53 / 279
ヘロヘロの覚醒
5
しおりを挟む
と、パックを睨んでいたダルトの表情が変化した。
なんだろう、とパックは眉をひそめた。
ダルトの視線はパックの背中ごしを見ている。
ふるい手だ。
背中に何かあると思わせ、おもわずふりかえったときに襲いかかるつもりだろう。
が、ダルトのほかギャンの取り巻き、そしてギャンもまたパックの背中に視線を注いでいる。
ミリィもあっけにとられた表情で同じ方向を見ていた。
そのときようやく駈けつけたニコラ博士がパックに声をかけた。
「パック、そいつはいったい何者だ?」
ようやくふりむいたパックは目を見開いた。
そこにいるのはヘロヘロだった。
が、それはいままでのヘロヘロではなかった。
ずんぐりとした身体つきはそのままだったが、その表情が違っていた。
細い目が妖しく光り、口にはにゅっと牙が生えている。
そして頭の角が太く、そして長くなっていた。
いまでは二十センチほどの長さにのび、太さも五、六センチはありそうだ。
ぐふぐふぐふ……と、ヘロヘロは口の中でこもった笑い声をたてた。
「ヘロヘロ……お前……」
パックが声をかけるとヘロヘロはぎろりと目玉を動かした。
「パックか……駆けつけるのが遅かったじゃないか……もしかして、ここに来るのは厭だったんじゃないのか?」
「なに言ってるんだ?」
パックの胸はずきりと痛んだ。
ヘロヘロのことは考えたくもなかった。だからギャンがあんな目つきで見ていたのに関わらず、教室を飛び出してしまったのだ。こうなることは判っていたのに……。
はあはあはあ……とヘロヘロは低い声で笑った。
パックはぞっとなった。
魔王が復活した!
その表情を覗き込んだヘロヘロは鷹揚にうなずいた。
「さよう、わしこそが魔王そのものである!」
そう言うとギャンを見る。
視線を向けられたギャンは、へたへたと腰を抜かしていた。
「ギャン、とかいったな。礼を言うよ。お前のおかげで、本来のわしに戻れたからな。この角……」
こつこつと指をあげ、角にふれた。その指には太く、鋭い爪が生えていた。
「これにお前の悪意、嫉妬、妄念がびんびんと響いてきた。お前の悪意は底なしだ。お前の暗い欲望にわしは目覚めたのだ……」
わはははは……!
ヘロヘロの哄笑は、まるで物理的な力を持つかのようにあたりを圧倒する。ダルトは恐怖のあまりくらくらと目をまわしていた。
「ヘロヘロちゃん……」
目に涙をため、ミリィはつぶやいた。彼女を羽交い絞めにしていたツーランは、すでに雲を霞と逃げ去っていた。
ほほ、とヘロヘロは軽く笑った。
「ミリィ、お前はわしに善良さを教えてやろうと思っていたようだが、それはいまはかなわぬことだ。が、お前がわしに寄せてくれた好意に免じ、お前だけは助けることにしよう。さて、魔王の復活の手はじめとして、このロロ村を地獄の業火に陥としてやろう」
ヘロヘロはさっと両手を天にのばした。
なんだろう、とパックは眉をひそめた。
ダルトの視線はパックの背中ごしを見ている。
ふるい手だ。
背中に何かあると思わせ、おもわずふりかえったときに襲いかかるつもりだろう。
が、ダルトのほかギャンの取り巻き、そしてギャンもまたパックの背中に視線を注いでいる。
ミリィもあっけにとられた表情で同じ方向を見ていた。
そのときようやく駈けつけたニコラ博士がパックに声をかけた。
「パック、そいつはいったい何者だ?」
ようやくふりむいたパックは目を見開いた。
そこにいるのはヘロヘロだった。
が、それはいままでのヘロヘロではなかった。
ずんぐりとした身体つきはそのままだったが、その表情が違っていた。
細い目が妖しく光り、口にはにゅっと牙が生えている。
そして頭の角が太く、そして長くなっていた。
いまでは二十センチほどの長さにのび、太さも五、六センチはありそうだ。
ぐふぐふぐふ……と、ヘロヘロは口の中でこもった笑い声をたてた。
「ヘロヘロ……お前……」
パックが声をかけるとヘロヘロはぎろりと目玉を動かした。
「パックか……駆けつけるのが遅かったじゃないか……もしかして、ここに来るのは厭だったんじゃないのか?」
「なに言ってるんだ?」
パックの胸はずきりと痛んだ。
ヘロヘロのことは考えたくもなかった。だからギャンがあんな目つきで見ていたのに関わらず、教室を飛び出してしまったのだ。こうなることは判っていたのに……。
はあはあはあ……とヘロヘロは低い声で笑った。
パックはぞっとなった。
魔王が復活した!
その表情を覗き込んだヘロヘロは鷹揚にうなずいた。
「さよう、わしこそが魔王そのものである!」
そう言うとギャンを見る。
視線を向けられたギャンは、へたへたと腰を抜かしていた。
「ギャン、とかいったな。礼を言うよ。お前のおかげで、本来のわしに戻れたからな。この角……」
こつこつと指をあげ、角にふれた。その指には太く、鋭い爪が生えていた。
「これにお前の悪意、嫉妬、妄念がびんびんと響いてきた。お前の悪意は底なしだ。お前の暗い欲望にわしは目覚めたのだ……」
わはははは……!
ヘロヘロの哄笑は、まるで物理的な力を持つかのようにあたりを圧倒する。ダルトは恐怖のあまりくらくらと目をまわしていた。
「ヘロヘロちゃん……」
目に涙をため、ミリィはつぶやいた。彼女を羽交い絞めにしていたツーランは、すでに雲を霞と逃げ去っていた。
ほほ、とヘロヘロは軽く笑った。
「ミリィ、お前はわしに善良さを教えてやろうと思っていたようだが、それはいまはかなわぬことだ。が、お前がわしに寄せてくれた好意に免じ、お前だけは助けることにしよう。さて、魔王の復活の手はじめとして、このロロ村を地獄の業火に陥としてやろう」
ヘロヘロはさっと両手を天にのばした。
0
あなたにおすすめの小説
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
婚約破棄された公爵令嬢は数理魔法の天才
希羽
ファンタジー
この世界では、魔法は神への祈りとされる神聖な詠唱によって発動する。しかし、数学者だった前世の記憶を持つ公爵令嬢のリディアは、魔法の本質が「数式による世界の法則への干渉」であることを見抜いてしまう。
彼女が編み出した、微分積分や幾何学を応用した「数理魔法」は、従来の魔法を遥かに凌駕する威力と効率を誇った。しかし、その革新的な理論は神への冒涜とされ、彼女を妬む宮廷魔術師と婚約者の王子によって「異端の悪女」の烙印を押され、婚約破棄と国外追放を宣告される。
追放されたリディアは、魔物が蔓延る未開の地へ。しかし、そこは彼女にとって理想の研究場所だった。放物線を描く最適な角度で岩を射出する攻撃魔法、最小の魔力で最大範囲をカバーする結界術など、前世の数学・物理知識を駆使して、あっという間に安全な拠点と豊かな生活を確立する。
そんな中、彼女の「数理魔法」に唯一興味を示した、一人の傭兵が現れる。感覚で魔法を操る天才だった彼は、リディアの理論に触れることで、自身の能力を飛躍的に開花させていく。
やがて、リディアを追放した王国が、前例のない規模の魔物の大群に襲われる。神聖な祈りの魔法では全く歯が立たず、国が滅亡の危機に瀕した時、彼らが頼れるのは追放したはずの「異端の魔女」ただ一人だった。
魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで
ひーにゃん
ファンタジー
誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。
運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……
与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。
だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。
これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。
冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。
よろしくお願いします。
この作品は小説家になろう様にも掲載しています。
一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?
大好き丸
ファンタジー
天上魔界「イイルクオン」
世界は大きく分けて二つの勢力が存在する。
”人類”と”魔族”
生存圏を争って日夜争いを続けている。
しかしそんな中、戦争に背を向け、ただひたすらに宝を追い求める男がいた。
トレジャーハンターその名はラルフ。
夢とロマンを求め、日夜、洞窟や遺跡に潜る。
そこで出会った未知との遭遇はラルフの人生の大きな転換期となり世界が動く
欺瞞、裏切り、秩序の崩壊、
世界の均衡が崩れた時、終焉を迎える。
迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜
青空ばらみ
ファンタジー
一歳で両親を亡くし母方の伯父マークがいる辺境伯領に連れて来られたパール。 伯父と一緒に暮らすお許しを辺境伯様に乞うため訪れていた辺境伯邸で、たまたま出くわした侯爵令嬢の無知な善意により 六歳で見習い冒険者になることが決定してしまった! 運良く? 『前世の記憶』を思い出し『スマッホ』のチェリーちゃんにも協力してもらいながら 立派な冒険者になるために 前世使えなかった魔法も喜んで覚え、なんだか百年に一人現れるかどうかの伝説の国に迷いこんだ『迷い人』にもなってしまって、その恩恵を受けようとする『当たり人』と呼ばれる人たちに貢がれたり…… ぜんぜん理想の田舎でまったりスローライフは送れないけど、しょうがないから伝説の国の魔道具を駆使して 気ままに快適冒険者を目指しながら 周りのみんなを無自覚でハッピーライフに巻き込んで? 楽しく生きていこうかな! ゆる〜いスローペースのご都合ファンタジーです。
小説家になろう様でも投稿をしております。
竜皇女と呼ばれた娘
Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた
ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる
その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ
国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる