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第十一話 混乱の撮影出し
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市川らは、王子随行員のため、用意された部屋に集まって、額を寄せ合った。
新庄が口火を切る。
「どうするんだ? 帝国軍の兵器を設定する羽目になったみたいだな」
山田が苦悩を顕わにして、眉を寄せた。
「戦争物か! 大抵、戦争物のアニメってやつは、シリーズが長くなるんだよなあ……。もし、本格的な戦争になったら、いつになったら帰れるか、判らんぞ!」
洋子は、あっけらかんと口を挟む。
「あら! 問題ないわよ! 三村君の言うとおり、帝国側に超強力な兵器を登場させれば良いじゃない? バートル国は、どう見ても中世の装備しかないみたいだし、マシンガンとか、戦闘機相手に、勝てるわけないもの」
山田は首を振った。
「それでは、虐殺だ! 仮にも戦争だぞ! おれたちは、そんな一方的な戦いに手を貸すなんて、絶対に御免被るからな!」
山田の反対意見に、洋子は一遍にぺしゃんこになった。
「御免、そこまで考えていなかった……」
市川は、ぽつりと呟くように口を開く。
「そうか……。戦争になっても、人が簡単に死なないような戦いだったら……」
山田は、ぎょっとなって市川に顔を向ける。
「市川君! 君は何を言おうとしているんだ?」
山田の反応に、市川は「えっ」と我に返った。思わず、胸に浮かんだ考えを口に出していた自分に気付く。
「悪い、ちょっとボーっとなっていた……」
しかし、新庄は目を輝かせている。
「いや、今の市川の意見は、面白いぞ!」
新庄の言葉に山田は「うん」と頷き、両目を煌かせて話し出す。
「いいかい。おれたちが設定すれば、その設定は『蒸汽帝国』の世界では、現実のものになる。もちろん、木戸さんのOKは要る。それでも、基本的におれたちの設定が必要という事実には、変わりはない」
山田の言葉に、他の三人は同時に頷く。山田は言葉を続けた。
「だから……破壊を目的とした兵器じゃなく、戦いを無効にするような働きをする兵器だったら、どうだ? 戦いが馬鹿らしくなるような……そうだな……例えば……」
後が続かなくなった山田は、困ったように頭を掻いた。
市川の頭上に、電球が灯った!
「ギャグにしちまえばいいんだ!」
市川は叫び、にったりと笑いを浮かべた。
「何も糞真面目に、戦車とか、戦闘機を出す必要はねえ! 例えば、バナナの皮を打ち出す大砲とかあれば、敵はバナナの皮を踏んで、滑って戦えなくなるとか……」
山田が市川の言葉に頷いた。
「バスター・キートンとか、ハロルド・ロイドのスラップ・スティック映画に出てくるような、馬鹿らしい兵器だな! そうだ! シリアスな戦争映画じゃなく、滑ったり転んだりの、ドタバタ喜劇で行けば……」
うずうずと、新庄の顔に喜色が浮かんだ。
「なるほど! それなら、三村の願いも叶う。ようし、先が見えてきたな!」
立ち上がり、全員に発破を懸けるように両手を振り回した。
「さあ! 仕事だ、仕事だ! 愚図愚図している暇はないぞ!」
市川は新庄の浮かれ調子に「やれやれ」と首を振った。
何だか『タップ』に戻った気分だ。
新庄が口火を切る。
「どうするんだ? 帝国軍の兵器を設定する羽目になったみたいだな」
山田が苦悩を顕わにして、眉を寄せた。
「戦争物か! 大抵、戦争物のアニメってやつは、シリーズが長くなるんだよなあ……。もし、本格的な戦争になったら、いつになったら帰れるか、判らんぞ!」
洋子は、あっけらかんと口を挟む。
「あら! 問題ないわよ! 三村君の言うとおり、帝国側に超強力な兵器を登場させれば良いじゃない? バートル国は、どう見ても中世の装備しかないみたいだし、マシンガンとか、戦闘機相手に、勝てるわけないもの」
山田は首を振った。
「それでは、虐殺だ! 仮にも戦争だぞ! おれたちは、そんな一方的な戦いに手を貸すなんて、絶対に御免被るからな!」
山田の反対意見に、洋子は一遍にぺしゃんこになった。
「御免、そこまで考えていなかった……」
市川は、ぽつりと呟くように口を開く。
「そうか……。戦争になっても、人が簡単に死なないような戦いだったら……」
山田は、ぎょっとなって市川に顔を向ける。
「市川君! 君は何を言おうとしているんだ?」
山田の反応に、市川は「えっ」と我に返った。思わず、胸に浮かんだ考えを口に出していた自分に気付く。
「悪い、ちょっとボーっとなっていた……」
しかし、新庄は目を輝かせている。
「いや、今の市川の意見は、面白いぞ!」
新庄の言葉に山田は「うん」と頷き、両目を煌かせて話し出す。
「いいかい。おれたちが設定すれば、その設定は『蒸汽帝国』の世界では、現実のものになる。もちろん、木戸さんのOKは要る。それでも、基本的におれたちの設定が必要という事実には、変わりはない」
山田の言葉に、他の三人は同時に頷く。山田は言葉を続けた。
「だから……破壊を目的とした兵器じゃなく、戦いを無効にするような働きをする兵器だったら、どうだ? 戦いが馬鹿らしくなるような……そうだな……例えば……」
後が続かなくなった山田は、困ったように頭を掻いた。
市川の頭上に、電球が灯った!
「ギャグにしちまえばいいんだ!」
市川は叫び、にったりと笑いを浮かべた。
「何も糞真面目に、戦車とか、戦闘機を出す必要はねえ! 例えば、バナナの皮を打ち出す大砲とかあれば、敵はバナナの皮を踏んで、滑って戦えなくなるとか……」
山田が市川の言葉に頷いた。
「バスター・キートンとか、ハロルド・ロイドのスラップ・スティック映画に出てくるような、馬鹿らしい兵器だな! そうだ! シリアスな戦争映画じゃなく、滑ったり転んだりの、ドタバタ喜劇で行けば……」
うずうずと、新庄の顔に喜色が浮かんだ。
「なるほど! それなら、三村の願いも叶う。ようし、先が見えてきたな!」
立ち上がり、全員に発破を懸けるように両手を振り回した。
「さあ! 仕事だ、仕事だ! 愚図愚図している暇はないぞ!」
市川は新庄の浮かれ調子に「やれやれ」と首を振った。
何だか『タップ』に戻った気分だ。
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