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エイダ
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無数のパイプ、さまざまな金属のシリンダー。それらが組み合わさって、全体として女の首のような形になっている。壁の機械にニコラ博士は近々と目を寄せ、眉をひそめた。
「なにやらちいさなリングがいくつも見えるな。これは?」
「それが人工知能の最小部分です。これがいくつも接続され、人間の脳のイミテーションを形作っているのです」
「これは、どう働くものだね?」
「人間の脳は……」
バベジ教授は自分の頭を指さした。
「いくつもの脳細胞によって考え、感じます。わたしは脳細胞を研究して、それを機械に置き換えることができると気づきました。それがわたしの研究成果なのです。そのリングはおのおの極小の磁石として働き、それにまきつけた電線に電流がながれ、蒸気が送り込まれると磁束の向きがかわり、スイッチとして動きます。オン・オフふたつのスイッチになり、それが二進法で数値が変化するのです。わたしはこの素子に〝パラメトロン〟という名前をつけました」
バベジ教授の説明を判りやすく言うと、コンピューターのことである。これは蒸気で動くコンピューターなのだ。
ニコラ博士は愕然となった。
「すごい発明じゃないか! なぜ弟はあんたの研究を無視したのかね?」
バベジは肩をすくめた。
「論文を提出したときはわたしはまだ正式に教授に就任していませんでした。テスラ博士は、無名のわたしの論文が、形式上大学の認証を受けていないことで、正式のものではないと言いました。その後わたしは教授職につきましたが、帝国の資金援助を受けることなく私費でこの装置を作り上げたのです」
「なんということじゃ! このような素晴らしい成果を無視するとは。あやつらしいわ!」
ニコラ博士は憤然となった。
パックはいらいらしてきた。
「で、それが手がかりとは何の……?」
思わず口を挟む。
バベジは笑った。
「いま説明しようとしていたところさ。それではこの装置に電源をいれよう」
つかつかと壁のスイッチに近づくと、いくつかのスイッチに触れる。
ぶうーん、と変圧器が唸り、ボイラーから蒸気が送り込まれ、壁の装置に一斉に通電して無数のランプが輝く。
ざざざざ……。
まるで森の木々に風がふいて、葉がゆれるときのようなざわめきが聞こえてくる。
見ると壁のリングが細かく振動し、それが動くときの音が葉を擦らすような音をたてているのだ。
ぶしゅーっ、とため息のような音をたて、部屋の真ん中の女の首のような形の装置が動き出した。
その瞼がゆっくりと持ち上がっていく。
瞼の下からは、ふたつの瞳がのぞいていた。
その瞳はしばらくゆっくりと部屋中を見回していたが、やがて立ちすくむパックらに焦点があった。女の口が開き、言葉を押し出した。
「バベジ……」
教授はうなずき、口を開いた。
「エイダ。あの新聞の広告をだしたかたがただ。話をしてやってくれ」
驚きに、ニコラ博士は口をぱくぱくと動かしていた。
「なにやらちいさなリングがいくつも見えるな。これは?」
「それが人工知能の最小部分です。これがいくつも接続され、人間の脳のイミテーションを形作っているのです」
「これは、どう働くものだね?」
「人間の脳は……」
バベジ教授は自分の頭を指さした。
「いくつもの脳細胞によって考え、感じます。わたしは脳細胞を研究して、それを機械に置き換えることができると気づきました。それがわたしの研究成果なのです。そのリングはおのおの極小の磁石として働き、それにまきつけた電線に電流がながれ、蒸気が送り込まれると磁束の向きがかわり、スイッチとして動きます。オン・オフふたつのスイッチになり、それが二進法で数値が変化するのです。わたしはこの素子に〝パラメトロン〟という名前をつけました」
バベジ教授の説明を判りやすく言うと、コンピューターのことである。これは蒸気で動くコンピューターなのだ。
ニコラ博士は愕然となった。
「すごい発明じゃないか! なぜ弟はあんたの研究を無視したのかね?」
バベジは肩をすくめた。
「論文を提出したときはわたしはまだ正式に教授に就任していませんでした。テスラ博士は、無名のわたしの論文が、形式上大学の認証を受けていないことで、正式のものではないと言いました。その後わたしは教授職につきましたが、帝国の資金援助を受けることなく私費でこの装置を作り上げたのです」
「なんということじゃ! このような素晴らしい成果を無視するとは。あやつらしいわ!」
ニコラ博士は憤然となった。
パックはいらいらしてきた。
「で、それが手がかりとは何の……?」
思わず口を挟む。
バベジは笑った。
「いま説明しようとしていたところさ。それではこの装置に電源をいれよう」
つかつかと壁のスイッチに近づくと、いくつかのスイッチに触れる。
ぶうーん、と変圧器が唸り、ボイラーから蒸気が送り込まれ、壁の装置に一斉に通電して無数のランプが輝く。
ざざざざ……。
まるで森の木々に風がふいて、葉がゆれるときのようなざわめきが聞こえてくる。
見ると壁のリングが細かく振動し、それが動くときの音が葉を擦らすような音をたてているのだ。
ぶしゅーっ、とため息のような音をたて、部屋の真ん中の女の首のような形の装置が動き出した。
その瞼がゆっくりと持ち上がっていく。
瞼の下からは、ふたつの瞳がのぞいていた。
その瞳はしばらくゆっくりと部屋中を見回していたが、やがて立ちすくむパックらに焦点があった。女の口が開き、言葉を押し出した。
「バベジ……」
教授はうなずき、口を開いた。
「エイダ。あの新聞の広告をだしたかたがただ。話をしてやってくれ」
驚きに、ニコラ博士は口をぱくぱくと動かしていた。
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