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第十四章 告白
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まーくんを救出して1週間が過ぎようとしていた……まだわたしの元には何も連絡は来ない。
いくら王子様を助けたとは言えわたしは平民で商人の娘。王家がわざわざわたしにまーくんの無事を知らせる義理はない。もしかしたらもう目を覚ましていているのかも? わたしはそれとは別の可能性を考えないようにしながら時を過ごしていた。
「お嬢、またご飯を残して……しっかり食べないと身が持ちませんよ」
「うん……ごめんなさい」
そんな様子のわたしを見かねてマリナがいつも以上にかまってくる。それでも、何があったのかを聞いてこない。そんな気遣いに感謝しながらも気持ちは浮き上がれないでいる。
「お嬢、いつもの方がお越しですよ」
そんな時間が止まっているわたしを突き動かす報告がきた。急いで衣服を整えて手鏡で身だしなみをチェックすると応接間へ走って行った。
「やぁベイビー……どうやらお疲れのようだね」
「よくお越し下さいましたアレウス様……今日のご用件はマクシス様の事でしょうか?」
いつものように綺麗な金髪をふぁさっとかき上げながら笑顔のアレウス様。悲観的な様子が無い事を感じ取ったわたしは期待をしながら聞いてしまう。
「あぁ、ベイビーのお陰でマイブラザーは無事に目を覚ましたよ」
「~~っっっ良かったです~」
わたしは両手を胸に抱き込みながらその場にへたり込んでしまった。
「ふっ、ベイビーがそんなにマイブラザーを心配してくれるなんて……ちょっとジェラシーしてしまいそうになるね」
「ふわっ、そのっ、やっぱり助けたからにはちゃんと無事でいてほしいですから」
いつものキザな笑顔のアレウス様だったけどその笑顔に陰りが見える。どうしたんだろう?
「本当に何も無ければ良かったんだけど、実は手放しに喜べる状況じゃ無いんだ……」
「え?」
喜んだのも束の間、その言葉に胸をきゅっと捕まれたような感覚を覚える。
「マイブラザーが救出されていた時に着けられていたサークレット……あれが魔道具でね……」
誘拐犯はまーくんを誘拐してそのジョブを利用するためにある仕掛けを施した。魔道具を使って記憶を操作し、自分を身内だと思わせて操るつもりだったと言う事だ。
「そんな、それじゃあまー……マクシス様の記憶は!?」
「自分の名前も……王子である事すら覚えていない」
「……うそ」
目の前が真っ暗になった……せっかく会えたと思ったのに。神様……どうしてこんな残酷な事をするんですか?
「魔道具は? その魔道具で記憶を戻せないんでしょうか?」
「いま城の宮廷魔術師が解析をしている……その途中だが、どうやら道具の主であるアルダーク伯でないと正しく戻せないという見解だ」
既に王家は騎士と冒険者を率いてアルダーク領へ向かったが、アルダーク伯は家族とともに逃亡……おそらく隣国へ亡命している可能性が高いらしい。
「王家の総力を尽くして魔道具を解析を完了してみせる……必ずマイブラザーの記憶を取り戻してみせるよ」
「……はい、わたしも出来る事があれば……なんでも仰って下さい」
……そう言うのが精一杯だった。
アレウス様はご帰宅され再びわたしは部屋で一人になった。あはは、食欲は戻りそうに無いなぁ。
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
それから3日後、王宮から呼び出しがあった。どうやら王様直々にわたしにお礼をしたいとの事だった。そしてそれよりも大事な事が……第二王子マクシス様もわたしに直に会いたいと言う事だ。
「ずっと願っていた第二王子様と会えるのに……どうしてこんなにも身体が震えるんだろ」
マクシス王子……まーくんがわたしを初めて見るような目で見られたら……わたしは冷静でいられるだろうか? 凄く怖い。でも、もしも、わたしの事を見て記憶を思い出してくれたら……そんな都合の良い事は無いかも知れないけど……それでも会わないといけないよね。
……わたしは、だいすきな人に会うために心を決めたのでした。
いくら王子様を助けたとは言えわたしは平民で商人の娘。王家がわざわざわたしにまーくんの無事を知らせる義理はない。もしかしたらもう目を覚ましていているのかも? わたしはそれとは別の可能性を考えないようにしながら時を過ごしていた。
「お嬢、またご飯を残して……しっかり食べないと身が持ちませんよ」
「うん……ごめんなさい」
そんな様子のわたしを見かねてマリナがいつも以上にかまってくる。それでも、何があったのかを聞いてこない。そんな気遣いに感謝しながらも気持ちは浮き上がれないでいる。
「お嬢、いつもの方がお越しですよ」
そんな時間が止まっているわたしを突き動かす報告がきた。急いで衣服を整えて手鏡で身だしなみをチェックすると応接間へ走って行った。
「やぁベイビー……どうやらお疲れのようだね」
「よくお越し下さいましたアレウス様……今日のご用件はマクシス様の事でしょうか?」
いつものように綺麗な金髪をふぁさっとかき上げながら笑顔のアレウス様。悲観的な様子が無い事を感じ取ったわたしは期待をしながら聞いてしまう。
「あぁ、ベイビーのお陰でマイブラザーは無事に目を覚ましたよ」
「~~っっっ良かったです~」
わたしは両手を胸に抱き込みながらその場にへたり込んでしまった。
「ふっ、ベイビーがそんなにマイブラザーを心配してくれるなんて……ちょっとジェラシーしてしまいそうになるね」
「ふわっ、そのっ、やっぱり助けたからにはちゃんと無事でいてほしいですから」
いつものキザな笑顔のアレウス様だったけどその笑顔に陰りが見える。どうしたんだろう?
「本当に何も無ければ良かったんだけど、実は手放しに喜べる状況じゃ無いんだ……」
「え?」
喜んだのも束の間、その言葉に胸をきゅっと捕まれたような感覚を覚える。
「マイブラザーが救出されていた時に着けられていたサークレット……あれが魔道具でね……」
誘拐犯はまーくんを誘拐してそのジョブを利用するためにある仕掛けを施した。魔道具を使って記憶を操作し、自分を身内だと思わせて操るつもりだったと言う事だ。
「そんな、それじゃあまー……マクシス様の記憶は!?」
「自分の名前も……王子である事すら覚えていない」
「……うそ」
目の前が真っ暗になった……せっかく会えたと思ったのに。神様……どうしてこんな残酷な事をするんですか?
「魔道具は? その魔道具で記憶を戻せないんでしょうか?」
「いま城の宮廷魔術師が解析をしている……その途中だが、どうやら道具の主であるアルダーク伯でないと正しく戻せないという見解だ」
既に王家は騎士と冒険者を率いてアルダーク領へ向かったが、アルダーク伯は家族とともに逃亡……おそらく隣国へ亡命している可能性が高いらしい。
「王家の総力を尽くして魔道具を解析を完了してみせる……必ずマイブラザーの記憶を取り戻してみせるよ」
「……はい、わたしも出来る事があれば……なんでも仰って下さい」
……そう言うのが精一杯だった。
アレウス様はご帰宅され再びわたしは部屋で一人になった。あはは、食欲は戻りそうに無いなぁ。
□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □
それから3日後、王宮から呼び出しがあった。どうやら王様直々にわたしにお礼をしたいとの事だった。そしてそれよりも大事な事が……第二王子マクシス様もわたしに直に会いたいと言う事だ。
「ずっと願っていた第二王子様と会えるのに……どうしてこんなにも身体が震えるんだろ」
マクシス王子……まーくんがわたしを初めて見るような目で見られたら……わたしは冷静でいられるだろうか? 凄く怖い。でも、もしも、わたしの事を見て記憶を思い出してくれたら……そんな都合の良い事は無いかも知れないけど……それでも会わないといけないよね。
……わたしは、だいすきな人に会うために心を決めたのでした。
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