劇ではいつも『木』の役だったわたしの異世界転生後の職業が『木』だった件……それでも大好きな王子様のために庶民から頑張って成り上がるもん!

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第十六章 悪役令嬢の誕生!?

73本目

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「いったい何をなさってらっしゃるの!?」

 凜とした声の方向へ皆が一斉に振り向く。そこにはわたし達と同じくらいの年齢の気品溢れる貴族令嬢が立っていた。

「シャリーナ……ドロシー・シャリーナ様!?」

 同じクラスの顔も知らない誰かがその名を口にする。

 そう、彼女は侯爵でアルシャリーナ家のご令嬢、ドロシー様なのです。五年前お父さんのお店へわたしの作った木製食器を買いに来た時に出会ってから色々と仲良くさせてもらっているお嬢様だ。

 わたしと違って生粋の貴族令嬢たる彼女は……身長はあまり高くないけど……高貴な雰囲気でクラスメイト達を黙らせた。

「聞こえなかったかしら? 何をなさってらっしゃるの?」

「……はっ!? い、いくら侯爵家の令嬢であろうとこの学院では関係ないですわ。上級生とは言えクラスの事には口出し御無用です」

 先程身分を盾に迫ってきた事は彼女の中では無かった事になっているみたい。それではわたし素直に報告します!

「はい、ドロシー様! こちらのセーラー様から貴族派の派閥に入れと強めの勧誘を受けていて困っていました!」

「なっ、あなた!? デタラメですわ!! こんな成り上がり男爵家の娘の言う事と侯爵家の令嬢であるわたしのどちらが正しいか聞くかでもありませんわ!!」

「もちろん、アーリャさんが正しいに決まっています。私とアーリャさんはお友達ですから考えるまでもありません」

「んなっ!?」

 ヒステリックに声を荒げるセーラーさんの問いかけに即答するドロシー様……あぁ、持つべき物はお友達だね。

「身分の関係ない学院で違反事項である身分を笠に着せての派閥加入の強要、しかも自己紹介を終えた初対面の人に対して人目を憚らずの所業……正気とは思えませんわね。これはマース家のご当主に厳重注意が必要なようですね」

「そ、それはおやめください!! 私はただ家の為を思って行動しただけです」

「そんな理屈が通用する訳ありません、そもそも王国に不義を働いたアルダークの家にわざわざ貴族派寄りの者を据えるわけありません。そんな事もわからずに派閥の勧誘とはお笑いごとです!!」

「くっ……」

「セーラーさん、あなたは以前も同じような事をされましたね……あまりおいたが過ぎますとこの学院に相応しくないと判断されますよ」

「はっ、私、急用がありましたの……それでは失礼致しますわ~」

 言うが早いかセーラーさんは逃げるように教室から去って行った。何というか嵐のような貴族令嬢だったね。

「助かりましたドロシー様。まさかいきなりあのような無理難題を押しつけられるとは夢にも思いませんでした」

「無事で良かったわアーリャさん。それにしてもマース家のご令嬢には困ったものです、同じ貴族として恥ずかしい限りですね。無理をしてでもアーリャさんを訪ねてきて良かったわ……あら、予鈴の鐘が鳴りましたね、そろそろ私は戻ります」

「少ない時間を押してまで来て頂いてありがとうございました。またお時間がある時にお話ししたいです」

「ふふふ、私もよ。それではまた後ほど」

「はい」

 わたしを助けてくれたヒーロー(ヒロイン)は優雅に教室から去って行った。後で何かお礼をしないとね。

「アーリャさん、お助け出来なくて申し訳ございませんでした」

「私も申し訳ございませんでした。セーラー様はいつもご身分を盾に無理難題を押しつけてきて私たちは逆らえなかったのです」

「しかたがないですよ。でも、さすがに今回の事で懲りて今後は大人しくなるんじゃないでしょうか?」

「それは……」「そう願いたいですわ」

 え、あの人そんなに残念令嬢なの? えぇ~今後あんな風にも絡まれるの嫌だなぁ~

 この後、話しかけてきてくれた二人と改めて自己紹介をしてお友達になれたよ。

「私、マイラ家のベスティーです……ベスとお呼びください」

「私はオスティオ家のヘレナですわ。また一緒にお話しいたしましょうね」

 二人とも男爵家なのでわたしと同じ身分、初日にお話し出来るお友達が出来て良かったよ。



 ……こうしてわたしの学院生活ははじめから不穏なイベントが起こりつつも上手く回避し順調に始まったのでした。
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