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第肆章
第30話 短歌の秘めたる愛と憎しみ
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日が暮れる頃までの記憶はあった。だが、ふと気づくと、視界は明るく、朱塗りの門の前にいることに季音は気づいた。
あの庭だ。
季音は迷うことなく開いた門をくぐり、白砂利の敷き詰められた道を進んだ。
思えば、入れ替わってからというもの、藤夜の声は聞かなかった。
それに、自分の身体を乗っ取ろうともしなかった。あんなことをしておいて、よくも素直に身体の中にいたものだ。そんな風に思いながら、季音は藤棚の四阿を目指して歩む。
下に菖蒲の群生する朱塗りの橋を渡り、椿の大木を横切り、やがて辿り着いたのは曼珠沙華の群生地。その真ん中にぽつりと佇む四阿に着いたが、そこには藤夜の姿はなかった。
(どこにいったのかしら……いったい何を考えているの)
季音は四阿の中を見渡した。ぱっと視界に入ったのは書き物机だった。その上には煙草盆と、若草色の帳面と筆用具が置かれている。
季音は帳面を手に取り、ぱらぱらと捲った。
そこに書かれた字は、龍志に負けず劣らずの達筆だった。内容は日記のようなもの。それから、短歌を幾つも綴られていた。
それをひとつひとつ目で追うと、全てが恋を詠うものと気づき、季音は眉を寄せる。
神とはいえ、藤夜にも思い人がいたのだろうか。そんなことを思ったときだった――
「……人の歌集を覗き見るなど趣味が悪い」
冷ややかな声が後方から響き、季音はすぐに振り返る。そこには、案の定、藤夜が煙管を燻らせて佇んでいた。
「……私の様子を、ここからずっと眺めていたのだから、おあいこでしょう」
「まぁ、それもそうじゃな。どうだい、あんたも一句、歌でも綴ってみるかい。そこに書くことを許してやろうぞ」
鼻を聳やかし言うと、藤夜は季音にそこに座るよう促した。
当然ながらそんな気分ではなかった。ふつふつと蘇る怒りは収まりやしない。
「嫌よ! 貴女は何がしたいの? 貴女にだって誰かを思う気持ちはあったのでしょう……」
季音は若草色の帳面を彼女に向かって投げつけた。
帳面は彼女の肩に当たり、地面に落ちる。
きっと、すぐさま胸ぐらを掴みかかって怒ると思ったが、彼女はそれを拾い上げ、何も言わなかった。
「……詠龍様が、龍志様が何をしたというの! 確かに彼は、貴女が私の身体を奪った後に冷たい石の中に封印したわ。それを恨んでいるの? 貴女は、そもそも私の身体を手に入れて何をしたかったの!」
季音の問いに、彼女は薄く笑む。
「あぁ。封印はな、それはとても恨んでおる」そう言って、彼女は季音に視線をやると静かに続けた。
「……あの男、神通力を持っておるだろう? それは紛れもなく、神の子孫の証。あやつの先祖は社にいた先代の神さ。その神は人の娘に魅了されて人になった。そして妾に神の座を押しつけた。妾の気など何も知らずに、有無を言わせず押しつけた」
――そうして幾百年か時を経たころ、あやつの子孫が哀れなお前を連れて帰ってきた。丁度良い入れ物と思ったさ。
そこで積年の恨みが築き上げた荒魂で荒神に墜ちてやった。末代まで祟る復讐のため……。
藤夜は全てを告げ、「ざまぁみろ」と唇を歪め、冷たくほくそ笑む。
その藤色の瞳には、長い年月を煮詰めたような怨念が揺らめき、季音の心を凍てつかせるようだった。
季音は血が滲むほど唇を噛みしめた。
そういうことだったのか。だから報復のために自分たちを陥れたのか。気づけば季音は藤夜に掴みかかっていた。
「――っ、ふざけないで! あなたが恨む先代の神と、詠龍様や龍志様は同一ではないわ! 怒りを向ける矛先が違うじゃない! それで私の身体を乗っ取った挙げ句に、蘢様の対を獅子を殺したの? 確かに私は貴女に生きたいと縋った。貴女の存在を信じるしかなかったわ!」
こんなに剣幕になって怒り散らしたことなど、記憶の中では初めてだろう。恐ろしい相手に物を申している自覚はあるが、やり場のない気持ちの方が圧倒的に勝っていた。
季音は藤夜を四阿の柱に押しつけ、力強く睨みつけた。
「だけど、貴女。全てが不自然よ……なぜ、封印が解けた後から私でいさせたの。乗り替わるくらい簡単よね……でも、私はそれで過去の願いは叶えてもらえたと思ってる。でもさっきの言葉で一つだけ分かったわ。あなた、そもそものやり方がおかしいわよ」
季音が強く言い放つと、藤夜は挑発的な視線をやって、馬鹿にするように鼻で笑う。
「ほぅ。愚図な藤香が妾に説教と……なんだ? 聞いてやらんこともない」
「……藤夜様。貴女は〝私の気など〟と言ったわよね? あの歌を誰に詠ったかはなんとなく、想像できる。貴女、きっと先代の神を想ったのでしょう。どうしてそれを本人に言わなかったの。有無を言わせず押しつけた? 貴女はきっと私よりも、うんと頭が良い。何か対処しようがあったんじゃないの。そもそも、本人に思いを言えばよかったじゃない」
――せめて、身体を貸したのだから全てを言いなさい。ううん、言え。
季音は青筋を立てて凄む。すると、藤夜は薄紅の唇に綻ばせ、たちまち高らかな笑い声をこぼした。
「何よ」
藤夜を睨むが、彼女は依然として、肩と背を震わせて腹の底から笑っていた。その眦には涙も滲んでいて、何がそんなに可笑しいのか分からない。
「笑うことないじゃない! 私は本気で言っているの! 教えなさい、全部」
――私をどうしたいの。龍志様をどうするつもりなの!
季音が叫んだときだった。
四阿の入り口から小さな物音がした――はっとした季音が顔を向けると、そこには齢二、三歳ほどの小さな男の子が立っていた。
人の子だろう。妖らしき特徴は微塵も見えなかった。あまりに突然……それも意外な来訪者に、季音は自然と藤夜に掴みかかっていた手を離す。
――青光りするほどの濡羽色の髪に、陶器のように白い肌、その顔立ちは優しく柔らかい。心なしかその面は自分と似ているだろう……。
季音がそう思った矢先だった。
「なんじゃい、うるさくしてしもうたか。起きたのかい?」
驚くほど優しい声色だった。
稚児は藤夜にニコっと微笑むと、よちよちとした歩みで近づく。そうして、藤夜は当たり前のようにその子を抱きかかえた。
――この子は誰?
季音の思考はぴたりと止まった。
あの庭だ。
季音は迷うことなく開いた門をくぐり、白砂利の敷き詰められた道を進んだ。
思えば、入れ替わってからというもの、藤夜の声は聞かなかった。
それに、自分の身体を乗っ取ろうともしなかった。あんなことをしておいて、よくも素直に身体の中にいたものだ。そんな風に思いながら、季音は藤棚の四阿を目指して歩む。
下に菖蒲の群生する朱塗りの橋を渡り、椿の大木を横切り、やがて辿り着いたのは曼珠沙華の群生地。その真ん中にぽつりと佇む四阿に着いたが、そこには藤夜の姿はなかった。
(どこにいったのかしら……いったい何を考えているの)
季音は四阿の中を見渡した。ぱっと視界に入ったのは書き物机だった。その上には煙草盆と、若草色の帳面と筆用具が置かれている。
季音は帳面を手に取り、ぱらぱらと捲った。
そこに書かれた字は、龍志に負けず劣らずの達筆だった。内容は日記のようなもの。それから、短歌を幾つも綴られていた。
それをひとつひとつ目で追うと、全てが恋を詠うものと気づき、季音は眉を寄せる。
神とはいえ、藤夜にも思い人がいたのだろうか。そんなことを思ったときだった――
「……人の歌集を覗き見るなど趣味が悪い」
冷ややかな声が後方から響き、季音はすぐに振り返る。そこには、案の定、藤夜が煙管を燻らせて佇んでいた。
「……私の様子を、ここからずっと眺めていたのだから、おあいこでしょう」
「まぁ、それもそうじゃな。どうだい、あんたも一句、歌でも綴ってみるかい。そこに書くことを許してやろうぞ」
鼻を聳やかし言うと、藤夜は季音にそこに座るよう促した。
当然ながらそんな気分ではなかった。ふつふつと蘇る怒りは収まりやしない。
「嫌よ! 貴女は何がしたいの? 貴女にだって誰かを思う気持ちはあったのでしょう……」
季音は若草色の帳面を彼女に向かって投げつけた。
帳面は彼女の肩に当たり、地面に落ちる。
きっと、すぐさま胸ぐらを掴みかかって怒ると思ったが、彼女はそれを拾い上げ、何も言わなかった。
「……詠龍様が、龍志様が何をしたというの! 確かに彼は、貴女が私の身体を奪った後に冷たい石の中に封印したわ。それを恨んでいるの? 貴女は、そもそも私の身体を手に入れて何をしたかったの!」
季音の問いに、彼女は薄く笑む。
「あぁ。封印はな、それはとても恨んでおる」そう言って、彼女は季音に視線をやると静かに続けた。
「……あの男、神通力を持っておるだろう? それは紛れもなく、神の子孫の証。あやつの先祖は社にいた先代の神さ。その神は人の娘に魅了されて人になった。そして妾に神の座を押しつけた。妾の気など何も知らずに、有無を言わせず押しつけた」
――そうして幾百年か時を経たころ、あやつの子孫が哀れなお前を連れて帰ってきた。丁度良い入れ物と思ったさ。
そこで積年の恨みが築き上げた荒魂で荒神に墜ちてやった。末代まで祟る復讐のため……。
藤夜は全てを告げ、「ざまぁみろ」と唇を歪め、冷たくほくそ笑む。
その藤色の瞳には、長い年月を煮詰めたような怨念が揺らめき、季音の心を凍てつかせるようだった。
季音は血が滲むほど唇を噛みしめた。
そういうことだったのか。だから報復のために自分たちを陥れたのか。気づけば季音は藤夜に掴みかかっていた。
「――っ、ふざけないで! あなたが恨む先代の神と、詠龍様や龍志様は同一ではないわ! 怒りを向ける矛先が違うじゃない! それで私の身体を乗っ取った挙げ句に、蘢様の対を獅子を殺したの? 確かに私は貴女に生きたいと縋った。貴女の存在を信じるしかなかったわ!」
こんなに剣幕になって怒り散らしたことなど、記憶の中では初めてだろう。恐ろしい相手に物を申している自覚はあるが、やり場のない気持ちの方が圧倒的に勝っていた。
季音は藤夜を四阿の柱に押しつけ、力強く睨みつけた。
「だけど、貴女。全てが不自然よ……なぜ、封印が解けた後から私でいさせたの。乗り替わるくらい簡単よね……でも、私はそれで過去の願いは叶えてもらえたと思ってる。でもさっきの言葉で一つだけ分かったわ。あなた、そもそものやり方がおかしいわよ」
季音が強く言い放つと、藤夜は挑発的な視線をやって、馬鹿にするように鼻で笑う。
「ほぅ。愚図な藤香が妾に説教と……なんだ? 聞いてやらんこともない」
「……藤夜様。貴女は〝私の気など〟と言ったわよね? あの歌を誰に詠ったかはなんとなく、想像できる。貴女、きっと先代の神を想ったのでしょう。どうしてそれを本人に言わなかったの。有無を言わせず押しつけた? 貴女はきっと私よりも、うんと頭が良い。何か対処しようがあったんじゃないの。そもそも、本人に思いを言えばよかったじゃない」
――せめて、身体を貸したのだから全てを言いなさい。ううん、言え。
季音は青筋を立てて凄む。すると、藤夜は薄紅の唇に綻ばせ、たちまち高らかな笑い声をこぼした。
「何よ」
藤夜を睨むが、彼女は依然として、肩と背を震わせて腹の底から笑っていた。その眦には涙も滲んでいて、何がそんなに可笑しいのか分からない。
「笑うことないじゃない! 私は本気で言っているの! 教えなさい、全部」
――私をどうしたいの。龍志様をどうするつもりなの!
季音が叫んだときだった。
四阿の入り口から小さな物音がした――はっとした季音が顔を向けると、そこには齢二、三歳ほどの小さな男の子が立っていた。
人の子だろう。妖らしき特徴は微塵も見えなかった。あまりに突然……それも意外な来訪者に、季音は自然と藤夜に掴みかかっていた手を離す。
――青光りするほどの濡羽色の髪に、陶器のように白い肌、その顔立ちは優しく柔らかい。心なしかその面は自分と似ているだろう……。
季音がそう思った矢先だった。
「なんじゃい、うるさくしてしもうたか。起きたのかい?」
驚くほど優しい声色だった。
稚児は藤夜にニコっと微笑むと、よちよちとした歩みで近づく。そうして、藤夜は当たり前のようにその子を抱きかかえた。
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