157 / 279
ギャンの野望
2
しおりを挟む
翌日、終点のボーラン市の駅ホームには、トーラの両親が待ち受けていた。
ギャンにとっては祖父母にあたる。
「お帰り」
最初に声をかけたのは祖母のミトである。
ほっそりとした、背の高い老婦人で、厳しい灰色の目をして背をまっすぐのばしている。髪の毛はすでに真っ白になっていたが、それをきちんととかしつけている。どことなく、母親のトーラにおもざしが似ていた。
「お前がギャンか。こんな小さなとき、わしの膝に乗っけてやったきりだったなあ」
人のよさそうな笑みを浮かべているのは、祖父のゴルドであった。祖母のミトとは違い、背が低く、恰幅の良い老人であった。ちいさな鼻眼鏡をちょこんとかけ、髪の毛はほとんど抜けていた。
祖父母の背後には使用人が数人、ひかえている。かれらはすぐさま、トーラとギャンの手荷物を受け取り、待たせていた蒸気車に積み込んだ。
「さあさあ、立ち話もなんだし、はやく家へ帰ろう」
ゴルドはトーラとギャンを抱きかかえんばかりにして蒸気車に乗り込ませた。車には向かい合わせの座席があり、ギャンは二人の祖父母に見守られる形になって座った。
しゅっ、しゅっと蒸気を噴き出し、一行が乗り込んだ蒸気車は走り出した。
ギャンははじめて見るボーラン市の景色に圧倒される思いだったが、それを必死に押し隠していた。しいて無表情を装っていたが、実際は大声で叫びだしたい気分だった。
これが都会か!
これが帝国の首都か!
すげえ! なんて人があふれているんだ!
それに建物があんなに……。
ギャンの目は、駅前の商店街や、巨大な劇場、ときおり見かける帝国の威信を高めるためのさまざまな彫像に惹き付けられていた。彫像はボーラン市で高名な文学者、科学者、軍人などの英雄像である。それらの事跡はギャンは一切、知らなかったが、彫像の目は厳しくギャンを監視しているようだった。
首都は富と栄光をこれ見よがしに見せ付けている。
ロロ村とはえらい違いだ……。
空を見上げるギャンの目がおおきく見開かれる。
「あれは?」
指さすギャンの方向を見上げた祖父は答えた。
「ああ、あれは飛行船だ」
「飛行船?」
「なんでも空気より軽い気体を詰め込んだ船体で飛ぶんだそうだ。一度に百人の乗客を運べるということだ」
ギャンはじっと首都の上空をゆったりと飛ぶ、葉巻型の飛行物体を見送っていた。
葉巻型の機体は銀色の塗装がなされており、陽射しをまぶしく反射している。
祖父を見て尋ねる。
「ねえお祖父ちゃん、ぼくもあれに乗れるかい?」
ほっほ、とゴルドは笑った。
「なんだ、ギャンはあれに乗りたいのか?」
ギャンはなぜか真っ赤になった。好奇心をむきだしにしたことが悔やまれた。
ここにはおれの知らないことがいくらでもありそうだ。
このボーラン市にギャンは住むことになるのである。
すべてを体験してやろう!
ギャンはわくわくしていた。
ギャンにとっては祖父母にあたる。
「お帰り」
最初に声をかけたのは祖母のミトである。
ほっそりとした、背の高い老婦人で、厳しい灰色の目をして背をまっすぐのばしている。髪の毛はすでに真っ白になっていたが、それをきちんととかしつけている。どことなく、母親のトーラにおもざしが似ていた。
「お前がギャンか。こんな小さなとき、わしの膝に乗っけてやったきりだったなあ」
人のよさそうな笑みを浮かべているのは、祖父のゴルドであった。祖母のミトとは違い、背が低く、恰幅の良い老人であった。ちいさな鼻眼鏡をちょこんとかけ、髪の毛はほとんど抜けていた。
祖父母の背後には使用人が数人、ひかえている。かれらはすぐさま、トーラとギャンの手荷物を受け取り、待たせていた蒸気車に積み込んだ。
「さあさあ、立ち話もなんだし、はやく家へ帰ろう」
ゴルドはトーラとギャンを抱きかかえんばかりにして蒸気車に乗り込ませた。車には向かい合わせの座席があり、ギャンは二人の祖父母に見守られる形になって座った。
しゅっ、しゅっと蒸気を噴き出し、一行が乗り込んだ蒸気車は走り出した。
ギャンははじめて見るボーラン市の景色に圧倒される思いだったが、それを必死に押し隠していた。しいて無表情を装っていたが、実際は大声で叫びだしたい気分だった。
これが都会か!
これが帝国の首都か!
すげえ! なんて人があふれているんだ!
それに建物があんなに……。
ギャンの目は、駅前の商店街や、巨大な劇場、ときおり見かける帝国の威信を高めるためのさまざまな彫像に惹き付けられていた。彫像はボーラン市で高名な文学者、科学者、軍人などの英雄像である。それらの事跡はギャンは一切、知らなかったが、彫像の目は厳しくギャンを監視しているようだった。
首都は富と栄光をこれ見よがしに見せ付けている。
ロロ村とはえらい違いだ……。
空を見上げるギャンの目がおおきく見開かれる。
「あれは?」
指さすギャンの方向を見上げた祖父は答えた。
「ああ、あれは飛行船だ」
「飛行船?」
「なんでも空気より軽い気体を詰め込んだ船体で飛ぶんだそうだ。一度に百人の乗客を運べるということだ」
ギャンはじっと首都の上空をゆったりと飛ぶ、葉巻型の飛行物体を見送っていた。
葉巻型の機体は銀色の塗装がなされており、陽射しをまぶしく反射している。
祖父を見て尋ねる。
「ねえお祖父ちゃん、ぼくもあれに乗れるかい?」
ほっほ、とゴルドは笑った。
「なんだ、ギャンはあれに乗りたいのか?」
ギャンはなぜか真っ赤になった。好奇心をむきだしにしたことが悔やまれた。
ここにはおれの知らないことがいくらでもありそうだ。
このボーラン市にギャンは住むことになるのである。
すべてを体験してやろう!
ギャンはわくわくしていた。
0
あなたにおすすめの小説
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました
婚約破棄された公爵令嬢は数理魔法の天才
希羽
ファンタジー
この世界では、魔法は神への祈りとされる神聖な詠唱によって発動する。しかし、数学者だった前世の記憶を持つ公爵令嬢のリディアは、魔法の本質が「数式による世界の法則への干渉」であることを見抜いてしまう。
彼女が編み出した、微分積分や幾何学を応用した「数理魔法」は、従来の魔法を遥かに凌駕する威力と効率を誇った。しかし、その革新的な理論は神への冒涜とされ、彼女を妬む宮廷魔術師と婚約者の王子によって「異端の悪女」の烙印を押され、婚約破棄と国外追放を宣告される。
追放されたリディアは、魔物が蔓延る未開の地へ。しかし、そこは彼女にとって理想の研究場所だった。放物線を描く最適な角度で岩を射出する攻撃魔法、最小の魔力で最大範囲をカバーする結界術など、前世の数学・物理知識を駆使して、あっという間に安全な拠点と豊かな生活を確立する。
そんな中、彼女の「数理魔法」に唯一興味を示した、一人の傭兵が現れる。感覚で魔法を操る天才だった彼は、リディアの理論に触れることで、自身の能力を飛躍的に開花させていく。
やがて、リディアを追放した王国が、前例のない規模の魔物の大群に襲われる。神聖な祈りの魔法では全く歯が立たず、国が滅亡の危機に瀕した時、彼らが頼れるのは追放したはずの「異端の魔女」ただ一人だった。
病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで
ひーにゃん
ファンタジー
誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。
運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……
与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。
だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。
これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。
冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。
よろしくお願いします。
この作品は小説家になろう様にも掲載しています。
一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?
大好き丸
ファンタジー
天上魔界「イイルクオン」
世界は大きく分けて二つの勢力が存在する。
”人類”と”魔族”
生存圏を争って日夜争いを続けている。
しかしそんな中、戦争に背を向け、ただひたすらに宝を追い求める男がいた。
トレジャーハンターその名はラルフ。
夢とロマンを求め、日夜、洞窟や遺跡に潜る。
そこで出会った未知との遭遇はラルフの人生の大きな転換期となり世界が動く
欺瞞、裏切り、秩序の崩壊、
世界の均衡が崩れた時、終焉を迎える。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる