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彼女を縛る鎖・・・少女のその後
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レイチェル視点
子爵家の次女として生まれた私は幼いころからお転婆娘で父の頭痛のタネになっていた。まあ、兄が二人と姉もいることから問題はないと大目に見られていた。礼儀作法などは貴族として叩きこまれたので問題はないと思う・・・
そんな私は、学園に入ってから天使のような存在に出会った。その彼女、リディは侯爵家の令嬢だが学園の寮部屋が一緒だったこともあり仲良くなった。彼女は自分は地味だと思っているがそんなことはないと思う。確かに誰もが目を引かれるような華やかな美人ではないが、可愛らしい顔立ちだしなにより素直で陽だまりみたいに優しい子だ。
あまりおしゃべりが得意な方ではないようだが、慣れてくると沢山話してくれるし小動物みたいで知り合いの令嬢と甘やかした。休暇中には家に泊まってもらったりもした。家族にも気に入られていたし、使用人も好意的に見ていた。
家族から何もかもを否定的に見られて育ったからか、自信がないところも多かったが私は彼女の姉よりもリディの方が好きだ。あの美しい顔立ちの下で人をこっそり見下して悦に入っていたところを見た時は気持ち悪くて仕方なかった。
溜め込むことも多かったので、休暇の時は思いっきり遊んで気分転換をさせた。男に生まれていたら嫁に欲しいのに・・・正直女性同士でもちょっといいかなと思うくらいには、時折浮かべる笑顔は可愛いし癒されるのだ。兄に言ったら呆れられた。
一番上の8歳上の兄はもう結婚しているが4つ上の兄は婚約者もいないし、リディのことは気に入っているし家族とも仲は良いし・・・リディも兄のことは気になっていたようだから、学園を卒業したら兄の婚約者にしてもらおうか本気で検討していた・・・のに。
私が学園卒業後に貴族令嬢などの警護につく女性騎士の集まる白薔薇騎士団に入団して、訓練をしたり忙しくしている間に、卒業してすぐにあの子の家は贅沢をして浪費したお金のためにリディを侯爵家に嫁入りさせてしまった。
子爵家と侯爵家では権力が違うし、嫁入りしてしまったら手出しができない。あの家でないから手紙はちょくちょくと出した。大丈夫だと書いてあったけど、心配で仕方なかったが任務や訓練もあり手紙以外ではなかなか会いに行くことなんてできなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おい、レイ!なーーに不機嫌な顔してんだよっ!」
騎士の合同訓練で訓練場に集合しているときに、魔物や盗賊などを討伐する第二騎士団に所属するマークが一区切りついて休憩なのか話しかけてきた。
「別に、なんでもない。」
「おーー怖っ。あっアレか?お前の天使ちゃん関係か?」
「煩い・・・最近手紙が返ってこないことが多いんだよ。時々は届くんだけど。あの子溜め込むことが多いし・・・天使ちゃんはやめろ。お前にリディは絶対あげないからな。」
「お前の話聞く限り伯爵令嬢だし今は侯爵夫人だけどだけど高慢じゃないし素直で可愛いらしいもんな、お前の友達のリディ嬢。てか、俺の扱い酷くね?」
はあ・・・本当に大丈夫かな。嫌な予感がするんだけど、病気とか?もしくは怪我とか?
「そろそろ、合同訓練を再開しますよ。持ち場に戻りなさい。」
「は、はい。分かりました副団長っ。・・・ん?アレって・・おいレイ、あそこにいるのってお前の侍女じゃねえか?」
「え?」
騎士の間を突っ切ってかけてくるのは、確かに子供のころから私の家に仕えている侍女のフィナだった。
「レイチェル様!!お話がっ!」
よく見ると顔色が真っ青だ。
「何があった。少し落ち着いて・・」
「っ!リディ様が、リディ様が亡くなったとっ連絡がっ」
「は・・今、なんて・・」
信じたくない、頭が受け入れることを即座に拒否するような言葉が放たれて、頭の中が真っ白になる。副団長が聞いていたのか家に戻るための手続きを行うから急いでいきなさいと言ってくれ、マークが私の所属する騎士団に連絡に行ってくれたこともあり、茫然としたまま家に慌てて戻る。
その後、事実と分かってからは、葬式も出席した。信じたくなかった事実は、冷たい亡骸と対面することで現実と化した。崖から身を投げたリディの遺体を見て、面倒な顔をして悲しんでもいない厄介者を見るような目をしているリディの両親を見て、貴方たちが原因の一つだろうと殴りたくなる衝動を必死に耐えた。
何かから解放されたような静かな顔で、逃げるのは死の世界ではなく、私や我が家ではダメだったのだろうか。
もしも、もう少し会いに行けていたら、強引にでも休暇の時のように連れ出していたら、・・・何かが変わっていただろうか・・・
「・・ねぇ、レイチェル。私、貴方のお嫁さんになれたらよかったわ。あなたの家族、すごく素敵だもの。」
「騎士団に入るのね!おめでとう!私も剣とかが出来たらよかったわ。」
「レイに好きな人が出来たら教えてね、絶対よ!」
「・・レイ、えっと・・お兄様のカイヤ様って・・婚約者とかいるの?」
記憶の中の彼女との会話が思い返される。
心配の種だった少し前の手紙の一文。任務で動けなくても誰かに様子を探ってもらうか、無理やり休暇をとってでも駆けつけてやればよかった!
『レイチェル・・私、やっぱりどこにいても疫病神みたい。レイみたいになれたらよかったのに・・・』
あの子は責任感は強かったから、もしも自分に子供が出来ていたならあの子はおいて逝くことは出来ないと絶対に死ななかっただろう。この世界に縛り付けておくための未練という名の枷はリディにはもうなくなってしまっていたのかもしれないと、最後に触れた冷たく死に化粧を施された顔に涙がこぼれ落ちていった。
葬式が終わってぼんやりしながら戻った家で侍女のフィナから手紙と箱を手渡された。
・・中の手紙には、自分とリディのこの家での思い出や学園での出来事などを思い出す文面が書かれていて最後に書かれていたのは先に逝くことへの謝罪だった。箱の中は思い出の物だからあの家だと処分されてしまうだろうから持っていてほしいとの一文もつけてあった。
貴族であれば政略での婚姻は避けられないことが多い。侯爵がリディを大切にしていれば、結婚前に何かしていれば、ああしていれば何かが変わったかもしれないという考えはもう意味がない。
箱の中に入っていたのはこの家で過ごしたころの物ばかりで、学園時代に街に出かけたときにお揃いで買ったブレスレットを握りしめフィナに縋りついて子どものように泣いた。
子爵家の次女として生まれた私は幼いころからお転婆娘で父の頭痛のタネになっていた。まあ、兄が二人と姉もいることから問題はないと大目に見られていた。礼儀作法などは貴族として叩きこまれたので問題はないと思う・・・
そんな私は、学園に入ってから天使のような存在に出会った。その彼女、リディは侯爵家の令嬢だが学園の寮部屋が一緒だったこともあり仲良くなった。彼女は自分は地味だと思っているがそんなことはないと思う。確かに誰もが目を引かれるような華やかな美人ではないが、可愛らしい顔立ちだしなにより素直で陽だまりみたいに優しい子だ。
あまりおしゃべりが得意な方ではないようだが、慣れてくると沢山話してくれるし小動物みたいで知り合いの令嬢と甘やかした。休暇中には家に泊まってもらったりもした。家族にも気に入られていたし、使用人も好意的に見ていた。
家族から何もかもを否定的に見られて育ったからか、自信がないところも多かったが私は彼女の姉よりもリディの方が好きだ。あの美しい顔立ちの下で人をこっそり見下して悦に入っていたところを見た時は気持ち悪くて仕方なかった。
溜め込むことも多かったので、休暇の時は思いっきり遊んで気分転換をさせた。男に生まれていたら嫁に欲しいのに・・・正直女性同士でもちょっといいかなと思うくらいには、時折浮かべる笑顔は可愛いし癒されるのだ。兄に言ったら呆れられた。
一番上の8歳上の兄はもう結婚しているが4つ上の兄は婚約者もいないし、リディのことは気に入っているし家族とも仲は良いし・・・リディも兄のことは気になっていたようだから、学園を卒業したら兄の婚約者にしてもらおうか本気で検討していた・・・のに。
私が学園卒業後に貴族令嬢などの警護につく女性騎士の集まる白薔薇騎士団に入団して、訓練をしたり忙しくしている間に、卒業してすぐにあの子の家は贅沢をして浪費したお金のためにリディを侯爵家に嫁入りさせてしまった。
子爵家と侯爵家では権力が違うし、嫁入りしてしまったら手出しができない。あの家でないから手紙はちょくちょくと出した。大丈夫だと書いてあったけど、心配で仕方なかったが任務や訓練もあり手紙以外ではなかなか会いに行くことなんてできなかった。
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「おい、レイ!なーーに不機嫌な顔してんだよっ!」
騎士の合同訓練で訓練場に集合しているときに、魔物や盗賊などを討伐する第二騎士団に所属するマークが一区切りついて休憩なのか話しかけてきた。
「別に、なんでもない。」
「おーー怖っ。あっアレか?お前の天使ちゃん関係か?」
「煩い・・・最近手紙が返ってこないことが多いんだよ。時々は届くんだけど。あの子溜め込むことが多いし・・・天使ちゃんはやめろ。お前にリディは絶対あげないからな。」
「お前の話聞く限り伯爵令嬢だし今は侯爵夫人だけどだけど高慢じゃないし素直で可愛いらしいもんな、お前の友達のリディ嬢。てか、俺の扱い酷くね?」
はあ・・・本当に大丈夫かな。嫌な予感がするんだけど、病気とか?もしくは怪我とか?
「そろそろ、合同訓練を再開しますよ。持ち場に戻りなさい。」
「は、はい。分かりました副団長っ。・・・ん?アレって・・おいレイ、あそこにいるのってお前の侍女じゃねえか?」
「え?」
騎士の間を突っ切ってかけてくるのは、確かに子供のころから私の家に仕えている侍女のフィナだった。
「レイチェル様!!お話がっ!」
よく見ると顔色が真っ青だ。
「何があった。少し落ち着いて・・」
「っ!リディ様が、リディ様が亡くなったとっ連絡がっ」
「は・・今、なんて・・」
信じたくない、頭が受け入れることを即座に拒否するような言葉が放たれて、頭の中が真っ白になる。副団長が聞いていたのか家に戻るための手続きを行うから急いでいきなさいと言ってくれ、マークが私の所属する騎士団に連絡に行ってくれたこともあり、茫然としたまま家に慌てて戻る。
その後、事実と分かってからは、葬式も出席した。信じたくなかった事実は、冷たい亡骸と対面することで現実と化した。崖から身を投げたリディの遺体を見て、面倒な顔をして悲しんでもいない厄介者を見るような目をしているリディの両親を見て、貴方たちが原因の一つだろうと殴りたくなる衝動を必死に耐えた。
何かから解放されたような静かな顔で、逃げるのは死の世界ではなく、私や我が家ではダメだったのだろうか。
もしも、もう少し会いに行けていたら、強引にでも休暇の時のように連れ出していたら、・・・何かが変わっていただろうか・・・
「・・ねぇ、レイチェル。私、貴方のお嫁さんになれたらよかったわ。あなたの家族、すごく素敵だもの。」
「騎士団に入るのね!おめでとう!私も剣とかが出来たらよかったわ。」
「レイに好きな人が出来たら教えてね、絶対よ!」
「・・レイ、えっと・・お兄様のカイヤ様って・・婚約者とかいるの?」
記憶の中の彼女との会話が思い返される。
心配の種だった少し前の手紙の一文。任務で動けなくても誰かに様子を探ってもらうか、無理やり休暇をとってでも駆けつけてやればよかった!
『レイチェル・・私、やっぱりどこにいても疫病神みたい。レイみたいになれたらよかったのに・・・』
あの子は責任感は強かったから、もしも自分に子供が出来ていたならあの子はおいて逝くことは出来ないと絶対に死ななかっただろう。この世界に縛り付けておくための未練という名の枷はリディにはもうなくなってしまっていたのかもしれないと、最後に触れた冷たく死に化粧を施された顔に涙がこぼれ落ちていった。
葬式が終わってぼんやりしながら戻った家で侍女のフィナから手紙と箱を手渡された。
・・中の手紙には、自分とリディのこの家での思い出や学園での出来事などを思い出す文面が書かれていて最後に書かれていたのは先に逝くことへの謝罪だった。箱の中は思い出の物だからあの家だと処分されてしまうだろうから持っていてほしいとの一文もつけてあった。
貴族であれば政略での婚姻は避けられないことが多い。侯爵がリディを大切にしていれば、結婚前に何かしていれば、ああしていれば何かが変わったかもしれないという考えはもう意味がない。
箱の中に入っていたのはこの家で過ごしたころの物ばかりで、学園時代に街に出かけたときにお揃いで買ったブレスレットを握りしめフィナに縋りついて子どものように泣いた。
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