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第1話:新人ウェディングプランナー誕生
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「ピピピピピピピピッ!」。
やけに騒々しく感じるスマホのアラーム音が毛布にくるまったまま聞こえてくる。
地元静岡の3流大学に通いながらアルバイトをして貯めた貯金は、昨日までの引っ越しと新生活の準備でほぼ0。
この春から吉祥寺の木造アパートで一人暮らしを始めた蒼井愛菜はテーブルの上でバイブしながら鳴り止まないアラームを止めようと手を伸ばす。が、いつもなら届くスマホに手が触れない…なぜだろう。と、疑問が頭をかすめた瞬間、バケツいっぱいの氷水をかけられたかのように飛び起きそのままベットから転がり落ちた。
「いててて、はっ!今何時っ!?初日から遅刻したら大変だもんで!」
あどけなさの残るしゃべり方と子猫のような丸い瞳のおかげで年齢より若く見られそうだが、大人っぽい薄めの唇とソフトボール部で鍛えたちょうど良いデコルテが年相応の見た目に引き戻してくれる。
大学時代に胸元まであったロングヘアーは、一昨日地元の親友の練習台となり肩までキレイに切りそろえてもらったが、元々くせっ毛だったので短くした分寝癖がつきやすくなったようだ。
どうやら引っ越しの手伝いの条件が朝の準備に影響することになりそうだ。
ボサボサの髪をかき上げながら窓の外に目をやる。
そこには、まだ見慣れないおとなりさんの壁とちょこっとだけ覗く青い空。
窓を開けると春というにはまだちょっと肌寒い空気が部屋に入ってきた。
その分、空気が澄んでいるので雲の輪郭がはっきり見える。
ベランダでめいいっぱい伸びをして大きく息を吸い込むと、眠気が消え去りワクワクとした気持ちが心を満たした。
「よしっ!今日から私はたくさんの人の幸せのお手伝いをするんだもんね!」
小さい頃からの夢を職業に出来る人は意外と少ない。
憧れていた仕事でも大人の現実を知り諦めたり、学歴や環境が折り合わず挫折せざるを得なかったり。
小学生の頃、周りの男子がなりたかった職業ランキングには野球選手とか宇宙飛行士とか、とにかく目立ってヒーローになれる夢が多かったと思う。女子の夢は永遠の第1位お嫁さん(今の子達には当てはまらないかも)を筆頭にケーキ屋さんとかお花屋さんとか、可愛らしくウキウキするものばっかり。
昨年夏の同窓会で久しぶりに会ったクラスメートの話題の9割は就活がテーマ。
面接の内容や内定した会社の情報交換会がどこそこで開催し、まるで就活セミナーの会場みたいだった。
ただ、みんなの話を聞いていると子供の頃からの夢は残念ながら叶わなかったみたい、数人を除いて。その少数派に私も含まれる。夢を叶えた1人なのだ。ちなみに私の髪を切ってくれた沙耶も同じく少数派。
沙耶は実家が美容室で、小学生の頃からお店の手伝いをしていた。私はもちろんわたしんちの家族もずっと切ってもらってたの。
だから沙耶とは双子の姉妹みたいにいつも一緒。
熊さんみたいに大きくてあご髭ボウボウのマスターと、女優さんみたいに美人なのにおじさんみたいなジョークが好きなママさん。マスターもママさんも家業を継いでほしいなんて全然言ってなかったけど、沙耶は2人みたいになりたいって言っておままごとは床屋さんごっこばっかだった。
中学3年の時、進路希望に書き込んだ第1希望が沙耶は美容師、そして私は「ウェディングプランナー」だった。
やけに騒々しく感じるスマホのアラーム音が毛布にくるまったまま聞こえてくる。
地元静岡の3流大学に通いながらアルバイトをして貯めた貯金は、昨日までの引っ越しと新生活の準備でほぼ0。
この春から吉祥寺の木造アパートで一人暮らしを始めた蒼井愛菜はテーブルの上でバイブしながら鳴り止まないアラームを止めようと手を伸ばす。が、いつもなら届くスマホに手が触れない…なぜだろう。と、疑問が頭をかすめた瞬間、バケツいっぱいの氷水をかけられたかのように飛び起きそのままベットから転がり落ちた。
「いててて、はっ!今何時っ!?初日から遅刻したら大変だもんで!」
あどけなさの残るしゃべり方と子猫のような丸い瞳のおかげで年齢より若く見られそうだが、大人っぽい薄めの唇とソフトボール部で鍛えたちょうど良いデコルテが年相応の見た目に引き戻してくれる。
大学時代に胸元まであったロングヘアーは、一昨日地元の親友の練習台となり肩までキレイに切りそろえてもらったが、元々くせっ毛だったので短くした分寝癖がつきやすくなったようだ。
どうやら引っ越しの手伝いの条件が朝の準備に影響することになりそうだ。
ボサボサの髪をかき上げながら窓の外に目をやる。
そこには、まだ見慣れないおとなりさんの壁とちょこっとだけ覗く青い空。
窓を開けると春というにはまだちょっと肌寒い空気が部屋に入ってきた。
その分、空気が澄んでいるので雲の輪郭がはっきり見える。
ベランダでめいいっぱい伸びをして大きく息を吸い込むと、眠気が消え去りワクワクとした気持ちが心を満たした。
「よしっ!今日から私はたくさんの人の幸せのお手伝いをするんだもんね!」
小さい頃からの夢を職業に出来る人は意外と少ない。
憧れていた仕事でも大人の現実を知り諦めたり、学歴や環境が折り合わず挫折せざるを得なかったり。
小学生の頃、周りの男子がなりたかった職業ランキングには野球選手とか宇宙飛行士とか、とにかく目立ってヒーローになれる夢が多かったと思う。女子の夢は永遠の第1位お嫁さん(今の子達には当てはまらないかも)を筆頭にケーキ屋さんとかお花屋さんとか、可愛らしくウキウキするものばっかり。
昨年夏の同窓会で久しぶりに会ったクラスメートの話題の9割は就活がテーマ。
面接の内容や内定した会社の情報交換会がどこそこで開催し、まるで就活セミナーの会場みたいだった。
ただ、みんなの話を聞いていると子供の頃からの夢は残念ながら叶わなかったみたい、数人を除いて。その少数派に私も含まれる。夢を叶えた1人なのだ。ちなみに私の髪を切ってくれた沙耶も同じく少数派。
沙耶は実家が美容室で、小学生の頃からお店の手伝いをしていた。私はもちろんわたしんちの家族もずっと切ってもらってたの。
だから沙耶とは双子の姉妹みたいにいつも一緒。
熊さんみたいに大きくてあご髭ボウボウのマスターと、女優さんみたいに美人なのにおじさんみたいなジョークが好きなママさん。マスターもママさんも家業を継いでほしいなんて全然言ってなかったけど、沙耶は2人みたいになりたいって言っておままごとは床屋さんごっこばっかだった。
中学3年の時、進路希望に書き込んだ第1希望が沙耶は美容師、そして私は「ウェディングプランナー」だった。
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