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世之介の旅支度
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朝食の席で、世之介は【ツッパリ・ランド】を目指すことを宣言した。
世之介の言葉に、一同ぎょっとした顔を上げ、まじまじと見つめてくる。イッパチは世之介の隣で、首を振った。
「若旦那……。【ツッパリ・ランド】ってのは、あの風祭ってえ賽博格野郎が言っていたウラバンとやらがいる場所なんでげすよ。そんなところへノコノコ自分から行くなんて、どうかしてらあ! 飛んで火に入る夏の蜻蛉ってな仕儀になりやすぜ!」
光右衛門は用心深げな口調になり、話し掛けた。
「本気なのですか、世之介さん。どうやら【ツッパリ・ランド】とは相当に危ない場所のようですぞ」
「本気です!」
世之介はキッパリと頷いた。茜を見て言葉を続けた。
「茜さんの話では【ツッパリ・ランド】に行けば、地球への連絡が叶いそうではありませんか。わたくしは、何としても地球へ帰りたい! 併せて、この番長星の現状を、地球の幕府へと訴えたいのです。このような無法が罷り通るのは、我慢できません」
「成る程……。判りました」
光右衛門は、世之介の決意に感心したように何度も頷いていた。
「わしも同じ考えですぞ。いくら銀河遺産とはいえ、この星の人間が哀れです」
光右衛門の言葉に、茜はポカンとした顔になって尋ねてくる。
「何が哀れなの? あたしたちが、どうして光右衛門さんに同情されるの?」
光右衛門は何度も首を振った。
「それ、その言葉です。あなたがたは、自分たちがどんなに酷い状態にあるか、自覚すらしておらぬ……。茜さん、あなたは学問所へ通った経験が御座いますかな?」
「学問所……」
茜はポツリと光右衛門の言葉を口の中で反芻していた。明らかに、てんで理解していない。
「昔は学校、と呼んでおりましたな。つまり、勉強をする場所です。どうです? 茜さんは、今まで何かを学びましたか?」
「勿論よ!」
茜の頬が紅潮した。
「仁義の切り方や、舐められないようなガンの飛ばし方とか、二輪車の乗り方とか……。先輩に教えてもらったわ!」
「やれやれ……」
光右衛門は嘆息した。
「やはり、そうでしたか。案じておった通りです。人間として必要な学問は、この番長星では一切、学んではいないのですな。『女大学』すら知らないのでしょう? あれは一人前の女性になる必読の書ですぞ!」
「だって、そんなの知らなくても、構わないもん!」
茜は、かなり気分を害している様子だった。腕を組み、眉を寄せて怒りの表情を浮かべている。
そんな茜を見て、世之介は光右衛門の『女大学』はともかく、番長星の人間が、もっとマトモな状態になるべきだと思っていた。少なくとも、喧嘩だけが価値の総てであるという現状は、断固として正さなければならないと感じていた。
茜もきっと判ってくれる……。世之介は茜のためにも、銀河幕府にこの星の現状を通報しなければと思っていた。
「それで、どうやって【ツッパリ・ランド】とやらへ出かけるのでしょう?」
格乃進が口を挟んだ。
茜は機嫌を直し、ニンマリと笑みを浮かべた。
「それには、乗り物が必要ね!」
「乗り物?」
世之介たちは顔を見合わせた。茜は強く頷く。
「そうよ、まさか、テクテク歩いて行くつもりなんかじゃないでしょう? あんたたちの目指す【ツッパリ・ランド】は、とーっても、遠いんだから!」
世之介の言葉に、一同ぎょっとした顔を上げ、まじまじと見つめてくる。イッパチは世之介の隣で、首を振った。
「若旦那……。【ツッパリ・ランド】ってのは、あの風祭ってえ賽博格野郎が言っていたウラバンとやらがいる場所なんでげすよ。そんなところへノコノコ自分から行くなんて、どうかしてらあ! 飛んで火に入る夏の蜻蛉ってな仕儀になりやすぜ!」
光右衛門は用心深げな口調になり、話し掛けた。
「本気なのですか、世之介さん。どうやら【ツッパリ・ランド】とは相当に危ない場所のようですぞ」
「本気です!」
世之介はキッパリと頷いた。茜を見て言葉を続けた。
「茜さんの話では【ツッパリ・ランド】に行けば、地球への連絡が叶いそうではありませんか。わたくしは、何としても地球へ帰りたい! 併せて、この番長星の現状を、地球の幕府へと訴えたいのです。このような無法が罷り通るのは、我慢できません」
「成る程……。判りました」
光右衛門は、世之介の決意に感心したように何度も頷いていた。
「わしも同じ考えですぞ。いくら銀河遺産とはいえ、この星の人間が哀れです」
光右衛門の言葉に、茜はポカンとした顔になって尋ねてくる。
「何が哀れなの? あたしたちが、どうして光右衛門さんに同情されるの?」
光右衛門は何度も首を振った。
「それ、その言葉です。あなたがたは、自分たちがどんなに酷い状態にあるか、自覚すらしておらぬ……。茜さん、あなたは学問所へ通った経験が御座いますかな?」
「学問所……」
茜はポツリと光右衛門の言葉を口の中で反芻していた。明らかに、てんで理解していない。
「昔は学校、と呼んでおりましたな。つまり、勉強をする場所です。どうです? 茜さんは、今まで何かを学びましたか?」
「勿論よ!」
茜の頬が紅潮した。
「仁義の切り方や、舐められないようなガンの飛ばし方とか、二輪車の乗り方とか……。先輩に教えてもらったわ!」
「やれやれ……」
光右衛門は嘆息した。
「やはり、そうでしたか。案じておった通りです。人間として必要な学問は、この番長星では一切、学んではいないのですな。『女大学』すら知らないのでしょう? あれは一人前の女性になる必読の書ですぞ!」
「だって、そんなの知らなくても、構わないもん!」
茜は、かなり気分を害している様子だった。腕を組み、眉を寄せて怒りの表情を浮かべている。
そんな茜を見て、世之介は光右衛門の『女大学』はともかく、番長星の人間が、もっとマトモな状態になるべきだと思っていた。少なくとも、喧嘩だけが価値の総てであるという現状は、断固として正さなければならないと感じていた。
茜もきっと判ってくれる……。世之介は茜のためにも、銀河幕府にこの星の現状を通報しなければと思っていた。
「それで、どうやって【ツッパリ・ランド】とやらへ出かけるのでしょう?」
格乃進が口を挟んだ。
茜は機嫌を直し、ニンマリと笑みを浮かべた。
「それには、乗り物が必要ね!」
「乗り物?」
世之介たちは顔を見合わせた。茜は強く頷く。
「そうよ、まさか、テクテク歩いて行くつもりなんかじゃないでしょう? あんたたちの目指す【ツッパリ・ランド】は、とーっても、遠いんだから!」
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