ウラバン!~SF好色一代男~

万卜人

文字の大きさ
88 / 106
世之介の変身

4

しおりを挟む
 頭上から近づく巨大な質量を感じ、世之介の意識が山肌を見上げた。
 真っ黒な雪崩のように落ちてくる微小機械の中に、風祭の変貌した巨体があった。すでに、風祭の姿は人間とは言いがたい。全身を覆う真っ黒な鎧に、憤怒の表情が固まったままの仮面。まるで怒りの化身そのものである。
 ぐわーっ、と咆哮を上げ、風祭は山肌を疾走していた。足下は大量の微小機械が津波となり、あらゆる物質を呑み込み、同時に大量の生活必需品を生産していた。
 微小機械が通りすぎた後は、無数の衣類、食糧、小物、嗜好品、装飾品などの雑多な商品が残されている。すでに生産計画など無視された、際限無しの濫費が始まっていた。
 世之介の意識は、大津波のように押し寄せる微小機械に向けられていた。微小機械は、ありとあらゆるものを貪り、生産するという、圧倒的な欲求に駆られている。
 世之介は何とか、微小機械の爆嘯を抑えるべく、意志の力による説得を開始した。
 ──やめろっ! このままでは、番長星がお前たちに総て呑み込まれてしまう。それはお前たちの目的なのか?
 微小機械は一斉に、世之介の語り掛けに応える。
 ──呑み込め! 取り込め! 急げ、急げ! 間に合わない! 産み出せ、作り出せ、俺たちは最高の工場だ!
 微小機械の意思は、目的地のない無自覚なものだった。世之介は必死になって、微小機械を制御しようと、意志の力を振り絞る。
 世之介は気付いた。微小機械の暴走を推し進めているのは、風祭の意志の力であることを。風祭の自己肥大した、強さへの憧れが、微小機械の暴走を後押ししているのだ。
 世之介は風祭に近づく、もう一つの存在を感知していた。
【バンチョウ・ロボ】であった!
 のしのしと歩く巨大な番長の姿をした【バンチョウ・ロボ】は、風祭の前方に立ち塞がり、待ち受ける。
 ぐっと腰を低く構え、緊張をほぐすためか、こきこきと音を鳴らして首の辺りを、しきりと廻している。ひどく人間臭い仕草であった。
 風祭もまた【バンチョウ・ロボ】に気付いた様子だった。疾走をやめ、慎重に相手を窺う仕草を見せる。
 世之介の意識が、【バンチョウ・ロボ】の操縦席に入り込む。操縦席では、勝又勝がこれからの戦いの予感に興奮し、ごつい顔に滴るような笑顔を見せていた。
「面白え……面白え……! こいつを【ウラバン】から預かったときには、こんな面白え戦いができるとは思ってなかったが、こりゃ、堪えられねえぜ!」
 風祭は猫が獲物を狙うように、静かに待ち受ける。すすす、と巨体が、音もなく地面を踏み、あっという間に接近してくる!
 操縦席の勝の表情に緊張が走った。ぐっと全身に力を込め、風祭と【バンチョウ・ロボ】の激突に身構えた。
 ぐわしゃーんっ! と、派手な音を立て、二体が猛烈な勢いで激突を繰り広げた。衝撃で、ばらばらと風祭の全身から、微小機械が細かな破片となって転げ落ちる。
 ぐわああーっ、と【バンチョウ・ロボ】は喉の奥から絶叫し、片腕を振り上げ、ぐっと握り拳を作って風祭の顔面に叩き込んだ。
 がきーん、と鉄板を殴りつけるような音がして、風祭の顔が横を向く。風祭は一瞬、くらくらとなったようだった。
 だが、即座に立ち直り、瞬時に反撃を開始した。風祭もまた、握り拳を固め、【バンチョウ・ロボ】に殴りかかる。が、風祭のほうは両方の拳を猛烈に回転させ、連続して叩き込んだ!
 まるでマシン・ガンの連射を浴びたように、【バンチョウ・ロボ】は、ぐらぐらと上体を泳がせ、後方に吹っ飛んだ。
 吹っ飛んだ先は、【ツッパリ・ランド】の校舎の建物であった。
【バンチョウ・ロボ】の巨体がめり込み、建物の壁に放射状に罅が入り、窓ガラスが四散して、建物の中から悲鳴が上がった。
 世之介は意識を分散させ、避難していた助三郎たちに集中させた。立体映像を投影し、自分の姿を出現させる。
「助三郎! 格乃進! あの怪物は、風祭なんだ! 風祭をなんとかしないと、微小機械の暴走は止められない!」
 世之介の呼びかけに、二人の賽博格は仰天した。
「世之介さん……。どういうことだ? 説明してくれ!」
 助三郎の言葉に、世之介は強くかぶりを振った。
「今ここで説明している暇はない! ともかく、二人の加勢がいる!」
 光右衛門が二人に命令した。
「二人とも躊躇している暇はありませんぞ! ともかく、世之介さんに従うのです!」
「はっ!」と短く答え、二人は一瞬のうちに加速状態に入っていた。そのまま超高速で、戦う二体の怪物に向かっていく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...