【アステリウム】

漣 琉華

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15、フィリアー呆気ない婚約破棄

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ヒロインであるアイナはあっという間に、ジェイク殿下の心を奪っていった。


私は、婚約破棄を申し出されたら綺麗に身を引くつもりだったからあまり気にせずに、ティファーナの心配にも笑っていた。


もともと私は愛されてなどいない。メルドア公爵家の悪事は叩けば埃なんてものじゃないくらいのものがあるので、地獄の底に引きずり込むのは証拠をしっかりと掴んでしまえば容易い。……その内に第2騎士団[双翼]からの報告書の束が王家に提出されるだろう。



だが、ジェイク殿下達はメルドア公爵令嬢がしたことを、首謀者を私ということにしたために、私が本当にやったと思ったらしい。私は別にそんなことに興味はなかったのだけど。



婚約者であったはずなのに、信じてはもらえなかった。


まあ、嫌われているのだから当然か……


「お前のような者と将来の伴侶となるなど不可能だ。」


「貴様のような卑しい内面を持った者が婚約者など悍ましい。」


「婚約は破棄させてもらう。父上にもすぐに進言する。」


「大人しくしていることだな。」


…散々な言われようだったが、暗殺者を倒すのにも疲れてきて、だんだんと気持ちが冷めてきていたのかあまり心は動かなかった。


自分の家に戻ったら、普段クールな美女のアンジェが抱きしめてきた。


「あの男……不能にでもなってしまえばよいものを…」


流石に不敬罪になるので小声だったが、瞳が絶対零度の殺気を宿していた。


シスコンな兄が、おそらく他の嵌めようとしてくれた人間に対してはどうにかしてくれるようだ。

副団長でもう1人の兄のように慕っている苦労人なロベルト様が後日非常にフラフラしていた。
どうやら、私の婚約破棄の顛末を聞いて怒り狂って遠征先の魔物をバッサバッサと狩倒してきたらしい。
貴族連中の弱みもたっぷりと調べ尽くして、搾り取ってきたようなのでメルドア公爵家を筆頭に、悪事を働いてきた奴らはもうお終いだろうなと思う。



私の初恋の相手との婚約関係は終わった。

無実も兄やアンジェの協力によって晴れているので、後ろ暗いところもない。しばらくは、のんびり出来そうだ。


今後、よく似たこの世界でどのようにストーリーが進んでいくのかはわからない。これが正解なのか不正解なのか、関わってきた人たちがどのような結末を迎えるのかは未知数だ。


だが、自由になったのなら前を向いて生きていきたい。


また、誰かに恋をするのだろうか。お一人様は寂しいので、誰かもらってくれると嬉しいけど……まっ、今は考えないようにしよう!




これにて、フィリア編は一先ず終了です。
後日、騎士団などの苦労話なんかをもしかしたら入れるかもしれません。by作者
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