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第三章 密かな願いと深い愛
3-9.久しい再会、晩餐の席Ⅰ
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そうして彼にエスコートされて着いた先は、波乱の再会を果たした応接間の隣部屋だった。
広々とした部屋で中央には長テーブル。その真上には煌びやかなシャンデリアが煌々と灯っていた。
ワゴンの上にはパンやワインの他に料理が数々乗せられており、ヒューゴーと二人の若いメイドが配膳を行っていた。
既にリーアムは席に座していた。しかし、二人が入室すると彼はこちらに顔を向けて席を立ち恭しく礼をするが、ヒューゴーに促されて再び着席する。
「さて飯にしよう、ヒューゴーも給仕はメイドたちに任せて席に着け」
ジャスパーは椅子を引いてアイリーンに座るように促した。
前回と同じく、リーアムの真正面だ。アイリーンはやや緊張した面で座すと、彼は少し居心地悪そうにアイリーンを見つめた。
「あの、アイリーン様……先日はサーシャが申し訳ありませんでした。僕自身が従者として情けない部分を見せた事、心から詫びさせてください」
リーアムが開口一番に放った言葉にアイリーンは目をしばたたく。
「それは私の方こそ……無知で……」
先に詫びられると、自分はどう出れば良いか分からない。
アイリーンは早速困惑した。まさかいきなり謝られると思いもしなかったのだ。
「確かにサーシャの語った事は事実ですが、僕は……」
そこまでリーアムが語るが、アイリーンの隣から大きなため息が響く。
「募る話だろ? 後にしようぜ。ここは俺の家だから、今は俺に従ってくれな」
ジャスパーが呆れたように言うので、リーアムは腑に落ちない顔をした。
「ですが……」
「だから、後でいくらでも語ってくれ。俺からもあんたやアイリーンにしたい話はたんとある。だけどな、飯は美味いうちに食え。それが飯を作った料理人や給仕をする使用人たちに向けての最上級の礼儀だと俺は思っている。郷には入れば郷に従えってやつだ。客人にも一応これに従って貰いたい」
納得する他なかった。リーアムも同様でそれ以上は何も言わず、皆で祈りを捧げるなり食事を開始した。
しかし、こんな大人数で会食などアイリーンは初めてだった。
少しばかり気まずく思えて食事がどうにも進まないが「ゆっくり食べろ」とジャスパーが言うので、言われた通りに自分のペースで食べる事にした。
そうしてアイリーンが主菜を食べ始めた頃には、男たちは既に食事を終えて、食後の紅茶を啜り始めながら話を始めた。
「初めに、調査の協力を快諾してくれた事に感謝する。初対面であんたに得物を突き付けられた時には、俺は石英樹海で死ぬもんだと思ったがな」
戯けた調子でジャスパーが切り出すと、リーアムは苦笑いを浮かべた。
「ですね……とんだ不届き者が来たと思いましたし、ここで貴方と再会した暁には刺す気満々でしたけど、ヒューゴー殿に剣を没収されたので殴る事も考えましたよ」
あの堅物のリーアムがここまで気さくに話をしている様にアイリーンは驚いてしまった。それも僅かに笑んでいるのだ。
たった一ヶ月、されど一ヶ月……。
否、ヒューゴーに関してはそれ以上。
神殿に若い男はいないので心も開きやすかったのだろうか。初めて見るリーアムの側面を不思議に思いつつ、アイリーンは男三人の会話に耳を傾けた。
広々とした部屋で中央には長テーブル。その真上には煌びやかなシャンデリアが煌々と灯っていた。
ワゴンの上にはパンやワインの他に料理が数々乗せられており、ヒューゴーと二人の若いメイドが配膳を行っていた。
既にリーアムは席に座していた。しかし、二人が入室すると彼はこちらに顔を向けて席を立ち恭しく礼をするが、ヒューゴーに促されて再び着席する。
「さて飯にしよう、ヒューゴーも給仕はメイドたちに任せて席に着け」
ジャスパーは椅子を引いてアイリーンに座るように促した。
前回と同じく、リーアムの真正面だ。アイリーンはやや緊張した面で座すと、彼は少し居心地悪そうにアイリーンを見つめた。
「あの、アイリーン様……先日はサーシャが申し訳ありませんでした。僕自身が従者として情けない部分を見せた事、心から詫びさせてください」
リーアムが開口一番に放った言葉にアイリーンは目をしばたたく。
「それは私の方こそ……無知で……」
先に詫びられると、自分はどう出れば良いか分からない。
アイリーンは早速困惑した。まさかいきなり謝られると思いもしなかったのだ。
「確かにサーシャの語った事は事実ですが、僕は……」
そこまでリーアムが語るが、アイリーンの隣から大きなため息が響く。
「募る話だろ? 後にしようぜ。ここは俺の家だから、今は俺に従ってくれな」
ジャスパーが呆れたように言うので、リーアムは腑に落ちない顔をした。
「ですが……」
「だから、後でいくらでも語ってくれ。俺からもあんたやアイリーンにしたい話はたんとある。だけどな、飯は美味いうちに食え。それが飯を作った料理人や給仕をする使用人たちに向けての最上級の礼儀だと俺は思っている。郷には入れば郷に従えってやつだ。客人にも一応これに従って貰いたい」
納得する他なかった。リーアムも同様でそれ以上は何も言わず、皆で祈りを捧げるなり食事を開始した。
しかし、こんな大人数で会食などアイリーンは初めてだった。
少しばかり気まずく思えて食事がどうにも進まないが「ゆっくり食べろ」とジャスパーが言うので、言われた通りに自分のペースで食べる事にした。
そうしてアイリーンが主菜を食べ始めた頃には、男たちは既に食事を終えて、食後の紅茶を啜り始めながら話を始めた。
「初めに、調査の協力を快諾してくれた事に感謝する。初対面であんたに得物を突き付けられた時には、俺は石英樹海で死ぬもんだと思ったがな」
戯けた調子でジャスパーが切り出すと、リーアムは苦笑いを浮かべた。
「ですね……とんだ不届き者が来たと思いましたし、ここで貴方と再会した暁には刺す気満々でしたけど、ヒューゴー殿に剣を没収されたので殴る事も考えましたよ」
あの堅物のリーアムがここまで気さくに話をしている様にアイリーンは驚いてしまった。それも僅かに笑んでいるのだ。
たった一ヶ月、されど一ヶ月……。
否、ヒューゴーに関してはそれ以上。
神殿に若い男はいないので心も開きやすかったのだろうか。初めて見るリーアムの側面を不思議に思いつつ、アイリーンは男三人の会話に耳を傾けた。
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