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ジムの打ち明け話
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再び超空間の眺め。
ジムは奇妙な感覚に襲われていた。
なんだか、自分が自分でない感じ。どことなく足下が揺らいでいく不安が押し寄せる。
「お、おれ……どうしたのかな? 何だか妙だぜ……」
ふと自分の手に目をやる。すると、ふらっと視界が揺らぎ、透明になってしまいそうな感覚が迫り、なんと手の平を通して向こうのコンソールが見えている!
「駄目よ! しっかり確信を持っていないと、実在が消えてしまうわ!」
キャシーの声に、ジムは「はっ」と我に帰る。キャシーはジムの目をまともに見つめ、言い聞かせるように言葉を押し出す。
「よく聞いて! 今、この《呑竜》は、シュレーディンガー航法に入っているの。シルバーの追跡を躱すには、この方法しかないから。この航法は、あたし一人では行えない。あなたが同乗している今こそ、使える航法なの」
キャシーの声がどこか遠くから聞こえてくる感じに、ジムは集中力を失いかける。
キャシーは叱咤した。
「しっかりして! あんたがあたしの実在を確信してくれないと、あたし自身の存在が薄れてしまう。あたしも、あなたの実在を確信するから、あなたの実在がしっかりしたものになるの? 判る?」
ジムは朦朧とした意識の中、必死になって思考を繋ぎとめようとした。
「そ、それじゃ……どうして、ヘロヘロは?」
「ヘロヘロは、ロボットだから。ロボットの思考は人間と違い、意識ではないの。人間の意識こそが必要なのよ。さあ、あたしは、あなたの実在を信じている! でも、それだけじゃ、まだ十分じゃない。あんたの実在を確たるものにするには、あたしがあんたをよく知っていることが必要なのよ。だからお互い、自分のことを話し合う必要があるわ!」
「自分のこと?」
「そう、自分のこと……あたしはキャシー。生理年齢二十二才! 生まれは第三銀河象限のソリティア星系……」
急に目の前のキャシーの顔がくっきりとジムの視界に入ってきた。その様子を見て、キャシーは頷いた。
「そうよ、あなたがあたしのことを知れば知るほど、あたしの実在は確かなものになる。だから、あんたのこと、教えて! あたしがあんたのこと知れば知るほど、お互いしっかりと存在できるのよ」
ジムは、ゆっくりと首を縦に振る。
「おれはジム。生まれは洛陽シティ平民区……生理年齢は……」
ジムは、ちょっと躊躇って付け加えた。
「二十三才……」
すかさずキャシーが言い返す。
「嘘を言わないで! あんた、どう見たって、あたしより年下じゃない! 正直に言ってくれないと、あたしがあんたを確信できなくなるのよ!」
生理年齢とは文字通り、本人が今まで生きてきた年月のことである。
惑星ごとに自転、公転周期がまちまちで、しかも宇宙船を使用して亜光速になると、相対理論効果で個人ごとに経過年月が違いが出る。
従って、単純に二十才といっても、それがどの惑星上での二十年かどうか、判断できない。そのため自分の年齢を確かめ合うときは生理年齢を宣告するのが普通である。
ことにキャシーのように停滞フィールドで一世紀過ごした経験をすると、単純に加算してキャシーの年齢は百二十二才になるのだ。
そういった齟齬を防ぐための生理年齢であった。
ジムはキャシーの逆襲に頬が熱くなるのを感じていた。
「判ったよ……。生理年齢十八才。これで満足かい? キャシー姐さん!」
キャシーは、にっこりと笑った。
「よくできました! それじゃ超空間を出るまで少し時間があるから、あんたのこと聞かせて。どうして宇宙パイロットになりたい、なんて考えたの?」
「そんなこと、言わなきゃならないのか?」
「そうよ、正直に言ってね」
「判ったよ……」
ジムは話し出した。
話しているうち、徐々に自分の存在が確かなものになっていく感覚が満ちてくる。
ジムは奇妙な感覚に襲われていた。
なんだか、自分が自分でない感じ。どことなく足下が揺らいでいく不安が押し寄せる。
「お、おれ……どうしたのかな? 何だか妙だぜ……」
ふと自分の手に目をやる。すると、ふらっと視界が揺らぎ、透明になってしまいそうな感覚が迫り、なんと手の平を通して向こうのコンソールが見えている!
「駄目よ! しっかり確信を持っていないと、実在が消えてしまうわ!」
キャシーの声に、ジムは「はっ」と我に帰る。キャシーはジムの目をまともに見つめ、言い聞かせるように言葉を押し出す。
「よく聞いて! 今、この《呑竜》は、シュレーディンガー航法に入っているの。シルバーの追跡を躱すには、この方法しかないから。この航法は、あたし一人では行えない。あなたが同乗している今こそ、使える航法なの」
キャシーの声がどこか遠くから聞こえてくる感じに、ジムは集中力を失いかける。
キャシーは叱咤した。
「しっかりして! あんたがあたしの実在を確信してくれないと、あたし自身の存在が薄れてしまう。あたしも、あなたの実在を確信するから、あなたの実在がしっかりしたものになるの? 判る?」
ジムは朦朧とした意識の中、必死になって思考を繋ぎとめようとした。
「そ、それじゃ……どうして、ヘロヘロは?」
「ヘロヘロは、ロボットだから。ロボットの思考は人間と違い、意識ではないの。人間の意識こそが必要なのよ。さあ、あたしは、あなたの実在を信じている! でも、それだけじゃ、まだ十分じゃない。あんたの実在を確たるものにするには、あたしがあんたをよく知っていることが必要なのよ。だからお互い、自分のことを話し合う必要があるわ!」
「自分のこと?」
「そう、自分のこと……あたしはキャシー。生理年齢二十二才! 生まれは第三銀河象限のソリティア星系……」
急に目の前のキャシーの顔がくっきりとジムの視界に入ってきた。その様子を見て、キャシーは頷いた。
「そうよ、あなたがあたしのことを知れば知るほど、あたしの実在は確かなものになる。だから、あんたのこと、教えて! あたしがあんたのこと知れば知るほど、お互いしっかりと存在できるのよ」
ジムは、ゆっくりと首を縦に振る。
「おれはジム。生まれは洛陽シティ平民区……生理年齢は……」
ジムは、ちょっと躊躇って付け加えた。
「二十三才……」
すかさずキャシーが言い返す。
「嘘を言わないで! あんた、どう見たって、あたしより年下じゃない! 正直に言ってくれないと、あたしがあんたを確信できなくなるのよ!」
生理年齢とは文字通り、本人が今まで生きてきた年月のことである。
惑星ごとに自転、公転周期がまちまちで、しかも宇宙船を使用して亜光速になると、相対理論効果で個人ごとに経過年月が違いが出る。
従って、単純に二十才といっても、それがどの惑星上での二十年かどうか、判断できない。そのため自分の年齢を確かめ合うときは生理年齢を宣告するのが普通である。
ことにキャシーのように停滞フィールドで一世紀過ごした経験をすると、単純に加算してキャシーの年齢は百二十二才になるのだ。
そういった齟齬を防ぐための生理年齢であった。
ジムはキャシーの逆襲に頬が熱くなるのを感じていた。
「判ったよ……。生理年齢十八才。これで満足かい? キャシー姐さん!」
キャシーは、にっこりと笑った。
「よくできました! それじゃ超空間を出るまで少し時間があるから、あんたのこと聞かせて。どうして宇宙パイロットになりたい、なんて考えたの?」
「そんなこと、言わなきゃならないのか?」
「そうよ、正直に言ってね」
「判ったよ……」
ジムは話し出した。
話しているうち、徐々に自分の存在が確かなものになっていく感覚が満ちてくる。
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