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サイデーン
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むううんん……というような、ハミングが聞こえてくる。
なんだろうと見回したミリィは、聖堂の床を、頭のてっぺんをそりあげた僧侶がうつむき加減に歩きながら口の中でなにか呪文のようなものを唸りながら歩いているのを見た。僧侶はあちらこちらにいるようで、かれらが詠唱しているそれが聖堂の内部で反響しているのだった。
僧侶はそれぞれ手に一本蝋燭を持ち、その炎のゆらめきが、聖堂の内部の彫刻や柱をうかびあがらせ、複雑な影をつくりだすのだった。
ミリィたち四人は聖堂の奥深くに連行された。
目の前に壇があり、そこには巨大な玉座がしつらえられている。玉座にはひとりの老人が傲然とかまえ、炯炯とした双眸でミリィたちをにらみつけるようにしていた。
おそろしく年寄りであった。ひからびたミイラのようなその老人には、体毛というのが一本もなく、眉毛すらなかった。これが教皇であろうが、そのわりに老人の身にまとっているのは粗末な麻のローブひとつきりなのが地位には似合わず、かえって不気味である。老人の目つきは狂人のそれであった。
ワフーはすでに床に跪き、額を床にすりつけ震えていた。
「敬愛なる教皇……敬愛なる教皇……」
おなじことを何度も口の中でくりかえしつぶやいている。
教皇の両隣には金属の甲冑を身につけた兵士が微動だにせず、立ちつくしていた。
周りを見回すと、部屋のあちこちには重装備の兵士が武器を身につけ、油断なく見張っているのが見受けられる。これが全国民に敬愛される教皇なのか、とミリィは皮肉に思った。
いけない! いつの間にかヘロヘロの考え方に影響されたみたいだ、と彼女はわれにかえった。いまはそんなことを考えているときではない。
教皇は口を開いた。
「ゴルト枢機卿、これがおぬしが捕らえたコラル帝国のスパイかね?」
はあーっ、と最敬礼をしてゴルト、と呼ばれた枢機卿が教皇の足もとに跪いた。
ということは、あの枢機卿の名前はゴルトというのか。
「わたしめがすこし下調べいたしたところ、あのもののうちミリィともうす娘の話す言葉はあきらかに帝国の発音でございます。本人はそのことについてなにも証言しておりませんが、スパイに間違いはございません。背後関係をあきらかにするため、首都サイデーンに連行いたしました」
うむ、と教皇はうなずいた。
じろり、と床に腹ばいになっているワフーを見る。
「この者は? どうやら最下級の僧侶のようじゃが、こやつがなんの関係があるのだ」
ゴルトは肩をすくめた。
「どうやら手違いがあったようです。わたしは娘ふたりと、あきらかに魔物とおもわれるひとりを連行するつもりだったのですが、神聖冒涜の罪で捕らえたこのワフーというものをおなじ牢屋に入れていたのですが、つい連れてきてしまいました。もっともこの者は今回の裁きに関連することはありませんので、無視なさって結構でしょう」
「そちの判断はただしい。ことは重大である。帝国が動いているということはあきらかである。その背後関係を調べるためにも、余じきじきに取り調べることにする」
教皇はミリィたちを眺めた。
ミリィもまた教皇の目を見返した。
そのとき、ミリィは教皇が肩で息をしているのに気づいた。
病気かしら、なんだか具合が悪そうだ。
なんだろうと見回したミリィは、聖堂の床を、頭のてっぺんをそりあげた僧侶がうつむき加減に歩きながら口の中でなにか呪文のようなものを唸りながら歩いているのを見た。僧侶はあちらこちらにいるようで、かれらが詠唱しているそれが聖堂の内部で反響しているのだった。
僧侶はそれぞれ手に一本蝋燭を持ち、その炎のゆらめきが、聖堂の内部の彫刻や柱をうかびあがらせ、複雑な影をつくりだすのだった。
ミリィたち四人は聖堂の奥深くに連行された。
目の前に壇があり、そこには巨大な玉座がしつらえられている。玉座にはひとりの老人が傲然とかまえ、炯炯とした双眸でミリィたちをにらみつけるようにしていた。
おそろしく年寄りであった。ひからびたミイラのようなその老人には、体毛というのが一本もなく、眉毛すらなかった。これが教皇であろうが、そのわりに老人の身にまとっているのは粗末な麻のローブひとつきりなのが地位には似合わず、かえって不気味である。老人の目つきは狂人のそれであった。
ワフーはすでに床に跪き、額を床にすりつけ震えていた。
「敬愛なる教皇……敬愛なる教皇……」
おなじことを何度も口の中でくりかえしつぶやいている。
教皇の両隣には金属の甲冑を身につけた兵士が微動だにせず、立ちつくしていた。
周りを見回すと、部屋のあちこちには重装備の兵士が武器を身につけ、油断なく見張っているのが見受けられる。これが全国民に敬愛される教皇なのか、とミリィは皮肉に思った。
いけない! いつの間にかヘロヘロの考え方に影響されたみたいだ、と彼女はわれにかえった。いまはそんなことを考えているときではない。
教皇は口を開いた。
「ゴルト枢機卿、これがおぬしが捕らえたコラル帝国のスパイかね?」
はあーっ、と最敬礼をしてゴルト、と呼ばれた枢機卿が教皇の足もとに跪いた。
ということは、あの枢機卿の名前はゴルトというのか。
「わたしめがすこし下調べいたしたところ、あのもののうちミリィともうす娘の話す言葉はあきらかに帝国の発音でございます。本人はそのことについてなにも証言しておりませんが、スパイに間違いはございません。背後関係をあきらかにするため、首都サイデーンに連行いたしました」
うむ、と教皇はうなずいた。
じろり、と床に腹ばいになっているワフーを見る。
「この者は? どうやら最下級の僧侶のようじゃが、こやつがなんの関係があるのだ」
ゴルトは肩をすくめた。
「どうやら手違いがあったようです。わたしは娘ふたりと、あきらかに魔物とおもわれるひとりを連行するつもりだったのですが、神聖冒涜の罪で捕らえたこのワフーというものをおなじ牢屋に入れていたのですが、つい連れてきてしまいました。もっともこの者は今回の裁きに関連することはありませんので、無視なさって結構でしょう」
「そちの判断はただしい。ことは重大である。帝国が動いているということはあきらかである。その背後関係を調べるためにも、余じきじきに取り調べることにする」
教皇はミリィたちを眺めた。
ミリィもまた教皇の目を見返した。
そのとき、ミリィは教皇が肩で息をしているのに気づいた。
病気かしら、なんだか具合が悪そうだ。
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