ウラバン!~SF好色一代男~

万卜人

文字の大きさ
83 / 106
超巨大バンチョウ・ロボ出撃!

3

しおりを挟む
「茜、おめえかあ!」
 画面の向こうの勝又勝は、最初驚きの反応を見せ、次いで思い切り顔を顰め、苦りきった表情になった。唇をへの字に曲げ、眉を寄せ、首を何度も振っている。
「何でわざわざ、やってきたんだ? その様子じゃ、【ウラバン】と一緒らしいな」
 怒鳴り声に近い。茜は気分を害した様子で、ぐいっと画面に顔を近づけた。
「何を言ってんのよ! お兄ちゃんが勝手に家を飛び出して、父ちゃんや、母ちゃんがどんなに心配しているのか、判ってんの? まったくもう……男ったら!」
 画面の中で、勝は「助けてくれ!」とばかりに天を仰ぎ、手の平をぱっと開いた。
 省吾は口早に、勝に向け話し掛ける。
「勝! 今、大変な状況になっている。風祭という男を知っているだろう?」
 勝の眉が下げられ、ちょっと考え込む表情になる。
「風祭? ああ、賽博格志願の奴だな。あんたが、あいつを賽博格に仕立てた、ってのは知っている。奴が、どうした?」
 省吾は手短に、現状を説明した。有能な大番頭らしく、少ない言葉数で、しかし的確な説明だった。聞いている勝は「ふむふむ」と相槌を打っていた。
 ところが、微小機械の爆嘯に話が及ぶと、口をポカンと開けた。
「つまり、どういうこった?」
 要するに理解できていない。焦りに、省吾の顔から汗がポタポタと滴る。
「番長星の危機なんだ! 風祭は微小機械に取り込まれ、自分の意思を失っている。だけではない! 賽博格の身体に〝伝説のガクラン〟の要素を取り込んだ結果、怖ろしい怪物に変貌している!」
「怪物?」
 勝は省吾の最後の言葉に反応した。爆嘯などの複雑な話題にはついていけないが、本能的に戦いの話題となると理解できるらしい。省吾は勢いづいた。
「そうだ! 怪物だ! あれと戦えるのは、お前だけだ!」
「戦い? 喧嘩か?」
 勝の目が、ぱっと輝く。血色が良くなり、態度も生き生きしてきた。
 世之介は口を差し挟んだ。
「おい、省吾。いったい、何を話しているんだ?」
 省吾は世之介に振り向き、口を開いた。顔付きは、以前の忠実な但馬屋の大番頭に戻っている。
「坊っちゃん。あれと戦えるのは、ここにいる勝又勝だけなのです。なぜなら……」
 省吾が言いかけた時、制御室全体がぐらぐらと揺さぶられる。微かな物音に世之介は入口を振り返る。
 なんと! 入口から、ヌラヌラした黒光りする流動体が迫ってきた! 水槽から溢れた微小機械が遂に迫って来たのだ。
「あれを見ろ!」
 世之介の叫びに、全員ギクリと身を強張らせる。茜は立ち上がり、顔色を青ざめさせた。
 画面の中から、勝が声を張り上げる。
「おい! 今のは何だ? 何が起きた!」
 省吾は悲鳴を上げた。
「あれが! ここまでやって来た! 逃げないと呑み込まれる!」
 光右衛門が鋭い声を上げる。
「他に出口は、ないのですか?」
 省吾は、おろおろ狼狽しているだけで、完全にうろが来ている状態になっていた。光右衛門は微かに顔を顰めると、助三郎と格乃進に命令する。
「助さん、格さん。あなた方の力で、何とか脱出できませぬか?」
 二人は力強く頷いた。格乃進が答える。
「やって見ましょう! おい、助さん。あんたは、ご隠居と、この大番頭を抱えてくれ。俺は、イッパチと茜さんを抱える」
 世之介の顔を見て言葉を続けた。
「悪いが、世之介さんまで面倒を見ることはできない。しかし、あんたなら、自分で何とかできるはずだな?」
「当たり前だ!」
 世之介は素早く頷いた。格乃進はニヤリと笑い返し、助三郎に命令する。
「よし、微小機械に捕まらぬよう、全力で脱出する。しかし、加速状態にはなるな! 超高速で動くと、生身の人間は衝撃で、生きていられないからな」
 助三郎は立ち上がり、答える。
「判っている。では、ご隠居、まいりますぞ!」
 助三郎が両腕に光右衛門と木村省吾を、格乃進が茜とイッパチを抱え上げた。
「では、行くぞ!」
 助三郎が宣言し、出口へ猛然と跳躍を試みる。微小機械に触れぬよう、壁を蹴り、宙に飛び上がる。格乃進も同じように、両腕に二人を抱えたまま、床を蹴った。
 加速状態に入っていないとはいえ、さすが賽博格の動きである。壁を蹴り、空中を飛翔する二人は、まるで無重力の中にいるかのようだ。忽ち二人は出口から外へ飛び出、姿を消した。
 世之介は、ぐっと全身に力を込め、目の前に迫ってくる真っ黒な微小機械に立ち向かった。
 だっと床を蹴り、飛び上がる。が、すぐに世之介は、痺れるような恐怖を味わっていた。
 力が抜けている!
 充分飛び上がることができない。世之介は床に叩き付けられるように横たわった。
 やたら身体が重い……。まるでガクランが鉛のように思えた。全身がねばねばした疲労に包まれている。
 糞っ!
 世之介は歯噛みした。体力の喪失の原因を悟ったのである。
 風祭との臆病試練チキン・ランで、力を使い果たしていたのだ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

悪役令嬢は手加減無しに復讐する

田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。 理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。 婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~

めぐみ
歴史・時代
お民は江戸は町外れ徳平店(とくべいだな)に夫源治と二人暮らし。  源治はお民より年下で、お民は再婚である。前の亭主との間には一人息子がいたが、川に落ちて夭折してしまった。その後、どれだけ望んでも、子どもは授からなかった。  長屋暮らしは慎ましいものだが、お民は夫に愛されて、女としても満ち足りた日々を過ごしている。  そんなある日、徳平店が近々、取り壊されるという話が持ちあがる。徳平店の土地をもっているのは大身旗本の石澤嘉門(いしざわかもん)だ。その嘉門、実はお民をふとしたことから見初め、お民を期間限定の側室として差し出すなら、長屋取り壊しの話も考え直しても良いという。  明らかにお民を手に入れんがための策略、しかし、お民は長屋に住む皆のことを考えて、殿様の取引に応じるのだった。 〝行くな!〟と懸命に止める夫に哀しく微笑み、〝約束の1年が過ぎたから、きっとお前さんの元に帰ってくるよ〟と残して―。

結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」 入社した会社の社長に 息子と結婚するように言われて 「ま、なぶくん……」 指示された家で出迎えてくれたのは ずっとずっと好きだった初恋相手だった。 ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ ちょっぴり照れ屋な新人保険師 鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno- × 俺様なイケメン副社長 遊佐 学 -Manabu Yusa- ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 「これからよろくね、ちとせ」 ずっと人生を諦めてたちとせにとって これは好きな人と幸せになれる 大大大チャンス到来! 「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」 この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。 「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」 自分の立場しか考えてなくて いつだってそこに愛はないんだと 覚悟して臨んだ結婚生活 「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」 「あいつと仲良くするのはやめろ」 「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」 好きじゃないって言うくせに いつだって、強引で、惑わせてくる。 「かわいい、ちとせ」 溺れる日はすぐそこかもしれない ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 俺様なイケメン副社長と そんな彼がずっとすきなウブな女の子 愛が本物になる日は……

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

最弱パーティのナイト・ガイ

フランジュ
ファンタジー
"ファンタジー × バトル × サスペンス" 数百年前、六大英雄と呼ばれる強者達の戦いによって魔王は倒された。 だが魔王の置き土産とも言うべき魔物達は今もなお生き続ける。 ガイ・ガラードと妹のメイアは行方不明になっている兄を探すため旅に出た。 そんな中、ガイはある青年と出会う。 青年の名はクロード。 それは六大英雄の一人と同じ名前だった。 魔王が倒されたはずの世界は、なぜか平和ではない。 このクロードの出会いによって"世界の真実"と"六大英雄"の秘密が明かされていく。 ある章のラストから急激に展開が一変する考察型ファンタジー。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

処理中です...