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伯爵
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夕日が丘の向こうに沈み、夜になるとディナーとなった。
伯爵は三人を別の部屋へ案内し、またもやあの召し使いたちがどこからか出現し、夕食を用意する。
出された夕食にミリィとケイは喚声をあげた。
「エルフはわたしの記憶が確かなら、菜食主義のはずですな。あなたにも食べられるよう、工夫しました。お気に召しましたら嬉しいのですが」
伯爵の言葉に、ケイは感激している様子だった。
その言葉どおり、出された料理はすべて野菜か、根菜類を調理したもので、肉料理はひとつもなかった。
むろんミリィとしてもロロ村で肉料理を口にすることはそうなかったが、それでも季節の変わり目の祭りの前日には家畜をつぶしてその肉を口にすることがある。ちょっとは期待していたのも事実だ。
ミリィの隣りで、ヘロヘロはエルフの携帯食料を食べていた。
「どうしてそれしか食べないの?」
そう尋ねると、ヘロヘロはもぐもぐと口を動かしながら首を振った。
「おれはこれでいい。お前ら、その料理がいいなら勝手に食べたら良いだろう」
夕食はおもに伯爵がミリィに質問をすることで過ぎた。
「わたしはあの絵の中でこの世の災厄が過ぎ去るのを待っておりました。そうです! 魔法の枯渇です。ご推察の通り、わたしもまた魔法のちからを生きる糧としているのです。ようやく災厄が過ぎ去り、こうしてお客さまを迎えることができ、嬉しい限りです。わたしが絵の中で過ごしていた間、世の中は変わったでしょうな?」
ほほう、蒸気機関というものが出来たのですか? それに電気。なるほど──伯爵は千年間の世の中の変化に好奇心を抱いているようだった。
夕食の間、伯爵は談話の名手として座をもりあげた。
伯爵の冗談の大半は時代遅れで、ミリィは半分くらいしか理解できなかったが、それでも楽しいときをすごした。一方、ケイは伯爵のジョークがひどく受けたようで、けらけらと大口を開けて笑っている。
やがて夕食が終わり、おのおのにワインが振舞われた。ミリィのグラスには半分ほどそそがれ、水を足して薄められたものが供せられた。ケイはぐいぐいとお替りをして、目がとろんとなり、伯爵を見る視線はひどく色っぽいものになった。ミリィは用心深く、出されたワインをすすっていた。
ヘロヘロはあいかわらず一滴も口にしない。
伯爵は三人を別の部屋へ案内し、またもやあの召し使いたちがどこからか出現し、夕食を用意する。
出された夕食にミリィとケイは喚声をあげた。
「エルフはわたしの記憶が確かなら、菜食主義のはずですな。あなたにも食べられるよう、工夫しました。お気に召しましたら嬉しいのですが」
伯爵の言葉に、ケイは感激している様子だった。
その言葉どおり、出された料理はすべて野菜か、根菜類を調理したもので、肉料理はひとつもなかった。
むろんミリィとしてもロロ村で肉料理を口にすることはそうなかったが、それでも季節の変わり目の祭りの前日には家畜をつぶしてその肉を口にすることがある。ちょっとは期待していたのも事実だ。
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「どうしてそれしか食べないの?」
そう尋ねると、ヘロヘロはもぐもぐと口を動かしながら首を振った。
「おれはこれでいい。お前ら、その料理がいいなら勝手に食べたら良いだろう」
夕食はおもに伯爵がミリィに質問をすることで過ぎた。
「わたしはあの絵の中でこの世の災厄が過ぎ去るのを待っておりました。そうです! 魔法の枯渇です。ご推察の通り、わたしもまた魔法のちからを生きる糧としているのです。ようやく災厄が過ぎ去り、こうしてお客さまを迎えることができ、嬉しい限りです。わたしが絵の中で過ごしていた間、世の中は変わったでしょうな?」
ほほう、蒸気機関というものが出来たのですか? それに電気。なるほど──伯爵は千年間の世の中の変化に好奇心を抱いているようだった。
夕食の間、伯爵は談話の名手として座をもりあげた。
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やがて夕食が終わり、おのおのにワインが振舞われた。ミリィのグラスには半分ほどそそがれ、水を足して薄められたものが供せられた。ケイはぐいぐいとお替りをして、目がとろんとなり、伯爵を見る視線はひどく色っぽいものになった。ミリィは用心深く、出されたワインをすすっていた。
ヘロヘロはあいかわらず一滴も口にしない。
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