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プリンセスの逃走
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とんとんというひそやかなノックの音に、ネリーはそれまで読んでいた本から顔をあげた。
ふたたびノックの音。
ネリーは立ち上がり、ドアの覗き穴の蓋をあげた。
ブルーの瞳と目が合い、ネリーの目は驚きにおおきくなった。
ドアが開かれると、サンディが飛び込んでくる。
「サンディさま……」
ネリーがつぶやくと、サンディはしっ、しっと指を唇にあてる。
「大きな声をださないで!」
ネリーはサンディの姿を素早く見てとった。
すこし哀しげな表情になる。
「王宮の外にいらっしゃるのですね……」
その言葉に、サンディはちょっとばつの悪そうな顔つきをした。
「まあね、今日決心したの。あたし、なんとしても王宮の外へ出るってね」
「そうですか。ご無事をお祈りしています」
「ね、ネリー。あんたも一緒に来ない?」
「わたくしが?」
ネリーはびっくりした。
「そうよ。あたしが王宮を逃げ出したら、あんた叱られるに違いないわ。今日だってあたしのせいで、鞭の罰を受けたんだもの。ね、一緒に行こうよ!」
その言葉に、ネリーはゆっくりと首をふった。
「行けません……どうぞおひとりで行って下さいませ。あたしは残ります」
「どうしてよ? あんた罰を受けるかもしれないのよ」
「それでもいいのです。どうかサンディさま、おひとりで。そのほうがあたしなど足手まといになりますから」
そう言うとネリーはにっこりと笑った。
サンディの肩がこころもち下がった。
「判ったわ。それじゃ、あたしだけで王宮を出ることにする。なにか聞かれたら、あんたはなにも見なかったし、聞かなかったことにするのよ!」
はい、とうなずくネリーに、サンディは彼女の肩をぎゅっと抱きしめた。
「あんたを残すのは辛いわ……。いつか戻ったら、外のこといっぱい話してあげるからね!」
ちゅっと頬に素早くキスをすると、サンディは風のようにネリーの部屋から出て行った。
それを見送るネリーの顔に、ある決意が浮かんでいた。
彼女は部屋を出ると、急ぎ足になって階段を上り、サンディの部屋へと移動した。ドアは思ったとおり開いている。
サンディがそれまで身につけていた服が脱ぎ散らかされている。それを拾って、ネリーは自分の服と交換した。帽子をかぶると髪の毛が完全に隠され、背中からならサンディと見分けはつかない。
そしてネリーはサンディのベッドに潜り込むと、布団を頭からかぶった。
こうしてサンディができるだけ遠くにいけるよう、じぶんが身代わりになるつもりなのである。
ふたたびノックの音。
ネリーは立ち上がり、ドアの覗き穴の蓋をあげた。
ブルーの瞳と目が合い、ネリーの目は驚きにおおきくなった。
ドアが開かれると、サンディが飛び込んでくる。
「サンディさま……」
ネリーがつぶやくと、サンディはしっ、しっと指を唇にあてる。
「大きな声をださないで!」
ネリーはサンディの姿を素早く見てとった。
すこし哀しげな表情になる。
「王宮の外にいらっしゃるのですね……」
その言葉に、サンディはちょっとばつの悪そうな顔つきをした。
「まあね、今日決心したの。あたし、なんとしても王宮の外へ出るってね」
「そうですか。ご無事をお祈りしています」
「ね、ネリー。あんたも一緒に来ない?」
「わたくしが?」
ネリーはびっくりした。
「そうよ。あたしが王宮を逃げ出したら、あんた叱られるに違いないわ。今日だってあたしのせいで、鞭の罰を受けたんだもの。ね、一緒に行こうよ!」
その言葉に、ネリーはゆっくりと首をふった。
「行けません……どうぞおひとりで行って下さいませ。あたしは残ります」
「どうしてよ? あんた罰を受けるかもしれないのよ」
「それでもいいのです。どうかサンディさま、おひとりで。そのほうがあたしなど足手まといになりますから」
そう言うとネリーはにっこりと笑った。
サンディの肩がこころもち下がった。
「判ったわ。それじゃ、あたしだけで王宮を出ることにする。なにか聞かれたら、あんたはなにも見なかったし、聞かなかったことにするのよ!」
はい、とうなずくネリーに、サンディは彼女の肩をぎゅっと抱きしめた。
「あんたを残すのは辛いわ……。いつか戻ったら、外のこといっぱい話してあげるからね!」
ちゅっと頬に素早くキスをすると、サンディは風のようにネリーの部屋から出て行った。
それを見送るネリーの顔に、ある決意が浮かんでいた。
彼女は部屋を出ると、急ぎ足になって階段を上り、サンディの部屋へと移動した。ドアは思ったとおり開いている。
サンディがそれまで身につけていた服が脱ぎ散らかされている。それを拾って、ネリーは自分の服と交換した。帽子をかぶると髪の毛が完全に隠され、背中からならサンディと見分けはつかない。
そしてネリーはサンディのベッドに潜り込むと、布団を頭からかぶった。
こうしてサンディができるだけ遠くにいけるよう、じぶんが身代わりになるつもりなのである。
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