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銀河の副将軍
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驚きに世之介は仰け反った。ふらっ、と自分の立体映像が揺らぐのを自覚する。
「ど、どうして、そんな結論になるんだ? 俺は金輪際、そんな馬鹿な考えを持ったことはないぞ!」
光右衛門は静かに首を振る。
「微小機械と接続しているのは、世之介さんしかおりません。微小機械に影響を及ぼすことが可能なのは世之介さん、一人だけ……。結論は、ハッキリしております!」
ぐっと腕を挙げ、指さす。
「〝伝説のガクラン〟によって、あなたは今までにないほどの、外向的な性格に生まれ変わりました。何事も積極的で、自信満々。どうです、良い気分だったのではありませんか?」
世之介は不承不承、頷く。
「そ、そりゃ、まあ……」
「あれを御覧なさい」
光右衛門は戦っている二人の賽博格を指さす。助三郎と格乃進は、阿修羅のごとく、群がる暴徒を叩きのめし、千切っては投げ、千切っては投げという形容がぴったりだ。
群がる男女の顔を、世之介は眺める。皆、戦いに喜びを見出し、どんなに賽博格に叩きのめされようが、弾き飛ばされようが、飽くことなく向かっていく。
「助さん、格さんの二人に向かっていく人間の顔。あれは、世之介さんが戦っているときの顔、そのものです!」
衝撃に、世之介は地の底に沈むような気分を味わっていた。あれが、俺の顔?
二人の賽博格に遮二無二、我勝ちに突撃していく人間は、一人残らず狂気、といっていい表情を浮かべている。
両目を思い切りひん剥き、唇は笑いの形に歪み、戦いへの期待で、頬はてらてらと輝いていた。
信じられなかった……。
光右衛門は回想するような口調になった。
「初めて会った頃のあなたは、何事にも自信がなく、臆病そうでした。戸惑いが、常にあなたの周りに取り巻いておりましたな。しかし〝伝説のガクラン〟を着たあなたは、別人に変わった。いや、本来のあなたの性格が表に出た――と、わたくしは思っております」
光右衛門は自分の杖を掲げた。
「わたくしは老人ですから、これ、このように杖を必要とします。あなたのガクランは、ちょうどそのように精神的な杖として役立ったのでしょう。しかし、世之介さんはお若い。若いあなたが、いつまでも杖にすがるのは、どうかと思いますぞ!」
〝伝説のガクラン〟は、俺にとっては杖なのか……。
光右衛門の言葉に全面的に反発したい気持ちと、心のどこかで深く納得している自分に、世之介は引き裂かれていた。
世之介は、光右衛門を見詰めた。光右衛門の背後には、茜とイッパチ、省吾の三人が、息を潜めて二人の会話に耳を欹てている。
徐々に世之介の心に、ある決意が漲った。
光右衛門に向かい、呟くように返事をする。
「判ったよ……光右衛門さん。いや、御老公様!」
光右衛門は「くっく」と小さく笑った。
「いつものように『爺さん』で結構!」
世之介は笑い返した。
「そうだな。今更、御老公なんて言い難いや! 爺さん、俺は決めたぜ!」
ふっと、溜息を吐くと、世之介は目を閉じた。自分の精神を、微小機械の電網に接続する。
「ど、どうして、そんな結論になるんだ? 俺は金輪際、そんな馬鹿な考えを持ったことはないぞ!」
光右衛門は静かに首を振る。
「微小機械と接続しているのは、世之介さんしかおりません。微小機械に影響を及ぼすことが可能なのは世之介さん、一人だけ……。結論は、ハッキリしております!」
ぐっと腕を挙げ、指さす。
「〝伝説のガクラン〟によって、あなたは今までにないほどの、外向的な性格に生まれ変わりました。何事も積極的で、自信満々。どうです、良い気分だったのではありませんか?」
世之介は不承不承、頷く。
「そ、そりゃ、まあ……」
「あれを御覧なさい」
光右衛門は戦っている二人の賽博格を指さす。助三郎と格乃進は、阿修羅のごとく、群がる暴徒を叩きのめし、千切っては投げ、千切っては投げという形容がぴったりだ。
群がる男女の顔を、世之介は眺める。皆、戦いに喜びを見出し、どんなに賽博格に叩きのめされようが、弾き飛ばされようが、飽くことなく向かっていく。
「助さん、格さんの二人に向かっていく人間の顔。あれは、世之介さんが戦っているときの顔、そのものです!」
衝撃に、世之介は地の底に沈むような気分を味わっていた。あれが、俺の顔?
二人の賽博格に遮二無二、我勝ちに突撃していく人間は、一人残らず狂気、といっていい表情を浮かべている。
両目を思い切りひん剥き、唇は笑いの形に歪み、戦いへの期待で、頬はてらてらと輝いていた。
信じられなかった……。
光右衛門は回想するような口調になった。
「初めて会った頃のあなたは、何事にも自信がなく、臆病そうでした。戸惑いが、常にあなたの周りに取り巻いておりましたな。しかし〝伝説のガクラン〟を着たあなたは、別人に変わった。いや、本来のあなたの性格が表に出た――と、わたくしは思っております」
光右衛門は自分の杖を掲げた。
「わたくしは老人ですから、これ、このように杖を必要とします。あなたのガクランは、ちょうどそのように精神的な杖として役立ったのでしょう。しかし、世之介さんはお若い。若いあなたが、いつまでも杖にすがるのは、どうかと思いますぞ!」
〝伝説のガクラン〟は、俺にとっては杖なのか……。
光右衛門の言葉に全面的に反発したい気持ちと、心のどこかで深く納得している自分に、世之介は引き裂かれていた。
世之介は、光右衛門を見詰めた。光右衛門の背後には、茜とイッパチ、省吾の三人が、息を潜めて二人の会話に耳を欹てている。
徐々に世之介の心に、ある決意が漲った。
光右衛門に向かい、呟くように返事をする。
「判ったよ……光右衛門さん。いや、御老公様!」
光右衛門は「くっく」と小さく笑った。
「いつものように『爺さん』で結構!」
世之介は笑い返した。
「そうだな。今更、御老公なんて言い難いや! 爺さん、俺は決めたぜ!」
ふっと、溜息を吐くと、世之介は目を閉じた。自分の精神を、微小機械の電網に接続する。
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