョン突破に関する数々の記録保持者です。これは若よりも上位にいるスレイヤーズでは覆す事の出来ない記録となっております」
しーんと、辺りが静まりかえる。それにしてもアインハルトの隣にいる美人以外の後ろにいる人達……この人達も凄い美人……全然喋らないな。
「確かに深度50階層で最年少、最速、最少人数などの記録は、彼より年齢が上の者がでは覆す事は出来ませんね」
「ふふふ、でも、このダンジョンから帰還したらその記録大半は塗り替えられますわよ」
「巧美は今15歳でギルドに登録してまだ1ヶ月よ……あなたの最短記録18歳だったわね。この時点で未来への期待はあなたの比では無いもの」
「…………なんだと?」
ちょ、凄い目で睨まれているんですけど? もうやめて、とっくに僕の精神力はゼロよ!! っていうか、相手挑発する必要なかったよね? 助けに来てくれてありがとう、それではさようなら~でよくなかった?
「スレイヤーズは嘗められてはいけませんからね、懇意としている巧美様が侮られるのは我慢出来なかったのでしょう」
いやいやいや、アイシャの相手が僕だとか言わなければこの展開にならなかったよね?
「気付いているかもしれませんが、相手も五大スレイヤーズの一人ですわ。明確に拒否出来ないと力の弱い立場では、なし崩しに……なんて事も普通にあり得ますの」
オウシット!! 面倒くさい家のゴタゴタに巻き込まれかけている!? なんとか荒事を回避して解散の方向に持って行かなくちゃ!!
「おい、豚……お前が俺に勝ると本気で思っているのか?」
「ブヒッ!? ぼ、僕は最近ダンジョンに潜り始めたタダのキモオタだお」
相手を見ながら【鑑定】を掛けてみると……
【NAME:アインハルト・フォン・シュナイダー LV:93 JOB:狂戦士 弱点:光 状態:正常】
無理無理無理……何この強さ!? 普通に戦ってもダメージ通らないでしょ。大体何だよ狂戦士とか、問答無用で殺されちゃいそうだよ!!
「なら、アイシャは諦めろ……そいつは俺の覇道に必要な女だ」
「波動? 必殺技かお?」
「今の所は大人しく家の命令に従っているが、いずれは独立してスレイヤーズの家を興す……その時に五大スレイヤーズの席に俺が入るのにちょうど良いんだよ」
「それは……アイシャを好きだとかそういう意味ではないのかお?」
「はぁ? 何ガキの飯事みたいな事言ってるんだ? そう言う次元じゃねんだよ、今の本家の生ぬるいやり方じゃあ世界は守れねぇんだよ。力を手に入れて俺が世界を救ってやるんだよ」
「つまりその五大スレイヤーズになれればアイシャじゃなくても良いんじゃないのかお?」
「ばっか、それでモンスターみたいな女を宛がわれたら洒落にならねーだろ! 見た目、家の格、能力も俺に見合うから俺の女にしてやるって言ってるんだよ」
「若、最低ですね……彼は彼女の幸せを問うているのですよ?」
「あー、大丈夫だよ、お前の気にしている飯事的にちゃんと幸せにしてやっから、俺に抱かれて俺の子を生せる女は幸せに決まってんだろ」
「本当に幸せにしてくれるのかお?」
「あぁ、本当だよ」
「……巧美」
アイシャが不安そうな目でこちらを見てくる……うん、僕の答えは決まった。
「だが断る!!」
「なにっ!?」
「ふはははは、自分を強いと思っているやつに『NO』と断るのは最高のエクスタシーだお!!」
どう考えたってアイシャをあんな奴に渡すなんてあり得ない……この後がどうなるなんて知らない、僕は自分の心の思うままにその感情を吐き出した。
_________________________________________
※気になる部分をサイレント修正しています。
あと2~3話で11月中に終わると言ったな? あれは嘘だ。
有言不実行!! 申し訳ございません。
とりあえず今度こそあと2~3話で3章が終わると思います、たぶん。
お読みいただきありがとうございます。
もしも面白いと感じていただけたら是非いいね! お気に入り登録をお願いします。感想もお待ちしております。
巨人の消えた足下には、それはまた巨大な金属の延べ棒と対照的に小さなハンマーが落ちていた。
部屋の最奥には魔法陣が光っている……多分これで地上に出られるのだろう。
【SR+:アダマンタイトインゴット アダマンタイト製の武具、道具を精製、錬成に必要な金属】
【ダンジョンコア:ダンジョンの管理権限を得る事ができるデバイス】
おお、ゲームであるあるな金属だ……ミスリルより強いのかな? そして【ダンジョンコア】もちゃんと出てきたのでとりあえず一安心だ。
【アダマンタイトインゴット】を収納してから【ダンジョンコア】を手に取ると、脳裏にお馴染みの説明が思い浮かんだ。どうやら今まで手に入れた物と同じようにダンジョンの操作をできるようだ。
「巧美様……最後の一撃は、レベル70のボスを一撃で倒してしまうなんて、あまりにも強力すぎですわ」
「スキルを一瞬で六回も使っていたわね……それに二刀流なんて使えたの?」
「巧美様、お見事です。あのような強力なお力を隠されていましたとは……流石でございますね」
しまった! つい勢いで本気をだしちゃったけれど、茜と美百合以外には見せたらマズかったのかも?
「そんな事よりも南側の増援がまだ残っているでござる、急いで回復して備えないとなりませぬぞ」
「確かにそうね、色々聞きたい事はあるけれど帰還してからにしましょう」
茜はMPポーションを体に掛けながら皆に注意を促す。そうそう、まだ終わってはいないから油断しちゃだめだよね。僕は旨く話が逸れたので少し安心した……一時しのぎにしかなっていないかもしれないけれど。
「む、これは!?」
「どうしたんですの? セバスチャン」
「うそ、敵が……どんどん消えているわ」
「え~? ボスを倒しても消えないんじゃなかったの?」
「これは、消えていると言うよりは、たぶんもの凄い勢いで倒されていっているのでござるな」
「救援に来ている人達がやっているって事なのかお?」
既に僕の索敵に掛かる敵までもが、もの凄い勢いで消えている。信じられないほどの殲滅力だ。
隣でアイシャがスマホでこちらは何とかなったと連絡を取っているようだが、聞こえる会話から相手はそのままこちらに来るようだ。
「12人でこの殲滅力のスレイヤーズって、うちのギルド所属で日本へ来た方はいらっしゃらないでわよね?」
「そうですね、ですがうちの管轄のダンジョンに来たからには関係者です……提携したばかりの『ウィナーズ』所属のスレイヤーズの可能性が高いですね」
「そうよ、相手は『ウィナーズ』所属クラン『アロガンツ』のトップ達よ」
「はっ、あの方達ですの!? 嫌ですわ、こんな所であの顔を見るなんて不快ですわ」
アイシャは複雑な表情で相手の所属を明かすと、エリザが不機嫌そうな声を上げる。二人が人に対してそんな態度を取るなんて初めて見たよ。
「知り合いでござるか?」
「不本意ながら、あたしとエリザはそのクランリーダーと面識があるわ」
「性格が悪い人なのかお?」
「まぁ、クラン名がその人柄を表していると言いますか……まもなくそれも分かるでしょう」
ゴオオオンッ!! 遠くから壁が崩れる音がする。どうやら敵を殲滅してボス部屋まで到着したらしい。砂煙の向こうから見える人影がどんどん増えていく。
「ふん、本当にボスを殺りやがったようだな……どんな手を使いやがったんだ?」
「この規模のレイドボスを1パーティー……6人で攻略するなんて、とても信じられませんね」
そこには一人の男を先頭に11人の美女達の集団が現れたのだ……まさか、これは、ハーレムパーティーなのか!?
先頭の男は身長2メートル近くの長身だけれど筋肉質ではなく厳ついイメージはない。長い髪を後ろで結んだワイルドイケメンで、体にはオレンジ色の蛮族のような鎧を纏っている。
「『ウィナーズ』所属クラン『アロガンツ』のマスター『アインハルト・フォン・シュナイダー』だ……久しぶりだな、アイシャ、エリザ、元気だったか?」
「気安く名前で呼ばないで……救援に来てくれた行動だけは感謝しておくわ」
「右に同じですわ、こちらはもう問題ないですからどうぞお帰りなさって下さいませ」
うわ、名前で呼ぶのに抵抗がないはずのアイシャや、誰にでも丁寧に接するエリザまでこの塩対応!?
「ふはははははっ、おいおいつれないじゃねーか、お前ら俺の子供が欲しいんだろ? あれか? 確か日本ではツンドラとか言うやつか?」
「若、ツンデレですよ。あと本気で嫌がっていると思いますよ」
はっ!? なななな何と!? 子供が欲しいって、それはアレがアレして生まれてくるアレの事!? あと隣にいる黒髪美人は日本人だよね? とにかくこの急展開について行けない。
「わたくしは最初から種馬を必要と言った事は無くってよ」
「まぁ、エリザの家はそうか……だがアイシャ、お前は没落寸前だから優秀な後継者が必要なんだろ? 30分あればいいか……ちょっとそこで種をくれてやっても良いぞ」
「若、最低ですよ……」
さ、30分でって一体何をする気なの!? チェリーな僕には意味がさっぱり分からないよ!!
「下品な男ね……結構よ、こちらは順調よ。このまま功績を上げ続ければ今まで以上に家を大きく出来るわ」
「大きく出たな……だが、後継者はどうするんだ? 俺の種は今のところ100%素質ありだぜ。いくら家が持ち直しても、お前の所は素質無しばっかだから落ちぶれたんだろうが」
「くっ、それは……」
彼女が悔しそうに下を向いたあと、ふと僕と目が合った……あ、すっごくやな予感。
「あんたよりも、ずっとずーーーっと優秀な男がいるから問題ないわ……この子はもの凄く優秀なのよ!!」
「へ?」
突然アイシャが僕の腕を取ると、とんでもない事を言い出した。
「ん? なんだその豚は?」
ブヒッ!? たった今、僕の存在に気付いたとばかりこちらを蔑んだ目で見てくる。ちょ、待って、怖いんですけど……
「まぁ、アイシャ!! 勝手な事を言ってはいけませんわ!! 巧美様はわたくしの婿養子としてラヴレス家に来ると決まっているんですわよ!!」
「待つでござる!! それは駄目でござるよ!!」
「やー!! おにぃはみゅーのおにぃなんだもん!!」
一気に女性陣が僕に詰めかけて来た!! なんだか収集が付かなくなってきたぞ!?
「おい、俺は何か悪い夢でも見ているのか? 女どもが豚を取り合っているように見えるんだが……」
「若、夢ではございません、それと豚とか失礼ですから」
相手の事をそっちのけで僕等のPTの女の子達が言い合いを始めている。
「全く気のない振りをしていたのに、唐突に卑怯ですわ!! あなたはいつもそうです!!」
「言った者勝ちは駄目でござるよ!!」
「ちょっと、今は話しを合わせなさいよ!!」
「だめー!! だめー!!」
「痛いお!! 引っ張らないで欲しいお!!」
「ほっほっほっ、これが若さでございますな」
『早く帰ってツナ缶を食べたいぞ』
ガツン!!! 突然大きな音がすると、男……アインハルトが大きな両手剣を地面に突き立てていた。
「いい加減にしろよ……この俺、アインハルトに勝る奴がいるわけねーだろ。スレイヤーズとしても実力実績共に……ランクAの俺がその豚に劣るとかどんな冗談だよ」
「本人は自称最強ですが、実際にはもっと強いスレイヤーズはいます……ですが、若はダンジョン突破に関する数々の記録保持者です。これは若よりも上位にいるスレイヤーズでは覆す事の出来ない記録となっております」
しーんと、辺りが静まりかえる。それにしてもアインハルトの隣にいる美人以外の後ろにいる人達……この人達も凄い美人……全然喋らないな。
「確かに深度50階層で最年少、最速、最少人数などの記録は、彼より年齢が上の者がでは覆す事は出来ませんね」
「ふふふ、でも、このダンジョンから帰還したらその記録大半は塗り替えられますわよ」
「巧美は今15歳でギルドに登録してまだ1ヶ月よ……あなたの最短記録18歳だったわね。この時点で未来への期待はあなたの比では無いもの」
「…………なんだと?」
ちょ、凄い目で睨まれているんですけど? もうやめて、とっくに僕の精神力はゼロよ!! っていうか、相手挑発する必要なかったよね? 助けに来てくれてありがとう、それではさようなら~でよくなかった?
「スレイヤーズは嘗められてはいけませんからね、懇意としている巧美様が侮られるのは我慢出来なかったのでしょう」
いやいやいや、アイシャの相手が僕だとか言わなければこの展開にならなかったよね?
「気付いているかもしれませんが、相手も五大スレイヤーズの一人ですわ。明確に拒否出来ないと力の弱い立場では、なし崩しに……なんて事も普通にあり得ますの」
オウシット!! 面倒くさい家のゴタゴタに巻き込まれかけている!? なんとか荒事を回避して解散の方向に持って行かなくちゃ!!
「おい、豚……お前が俺に勝ると本気で思っているのか?」
「ブヒッ!? ぼ、僕は最近ダンジョンに潜り始めたタダのキモオタだお」
相手を見ながら【鑑定】を掛けてみると……
【NAME:アインハルト・フォン・シュナイダー LV:93 JOB:狂戦士 弱点:光 状態:正常】
無理無理無理……何この強さ!? 普通に戦ってもダメージ通らないでしょ。大体何だよ狂戦士とか、問答無用で殺されちゃいそうだよ!!
「なら、アイシャは諦めろ……そいつは俺の覇道に必要な女だ」
「波動? 必殺技かお?」
「今の所は大人しく家の命令に従っているが、いずれは独立してスレイヤーズの家を興す……その時に五大スレイヤーズの席に俺が入るのにちょうど良いんだよ」
「それは……アイシャを好きだとかそういう意味ではないのかお?」
「はぁ? 何ガキの飯事みたいな事言ってるんだ? そう言う次元じゃねんだよ、今の本家の生ぬるいやり方じゃあ世界は守れねぇんだよ。力を手に入れて俺が世界を救ってやるんだよ」
「つまりその五大スレイヤーズになれればアイシャじゃなくても良いんじゃないのかお?」
「ばっか、それでモンスターみたいな女を宛がわれたら洒落にならねーだろ! 見た目、家の格、能力も俺に見合うから俺の女にしてやるって言ってるんだよ」
「若、最低ですね……彼は彼女の幸せを問うているのですよ?」
「あー、大丈夫だよ、お前の気にしている飯事的にちゃんと幸せにしてやっから、俺に抱かれて俺の子を生せる女は幸せに決まってんだろ」
「本当に幸せにしてくれるのかお?」
「あぁ、本当だよ」
「……巧美」
アイシャが不安そうな目でこちらを見てくる……うん、僕の答えは決まった。
「だが断る!!」
「なにっ!?」
「ふはははは、自分を強いと思っているやつに『NO』と断るのは最高のエクスタシーだお!!」
どう考えたってアイシャをあんな奴に渡すなんてあり得ない……この後がどうなるなんて知らない、僕は自分の心の思うままにその感情を吐き出した。
_________________________________________
※気になる部分をサイレント修正しています。
あと2~3話で11月中に終わると言ったな? あれは嘘だ。
有言不実行!! 申し訳ございません。
とりあえず今度こそあと2~3話で3章が終わると思います、たぶん。
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