35 / 42
第七章 筑前守
一
しおりを挟む
目に入ったのは、無数の人足たちが行き交う、作事場の景観だった。半裸の逞しい男たちが、忙しく動き回り、あちらこちらで土塊を運んだり、材木を挽いたり、あるいは地面を掘り返していた。作業をしているのは、男ばかりではなく、ほぼ同数の女たちも、男たちと同じような作業をしていた。
喫煙の影響で、誾千代の〝サトリ〟の力は封じられ、駕籠の外が何やら、騒々しい状態だとは思っていたが、これほど多くの人々が立ち働く場面だとは、想像もしていなかった。
「甚兵衛、いったい、これは何事です?」
まるっきり予想もつかない事態に、誾千代はつい、甚兵衛に対し、切り口上になっていた。
「多岐屋の申した、本願寺跡地に建つ、城の縄張りで御座ろう」
意外と平静に、甚兵衛は答えた。
追及する気力を失い、誾千代は黙って駕籠から降りて、地面に足をつけた。背中を伸ばすと、めりめりと背中の筋肉が悲鳴を上げているように思えた。甚兵衛の隣に立って、目の前の作事場の景色を眺めた。
誾千代の駕籠を担いできた雇足軽たちは、珍しいものを見るという表情になって、お互いの顔を見合わせた。
普通、姫君と呼ばれる身分の女性は、建物の外で、駕籠から出たりはしない。着物の裾が汚れるからだが、そのほかの理由として、身分が高い女性は、下々の人間の目に触れる機会を極力、避けるよう気を遣うのが、普通だ。
さらに今日の誾千代は、前髪の白髪をそのままにしている。いつもなら白髪染めを使って隠すのだが、出発の慌ただしさで、つい忘れた。
だが誾千代は、自分の前髪の白髪が、作事場で働く土工の好奇の視線に晒されても平気だし、なにより狭い駕籠の中は息が詰まった。
こうして見回すと、作事場の活気は、中々興味深かった。
皆、てんでんばらばらに動いているようで、よく見ると、お互い無言の打ち合わせがあるのか、全体に調和がとれていた。
彌七郎は騎乗から降りて、誾千代の傍らに立ち、剥き出しの好奇心を顕わし、作事場を熱心に眺めていた。彌七郎が馬から降り立つと、重蔵が近づいて、馬の手綱を取った。重蔵は彌七郎の傍にいて、常に細々とした世話を焼いていた。その様子は、まるで従者のようだった。
誾千代は、彌七郎が今にも作事場のど真ん中に跳び出していくのではないかと、ひやひやとした。
「お待たせ申し上げる」
背後から声をかけられ、誾千代はびくっと全身を強張らせた。
〝サトリ〟の能力が戻っていない今、こうして思いがけないところから声をかけられるのは、誾千代の好まないところだ。
振り向くと、そこには二人の侍が立っていた。一人は中年で、年のころ、三十半ば。もう一人は若く、ようやく二十歳を越えたころかと思われた。
二人の侍は一同に向かい、深々と頭を下げた。口を開いたのは、年上のほうだった。
「羽柴小一郎と申す。以後、ご懇意を願いとうたまわる」
「おお!」
と、甚兵衛は破顔した。さっそく小一郎と名乗った相手に、慇懃に礼を返した。
これが筑前守の片腕と言われる、羽柴小一郎か……と、誾千代は関心を覚えた。
今回の会見の前に、誾千代らは筑前守について、様々な事柄を耳に入れていた。羽柴小一郎についても、多岐屋から名前が挙がっていた。
「筑前守様が異数の出世をなされたのは良いことで御座いますが、信頼できる家臣が、ほとんど御座いません。それで弟ぎみの小一郎様を召し出し、もっとも信頼できる家臣としたので御座います。なにしろ血を分けたご兄弟、筑前守様にとっても、もっとも気の置けないお方でしょう」
と、多岐屋は解説をしていた。
羽柴小一郎は重厚、慎重を絵に描いたような性格で、突っ走りがちな兄の羽柴筑前守の手綱を引き留める、重石のような役割を担っていた。また今回のような、他国との応接においても、小一郎は案内係を任じられることが多かったと、誾千代は聞いていた。
誾千代は噂ではあるが、筑前守の容貌について、色々、小耳にはさんでいた。
それによると、筑前守はきわめて小柄で、その顔は猿に似ているという。織田信長に召し抱えられたきっかけの一つが、人間離れした醜い容貌のせいだと噂は語っていた。
目の前の小一郎は、どこといって特徴のない、平凡な容姿の持ち主で、噂を信じるなら、兄の筑前守とは似ていないようだった。後年、小一郎と、筑前守との血縁関係について、疑問視がなされている。
「兄は少々、遅れておりますれば、しばしお待ちを願います。それまで、この石田佐吉なる者が、御一同をお相手をいたします」
小一郎は軽く手を挙げ、背後で黙ったまま立っていた、若侍を指し示した。若侍は軽く頭を下げ、口を開いた。
「どうぞ佐吉とお呼び下され。未熟者では御座いますが、精いっぱいあい努めます」
石田佐吉、後の石田三成だった。この頃、佐吉は二十歳をようやく越えた頃だったが、筑前守に従って、応接係を重ねた結果、年には似合わない落ち着いた物腰を身に着けていた。
佐吉は、片手を挙げ、やや小高い場所にある建物を指さした。
「あれは作事小屋で御座います」
小屋、というより誾千代の目には堂々たる館に見えた。新築らしく、柱は真っ白で、屋根は檜皮葺で、清潔な印象を放っていた。
小一郎を先頭に、甚兵衛、誾千代、彌七郎の順で、緩い坂道を作事小屋へ向かった。誾千代は前を向いていたが、背後の彌七郎の気配を探った。ちらっと背後を振り向き、様子をうかがうと、案の定、彌七郎は上の空で、しきりと作事場の様子に好奇心を刺激されているようだった。
作事場でいるのは、先に述べたように、男ばかりではなく、女も働いていた。その女たちのいでたちは、上半身をはだけ、胸を露出させている者も見かけられた。彌七郎の関心が、その女たちの中で、豊満な体つきの女に向けられているのに、誾千代は気づいた。別に心を読む能力がなくとも、彌七郎の顔つきを見れば、関心がどこに向けられているか、誾千代には、一目瞭然だった。
ふらふらと彌七郎は、その女に向かって歩き出そうとした。誾千代は素早く腕を伸ばし、彌七郎の袖を引っ張った。
「彌七郎殿、どこへ行かれます? 筑前守様がお待ちで御座いますぞ」
「んあ? さっき、遅れておると聞いたぞ」
誾千代は「ちっ!」と小さく舌打ちした。この屁理屈男!
「来るのです!」
彌七郎の手首を掴み、誾千代はぎりっと捻った。捻りあげると同時に、指先を思い切り、彌七郎の細い手首に食い込ませる。
「おほほほほほっ!」
彌七郎は、笑い声のような悲鳴を上げながら、よたよたと誾千代に引っ張られた。
誾千代の指の力は強い。日頃の修練の賜物だ。
彌七郎は、素直に誾千代に従った。
喫煙の影響で、誾千代の〝サトリ〟の力は封じられ、駕籠の外が何やら、騒々しい状態だとは思っていたが、これほど多くの人々が立ち働く場面だとは、想像もしていなかった。
「甚兵衛、いったい、これは何事です?」
まるっきり予想もつかない事態に、誾千代はつい、甚兵衛に対し、切り口上になっていた。
「多岐屋の申した、本願寺跡地に建つ、城の縄張りで御座ろう」
意外と平静に、甚兵衛は答えた。
追及する気力を失い、誾千代は黙って駕籠から降りて、地面に足をつけた。背中を伸ばすと、めりめりと背中の筋肉が悲鳴を上げているように思えた。甚兵衛の隣に立って、目の前の作事場の景色を眺めた。
誾千代の駕籠を担いできた雇足軽たちは、珍しいものを見るという表情になって、お互いの顔を見合わせた。
普通、姫君と呼ばれる身分の女性は、建物の外で、駕籠から出たりはしない。着物の裾が汚れるからだが、そのほかの理由として、身分が高い女性は、下々の人間の目に触れる機会を極力、避けるよう気を遣うのが、普通だ。
さらに今日の誾千代は、前髪の白髪をそのままにしている。いつもなら白髪染めを使って隠すのだが、出発の慌ただしさで、つい忘れた。
だが誾千代は、自分の前髪の白髪が、作事場で働く土工の好奇の視線に晒されても平気だし、なにより狭い駕籠の中は息が詰まった。
こうして見回すと、作事場の活気は、中々興味深かった。
皆、てんでんばらばらに動いているようで、よく見ると、お互い無言の打ち合わせがあるのか、全体に調和がとれていた。
彌七郎は騎乗から降りて、誾千代の傍らに立ち、剥き出しの好奇心を顕わし、作事場を熱心に眺めていた。彌七郎が馬から降り立つと、重蔵が近づいて、馬の手綱を取った。重蔵は彌七郎の傍にいて、常に細々とした世話を焼いていた。その様子は、まるで従者のようだった。
誾千代は、彌七郎が今にも作事場のど真ん中に跳び出していくのではないかと、ひやひやとした。
「お待たせ申し上げる」
背後から声をかけられ、誾千代はびくっと全身を強張らせた。
〝サトリ〟の能力が戻っていない今、こうして思いがけないところから声をかけられるのは、誾千代の好まないところだ。
振り向くと、そこには二人の侍が立っていた。一人は中年で、年のころ、三十半ば。もう一人は若く、ようやく二十歳を越えたころかと思われた。
二人の侍は一同に向かい、深々と頭を下げた。口を開いたのは、年上のほうだった。
「羽柴小一郎と申す。以後、ご懇意を願いとうたまわる」
「おお!」
と、甚兵衛は破顔した。さっそく小一郎と名乗った相手に、慇懃に礼を返した。
これが筑前守の片腕と言われる、羽柴小一郎か……と、誾千代は関心を覚えた。
今回の会見の前に、誾千代らは筑前守について、様々な事柄を耳に入れていた。羽柴小一郎についても、多岐屋から名前が挙がっていた。
「筑前守様が異数の出世をなされたのは良いことで御座いますが、信頼できる家臣が、ほとんど御座いません。それで弟ぎみの小一郎様を召し出し、もっとも信頼できる家臣としたので御座います。なにしろ血を分けたご兄弟、筑前守様にとっても、もっとも気の置けないお方でしょう」
と、多岐屋は解説をしていた。
羽柴小一郎は重厚、慎重を絵に描いたような性格で、突っ走りがちな兄の羽柴筑前守の手綱を引き留める、重石のような役割を担っていた。また今回のような、他国との応接においても、小一郎は案内係を任じられることが多かったと、誾千代は聞いていた。
誾千代は噂ではあるが、筑前守の容貌について、色々、小耳にはさんでいた。
それによると、筑前守はきわめて小柄で、その顔は猿に似ているという。織田信長に召し抱えられたきっかけの一つが、人間離れした醜い容貌のせいだと噂は語っていた。
目の前の小一郎は、どこといって特徴のない、平凡な容姿の持ち主で、噂を信じるなら、兄の筑前守とは似ていないようだった。後年、小一郎と、筑前守との血縁関係について、疑問視がなされている。
「兄は少々、遅れておりますれば、しばしお待ちを願います。それまで、この石田佐吉なる者が、御一同をお相手をいたします」
小一郎は軽く手を挙げ、背後で黙ったまま立っていた、若侍を指し示した。若侍は軽く頭を下げ、口を開いた。
「どうぞ佐吉とお呼び下され。未熟者では御座いますが、精いっぱいあい努めます」
石田佐吉、後の石田三成だった。この頃、佐吉は二十歳をようやく越えた頃だったが、筑前守に従って、応接係を重ねた結果、年には似合わない落ち着いた物腰を身に着けていた。
佐吉は、片手を挙げ、やや小高い場所にある建物を指さした。
「あれは作事小屋で御座います」
小屋、というより誾千代の目には堂々たる館に見えた。新築らしく、柱は真っ白で、屋根は檜皮葺で、清潔な印象を放っていた。
小一郎を先頭に、甚兵衛、誾千代、彌七郎の順で、緩い坂道を作事小屋へ向かった。誾千代は前を向いていたが、背後の彌七郎の気配を探った。ちらっと背後を振り向き、様子をうかがうと、案の定、彌七郎は上の空で、しきりと作事場の様子に好奇心を刺激されているようだった。
作事場でいるのは、先に述べたように、男ばかりではなく、女も働いていた。その女たちのいでたちは、上半身をはだけ、胸を露出させている者も見かけられた。彌七郎の関心が、その女たちの中で、豊満な体つきの女に向けられているのに、誾千代は気づいた。別に心を読む能力がなくとも、彌七郎の顔つきを見れば、関心がどこに向けられているか、誾千代には、一目瞭然だった。
ふらふらと彌七郎は、その女に向かって歩き出そうとした。誾千代は素早く腕を伸ばし、彌七郎の袖を引っ張った。
「彌七郎殿、どこへ行かれます? 筑前守様がお待ちで御座いますぞ」
「んあ? さっき、遅れておると聞いたぞ」
誾千代は「ちっ!」と小さく舌打ちした。この屁理屈男!
「来るのです!」
彌七郎の手首を掴み、誾千代はぎりっと捻った。捻りあげると同時に、指先を思い切り、彌七郎の細い手首に食い込ませる。
「おほほほほほっ!」
彌七郎は、笑い声のような悲鳴を上げながら、よたよたと誾千代に引っ張られた。
誾千代の指の力は強い。日頃の修練の賜物だ。
彌七郎は、素直に誾千代に従った。
0
あなたにおすすめの小説
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~
bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。
【時代小説】 黄昏夫婦
蔵屋
歴史・時代
江戸時代、東北地方の秋田藩は貧かった。
そんな中、真面目なひとりの武士がいた。同僚からは馬鹿にされていたが真面目な男であった。俸禄は低く貧しい。娘二人と実母との4人暮らし。
秋田藩での仕事は勘定方である。
仕事が終わると真っ直ぐ帰宅する。
ただひたすら日中は城中では勘定方の仕事をまじめにして、帰宅すれば論語を読んで知識を習得する。
そんな毎日であった。彼の名前は立花清左衛門。年齢は35歳。
娘は二人いて、一人はとめ15歳。もう一人は梅、8歳。
さて|黄昏《たそがれ》は、一日のうち日没直後、雲のない西の空に夕焼けの名残りの「赤さ」が残る時間帯のことを言う。「|黄昏時《たそがれどき)」。 「黄昏れる《たそがれる》」という動詞形もある。
「たそがれ」は、江戸時代になるまでは「たそかれ」といい、「たそかれどき」の略でよく知られていた。夕暮れの人の顔の識別がつかない暗さになると誰かれとなく、「そこにいるのは誰ですか」「誰そ彼(誰ですかあなたは)」とたずねる頃合いという意味で日常会話でよく使われた。
今回の私の小説のテーマはこの黄昏である。
この風習は広く日本で行われている。
「おはようさんです」「これからですか」「お晩でございます。いまお帰りですか」と尋ねられれば相手も答えざるを得ず、互いに誰であるかチェックすることでヨソ者を排除する意図があったとされている。
「たそかれ」という言葉は『万葉集』に
誰そ彼と われをな問ひそ 九月の 露に濡れつつ 君待つわれそ」
— 『万葉集』第10巻2240番
と登場するが、これは文字通り「誰ですかあなたは」という意味である。
「平安時代には『うつほ物語』に「たそかれどき」の用例が現れ、さらに『源氏物語』に
「寄りてこそ それかとも見め たそかれに ほのぼの見つる 夕顔の花」
— 『源氏物語』「夕顔」光源氏
と、現在のように「たそかれ」で時間帯を表す用例が現れる。
なおこの歌は、帖と登場人物の名「夕顔」の由来になった夕顔の歌への返歌である。
またこの言葉の比喩として、「最盛期は過ぎたが、多少は余力があり、滅亡するにはまだ早い状態」をという語句の用い方をする。
漢語「|黄昏《コウコン》」は日没後のまだ完全に暗くなっていない時刻を指す。「初昏」とも呼んでいた。十二時辰では「戌時」(午後7時から9時)に相当する。
「たそがれ」の動詞化の用法。日暮れの薄暗くなり始めるころを指して「空が黄昏れる」や、人生の盛りを過ぎ衰えるさまを表現して「黄昏た人」などのように使用されることがある。
この物語はフィクションです。登場人物、団体等実際に同じであっても一切関係ありません。
それでは、小説「黄昏夫婦」をお楽しみ下さい。
読者の皆様の何かにお役に立てれば幸いです。
作家 蔵屋日唱
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)
三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。
佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。
幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。
ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。
又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。
海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。
一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。
事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。
果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。
シロの鼻が真実を追い詰める!
別サイトで発表した作品のR15版です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる