蒸汽帝国~真鍮の乙女~

万卜人

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テスラ博士

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 ニコラ博士は怒りに震えていた。
「テスラ! お前、なんということを考えているのだ!」
 弟は兄をきっと睨んだ。
「なにが悪い? わしはコラル帝国の忠実な臣民じゃ! 帝国の発展のため、より強力な軍事力を研究するのが、わしの役目だと思っておる!」
 しばらく両手を握り締め、怒りに震えていたニコラ博士だったが、やがてがくりと肩を落とした。
「そうか……お前はすっかり変わってしまったな。いいだろう、勝手に鉄人兵団でも、空飛ぶ兵器でも作れば良い。そのうち、じぶんの間違いに気づく日が来るに違いない」
「兄さん……」
 テスラ博士は口ごもった。
「さよなら。わしはロロ村へ帰るよ。ここにはわしの居場所はない」
「そうか……」
 ふたりはしばし見詰め合った。
 
 パックはムカデに乗り込み、エンジンを始動させた。
 サンディ、マリア、ニコラ博士がつづく。
 あの中尉が、パックを見上げ声をかけた。
「すまんな。反逆者でないことはよく判った。しかし、そのムカデは目立ちすぎるぞ。これをお前にやろう」
 そう言って、パックに一枚のシートを手渡す。
 帝国の紋章が描かれている。
「その紋章をムカデに貼りなさい。それがあれば、無用な疑いはかけられずにすむぞ」
 パックはニコラ博士を見た。
 博士はうなずいた。
「いいよ。貼りなさい。わたしはかまわないから」
「ありがとう」
 パックが中尉に礼を言うと、かれはにやりと笑った。意外と人のよさそうな笑顔だった。たぶん、それがかれの本来の性格なのだろう。
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