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第十四章 告白

66本目

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「これは日本語!? しかもわたし宛!!」

 居ても立ってもいられないわたしは急いで手紙を開いた。

『願わくばあーちゃんがこの手紙を読んでくれる事を願う』

 その文章を目にした途端に涙が溢れそうになる。

「やっぱり……王子様はまーくんだったんだ……」

 第二王子様を見た時の気持ち……間違いじゃ無かった。わたしの頑張りも間違いじゃ無かった……はっ、いけない感傷的になっている場合じゃ無いよ! 手紙を読まなきゃ。

『この不思議な世界に生まれ変わって物心ついた時には前世の記憶があった。3歳の時に神から与えられるギフトジョブは”ミシェル・ド・ノートルダム”という意味のわからない物だったが、その後、ジョブを得てから不思議な夢を見るようになった。

 後で分かった事だがそれは予知夢だった。

 予知を見る間隔はバラバラで1週間先の事もあれば1年先の事もあった。予知を見る内容はだいたいが俺や俺の周りの人に関わる事が殆どだった。
 俺が予知で未来を言い当てる事が続くと、安全のためジョブ情報は秘匿される事になり、そして兄とは違って簡単に外に出る事が叶わなくなった。

 それはいい……問題は10歳になってから予知夢を全く見なくなった。考えられる可能性としてはジョブが使えなくなったか、あるいは……俺が未来に存在していないかだ。だからもしもの事を考えてこの手紙を書いておく事を決めた』

 そんな、まーくんがこのまま目を覚まさないの!? だから予知夢を見なくなったの? わたしは動揺しながらも手紙の続きを読んだ。

『変な夢を見たのは生まれ変わってからって訳でも無い。俺がマクシスじゃなく桜庭舞斗 さくらばまいとだった時に不思議な夢を見る事があった。
 どう見ても俺達の住んでいる現代じゃ無く映画のようなファンタジーな世界に住む女の子だ。綺麗な緑色の髪をしたその子の子供の頃から始まって、たぶん16歳くらいになる頃には凄い美人に成長していた。
 その娘はいつも何かに一生懸命で木を育てたり食器を作ったりお菓子を作ったり頑張っていた。
 生まれ変わる前は起きるとすっかり忘れていたのに、今はそれを鮮明に思い出せる……そして、何故か俺はその娘とあーちゃんが重なって見えていた。

 そしてこの世界に生まれ変わってから、俺の目の前に次々とその娘が作ったその物が目の前に現れるようになって確信した。

 あの娘はあーちゃんで、俺と一緒に生まれ変わったんだって。

 最初に桜の木を見た時、流行の木製食器を見た時、革命的と言われていながら俺にとってはお馴染みのお菓子を見た時……俺はあの娘が……あーちゃんが作った物を見て、何としても生き延びようと思った。

 剣の腕を鍛え勉学に励みたとえどんな事が自分の身に降りかかろうと乗り越えようと努力をした。

 あーちゃんに絶対に会う。

 だけど、もしもそれが叶わなかったら……この手紙を見ているって事はそう言う事だと思う。
 だから俺の思いを知って欲しい。俺がこの世界にいたってあーちゃんに知って欲しい。きっと俺がいない事を知って悲しませてしまうだろうけど。俺の我が儘だけど、それでも伝えたい。


 俺はあーちゃんが好きだ。ずっと好きだった。


 どうかあーちゃんがこの世界で幸せになれますように』


「まーくん!! わたしも!! まーくんが大好きだよ!!」

 もう手に持った手紙は溢れる涙で見えない……早くまーくんに会いたい……どうか無事に目を覚まして。



 ……わたしは手紙を大切に抱きしめながら泣く事しか出来なかった。
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