氷と兎と非日常

かになべ

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[三話目]跳ねる箱庭、測る敵

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「涼音、行くよ」
ひなはそう呟くと、左目を光らせた。
― ― ― ― ― ―
 ひなの能力は『繋』。他人と自分の意識を繋ぐ事ができる。つまりはテレパシーだ。相手の「許可」が基本的には必要で、繋いでる間は喋らずに会話する事が出来る。自分を介せば他人同士を繋げることもできる。少なくとも私の能力よりは便利だ。と、思う。
― ― ― ― ― ―
ひなの合図の後、頭が一瞬、ぴりっとする。そして、声が聞こえる。
〈涼音、聞こえるか?〉
文字を脳内に浮かべ、返す。
〈おーけーだよ〉
前を見る。ふゆが少しこちらを伺ってから話す、
「それでは行きますよ。」
そう言うと、彼女の左手に真っ黒な立方体が浮き出る。
「伸びろ」
刹那、ひゅんっと黒い棒が目の前に飛び出る。反射で上に跳んでから、よく見ると立方体の端が伸びている。
〈大丈夫?〉
〈なんとか。次は避けれるかなぁ?〉
最高到達点に届いてから落下を始める時にその棒から枝のような細い直方体が伸びていた。
「えっ」
咄嗟に手持ちの道中で買ったパンの袋を置いて、蹴る。パンを地面に跳んで避けると、パンの袋に棒が刺さって、さらにそこから無造作に直方体が何本も飛び出て袋を刺していた。
〈えげつねー〉
「避けるとは。流石姉さんが仕留め損ねた人だ。」
地面に着くと、ふゆが話し始めた。
「相手がどんなのかは分かったから、今日は帰るよ。」
そう言い残すと、先程の壁に戻って行った。


「ただいまー!」
「ただいま」
帰宅。収納。レンチン。着席。
「それじゃ、第一回、命を守ろう会議、スタート!」
「命狙われてた割にテンション高いね」
「まあね」
軽く談笑して、机から紙を取り出す。会議では私が一応進行するのがここでのルールだ。
「まず、はるの方からお願い。」
「了解!はるは面に黒い四角を出して、そこをワープゲートみたいに扱ってるよね」
「あと、使う時には床を触ってる時も多い。」
「もしかしたら、多少の条件はあるのかも。」

はるの情報
・面と面を通す
・条件付きカモ
・明るくてかわいい!

「…私、ツッコまないから」
「じゃあ次、ふゆ!ふゆは立方体とか、直方体を出してて、強そう!」
「雑。この子も条件はありそう。」
「四角を直接身体に出さないって事は箱同士でくっつく必要があるって事かな?」
「多分。」

ふゆの情報
・箱みたいなのを出す
・繋がらないとダメ
・クールでかっこいい!

「…」
「なつ…は、ひなは話した事ないか。」
「出会っても無いし、まあまた後で話し合おう。」
「りょーかい。そういえば、今日の夕食にはとうもろこしを付けてくれるって言ってたよね?」
「覚えてたか、仕方ない。今日はピラフだ。」
「わーい!」
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