蒸汽帝国~真鍮の乙女~

万卜人

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エルフの館

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 ヘロヘロはあたりの気配をさぐった。
 そう、あちらの方向、森がもっとも深い方向からなにかの気配が漂ってくる。
 ふらふらとヘロヘロは歩き出した。
 その後ろからミリィが連れ立って歩いていく。
 歩きながらヘロヘロは自問自答していた。
 なにがおきた?
 確かにミリィにはかれが催眠術をかけたはずだ。
 もっとも簡単な魔法である。この魔法で、ミリィはヘロヘロの思うがままのはずであった。
 それがいまではがらりと性格が変わり、ヘロヘロに命令している。不思議なことに彼女に命令されたヘロヘロは逆らう気力をすっかり奪われていた。
 魔法。
 魔法……。
 魔法が……。
 そうだ!
 ヘロヘロは凝然となった。
 これには魔法が関わっている。そうに違いない。
 最初はロロ村を滅ぼそうとしたとき……ヘロヘロの狙いは狂い、たんに村に火の手をあげただけに終わった。つぎに村全体を吹き飛ばそうと試みたら、こんどはじぶんたちがどこかへ運ばれてしまった。
 そしてミリィへの意思の操作……。
 すべて失敗している。
 そうだ。
 自分の魔法の力はことごとく狂っているのだ。
 思いがけない結果しか生み出さない魔力に、ヘロヘロ自身が振り回されているのだ。
 千年の眠り。
 そう、長い年月あの封魔の剣に封じ込められていたことがヘロヘロの魔法を狂わせているのだろう。
 となると、魔力がふたたび正常にふるえるようになるまで世界を征服することはおろか、うっかり巨大な魔力を使うことすら出来ないことになる。
 なんとかしなくては。
 このままでは真の魔王など名乗れない。
 とぼとぼとヘロヘロは自分の感覚に導かれ歩いていった。魔力は意のままにならないが、感覚はまだ研ぎ澄まされているようだ。
 あ!
 それじゃなぜ、空を飛ぶことができた?
 空を飛ぶのも魔法の力だ。それなのに、飛ぶことはまるで普通に出来た。
 判らん……。
 背後でミリィが息を呑んだ。
 ふっ、と顔をあげたヘロヘロも息を呑んだ。
 そこにあったのは巨大な館であった。
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