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第十八章 悪役令嬢VS学院四天王

97本目

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「申し訳無いが俺はテンカー家側のメンバーになった」

「悪いが先にルビィ殿に誘われている」

「君の味方になる事は出来ない」

 わたしは決闘の話が決まった後、すぐに学院で剣術に長けた生徒をピックアップしてから味方に勧誘しに行ったんだけど、その全て先回りされていた。
 何故向こうの味方に付くのか聞いてみると、その時は味方しないといけないような気持ちになり、誓約書まで書いた後で我に返ったという。
 その違和感にピンときたので、ルビィさん以外に誰かいなかったか確認すると、どうやら貴族では無い経済学部らしき女生徒がいたらしい……十中八九キャレルさんだよね。

 今回の件は決闘を申し込む前から根回しが済んでいて、わたしは蜘蛛の巣に掛かった蝶のように逃げられない状況に追い込まれてしまったみたい。

 それにしてもキャレルさんのギフトジョブ『相棒』の能力はまず学院長は固定だろうし、おそらくルビィさんも第二の相棒にされているはずだから、どうやって決闘の仲間を増やしたのか……まさか第三の相棒を作れる相棒Season3になったんじゃ!?
 相変わらず意味は分からないけどその可能性が高いよね? この調子でキャレルさんの思い通りに出来る人数が増えてくるとわたしはどんどん不利になっていく。
 何とかその前にまーくんの記憶を取り戻したいけど……今はそれより目先の試練に打ち勝たなきゃ!

「大丈夫だ、俺が全ての相手に勝てば問題ない……心配するな」

「マクシス様……頼もしすぎます」

 相変わらずまーくんは格好良すぎるよね~
 でもこれだけ早めの根回しをしている相手だけに何をしてくるか分からないし、保険の意味もかねて強い助っ人は必要だと思う。どちらにせよ人数をあと3人は集めないといけないから誰かに数あわせでも入ってもらわないと。

 とりあえず学院の決闘についてしっかりとルールを確認してみよう。


□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □


「……と言うわけで、来る決闘に向けて練習したいと思います」

 わたし達は放課後に練習のため中庭に集まった。残念ながらまーくんは予定が入っていてお城に帰っちゃったんだけど、向こうで騎士団長に訓練をしてもらう予定らしい。

 わたしは集まったメンバーを確認した。

「人数あわせですが私だって戦う気持ちですわ」

「私も戦いでは力になれないと思うけど、そもそも勝負するためだから協力します」

 ベスさんにヘレナさんが木剣を重そうに持ちながら頼もしい言葉をかけてくれる。

 結局、有望な剣術が得意な騎士学部の人は全滅。協力に変な条件を付けてくるような人は逆にお断りをしたりなどをしてメンバーを集める事は出来なかった。
 途方に暮れていたところに二人が協力を申し出てくれた。持つべき者はお友達だよ。

「へへっ、戦いなら学習院の御用係であるこのドランに任せておけ」

「僕は戦いには参加しませんが、練習の怪我は瞬く間に治して差し上げますから」

 ここで助っ人にわたしの幼馴染みーずをお迎えしました。

 生意気そうな木刀をもった男の子はドラン。この国ではレアな『サムライ』のギフトジョブを授かったのだけど、全くスキルが成長しなくて悩んでいたところを、何気なく作ってあげた木刀を手にしたら才能が開花。今では冒険者見習いという立場でありながら中堅以上の実力を持っているとか?

 そして利発そうな眼鏡の少年はケニー。昔は大人しく本を読む事が好きなシャイボーイだったのに、気付いたら毒舌バッドボーイになっていた。
 ギフトジョブは『クレリック』。協会に所属しないと魔法を教えてもらえないのでドランと同じく才能をくすぶらせていたんだけど、医学の本を読んでみたらとアドバイスすると元の才能もあったのかみるみるうちに魔法を覚えていった。

 ドランはひたすら剣の修行。ドランが疲れたり怪我をしたらケニーが回復魔法。わたしのギフトジョブでマジックツリーMP回復のコンボで二人とも同年代ではあり得ないほどの実力をつけていったんだよ。

  そういうわけで、五人目には冒険者としての依頼で学院に潜入してもらっているドランに入ってもらったのです。決闘ルールを確認するとあくまでじゃないと駄目と表記されていて、とは書かれていなかったので、そこを突いての作戦だ。
 これでまーくんとドランの二人が戦えばいくら剣術の得意な生徒といえども負ける事は無いと思う。最初は相手が剣術の教師を連れてきたらとも考えたけれど、相手が誰を選んだのかは勧誘に行った時にハッキリ分かったし問題ないはずだよ。
 でも、どういうわけか胸騒ぎがするので練習自体はしておこうと思ったのでした。

「まぁ、どんなに練習しても剣の修行をしてきた相手に勝てるわけ無いけどな」

 ちょっとドランどうして決意に水を差すような事を言うの! 

「いくらアーリャが脳天気でも今は雇い主なんですから言い方に気を付けて下さい」

 ケニー……あなたは自分ではフォローしているつもりなのかも知れないけど、わたしフォローしてもらってありがとうって思った事一度も無いからね。

「まぁ、真剣勝負じゃ無くてあくまで試合だからな。とりあえず一つだけ技を練習しておこう。どうせ1週間もないんからそれが限界だろ」

「よろしくお願いしますわ」

「私も頑張ります」



 ……こうして念には念を入れた剣術の特訓が始まるのでした。
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