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第27話 彼女は様子見どころか警戒対象だ
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第二段階。
今までは警察署からすこし離れた場所を選んで瞬間移動していたのを、警察署の近くへと場所を変える。
警察署に目が行くようにという、我ながら高度な作戦だ。高度だよね?
「トランスフォルマーレ! ムーヴェンズ!」
「あ、噂のあの子だわ」
「顔を見せろ!」
監視の目もあるので、一瞬で宿直室に戻る。
それを毎日繰り返す。
「トランスフォルマーレ! ムーヴェンズ!」
「ホントにいたんだ! こんな衣装見たことない!」
「衣装からは、悪い子には見えないわね」
「トランスフォルマーレ! ムーヴェンズ!」
「こんな警察署近くに現れたぞ!」
「どこかのお姫様かな? あの服、近くで見せてくれないかな」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
注文された品がそろったので、俺はシカーワの警察署に納品に出かけた。
「カハラ署長、ご注文本当にありがとうございました。多くのご注文をいただいたので、商品を揃えるのに時間がかかってしまい、申し訳ありませんでした」
「いやいやムラシンさん、こちらもいただいた情報はとても役に立ちました」
「それはよかったです。申し訳ないのですが、商品を集めるのに手間取ってしまい、今日はあんまり情報がなくて」
「全然構いませんよ、それというのもですね」
そう署長が言いかけたときに、ノックの音が聞こえた。
「フジガヤ君か、入りたまえ」
「失礼します」
あのティーツィアの子が、お茶を持って入ってきた。
まだここで働いていたのか。
この前の集会で様子見以外しないと決めた子なので、ちょっと申し訳ない。
あんなにやつれた顔をしていたのに。
やつれた? いや、今日はそんな印象は受けない。
むしろ元気そうに見える。何かあったのか?
あのココロという子が退出し、署長が再び口を開いた。
「ムラシンさん、あの子の顔を見ていたようですが、あの子のことは何かわかりましたか?」
「すみません、あの子の情報は掴めていません。商人仲間も知らないようなのです。それより署長、何かおっしゃりかけていましたが」
「それなんですけどね、最近この街に、魔人が頻繁に姿を現しているのですよ」
「魔人が? マールムの残党ですか?」
「いや、それがいつも一瞬で力で移動してしまうので、正体が掴めないのですよ。わかっているのは、どうやら女の子で、ひらひらの衣装を着ていることくらいです」
「ということは、同一人物なのですか」
「顔を手で隠しているので、はっきりしません。でもあんな変わった服を着ている人間はそうそういないでしょうから、我々は同一人物だと考えています」
「何か悪さをしているのですか?」
「それがただ姿を見せては、すぐに消えて、ほかの場所に現れているのですよ」
「服装に何か特徴はありませんか?」
「服の色は白と桃色で、ふんわりとしたスカート姿だと聞いています。とてもじゃないが悪人には見えないというだけでなく、ティーツィアではないかとか、異国の姫様ではないかとか、いろいろ噂が広まっていてね」
これ、通信で聞いていた衣装と同じだ。
ニホンではこういう衣装の魔法少女が人気らしい。
魔人であることを隠して生きていかなければならない、この世界とは大違いだ。
いずれにせよ、ココロであることは間違いない。
「たとえティーツィアであっても、そんなに露骨に姿を現すのは不思議ですね」
ココロは何を考えているのだろう。
自分が、ティーツィアが、ここにいるというアピールだろうか。
「それに、最近はこの署の近くに現れるようになりましてね、警察署の関係者ではないかとか、警察署の偵察をしているのではないかとか言われていて、我々も対応に追われているのですよ。なので、今は情報をいただいても活用できる時間がなくてね」
「それは大変ですね。それでは時間を置いてから情報はお持ちしましょう。あ、さっきの子は自分はティーツィアだって言っていたのですよね。あの子の仕業ということはないのですか?」
「あの子を住まわせている古い宿直室をこっそり捜索したのですが、そんな衣装は出てきませんでした。ま、もっと疑わしい状況になればみっちり取り調べますがね」
「何があってもティーツィアの人が名乗り出てくることはないでしょうから、あの子は関係ないかもしれませんね」
助けられない代わりに、一応彼女をかばっておいた。
それにしても、ココロは何をやっているのだろう。
我々のようなある程度の組織でも手を出さないようにしているのだから、もしこの街に俺の知らないティーツィアがいても、彼女を助けようとはしないだろう。
ココロはティーツィアが仲間を必ず助ける善意の存在だと思っているのかもしれないが、我々は自分を、同胞を守ろうとしているだけだ。無条件の善意など、どこの世界にもない。
それに、困ったことになった。
ある意味彼女を見捨てる形になってしまったので、もし彼女の嫌疑が完全に晴れたらだが、せめてもの罪滅ぼしに俺の商会で雇っても危険ではないかもしれないと、思い始めていたところだ。
しかし、こんな派手なことをするような子では、身近に置いてはおけない。
次の集会では、彼女は様子見どころか警戒対象だと、みんなに報告しておこう。
せっかく居住や交流の自由を手に入れたのに、ティーツィアに対する締め付けが厳しくなってはかなわない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
魔法少女の姿を見せ続けたので、そろそろティーツィアの耳に届いてもいい頃だ。警察署内でも慌ただしい動きが感じられる。
宿直室内を捜索された気配もある。もちろん、魔法少女コスチュームが見つかるはずはない。
昼間は仕事に励み、夜は作戦に励む。
そうして、その日がやってきた。
今までは警察署からすこし離れた場所を選んで瞬間移動していたのを、警察署の近くへと場所を変える。
警察署に目が行くようにという、我ながら高度な作戦だ。高度だよね?
「トランスフォルマーレ! ムーヴェンズ!」
「あ、噂のあの子だわ」
「顔を見せろ!」
監視の目もあるので、一瞬で宿直室に戻る。
それを毎日繰り返す。
「トランスフォルマーレ! ムーヴェンズ!」
「ホントにいたんだ! こんな衣装見たことない!」
「衣装からは、悪い子には見えないわね」
「トランスフォルマーレ! ムーヴェンズ!」
「こんな警察署近くに現れたぞ!」
「どこかのお姫様かな? あの服、近くで見せてくれないかな」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
注文された品がそろったので、俺はシカーワの警察署に納品に出かけた。
「カハラ署長、ご注文本当にありがとうございました。多くのご注文をいただいたので、商品を揃えるのに時間がかかってしまい、申し訳ありませんでした」
「いやいやムラシンさん、こちらもいただいた情報はとても役に立ちました」
「それはよかったです。申し訳ないのですが、商品を集めるのに手間取ってしまい、今日はあんまり情報がなくて」
「全然構いませんよ、それというのもですね」
そう署長が言いかけたときに、ノックの音が聞こえた。
「フジガヤ君か、入りたまえ」
「失礼します」
あのティーツィアの子が、お茶を持って入ってきた。
まだここで働いていたのか。
この前の集会で様子見以外しないと決めた子なので、ちょっと申し訳ない。
あんなにやつれた顔をしていたのに。
やつれた? いや、今日はそんな印象は受けない。
むしろ元気そうに見える。何かあったのか?
あのココロという子が退出し、署長が再び口を開いた。
「ムラシンさん、あの子の顔を見ていたようですが、あの子のことは何かわかりましたか?」
「すみません、あの子の情報は掴めていません。商人仲間も知らないようなのです。それより署長、何かおっしゃりかけていましたが」
「それなんですけどね、最近この街に、魔人が頻繁に姿を現しているのですよ」
「魔人が? マールムの残党ですか?」
「いや、それがいつも一瞬で力で移動してしまうので、正体が掴めないのですよ。わかっているのは、どうやら女の子で、ひらひらの衣装を着ていることくらいです」
「ということは、同一人物なのですか」
「顔を手で隠しているので、はっきりしません。でもあんな変わった服を着ている人間はそうそういないでしょうから、我々は同一人物だと考えています」
「何か悪さをしているのですか?」
「それがただ姿を見せては、すぐに消えて、ほかの場所に現れているのですよ」
「服装に何か特徴はありませんか?」
「服の色は白と桃色で、ふんわりとしたスカート姿だと聞いています。とてもじゃないが悪人には見えないというだけでなく、ティーツィアではないかとか、異国の姫様ではないかとか、いろいろ噂が広まっていてね」
これ、通信で聞いていた衣装と同じだ。
ニホンではこういう衣装の魔法少女が人気らしい。
魔人であることを隠して生きていかなければならない、この世界とは大違いだ。
いずれにせよ、ココロであることは間違いない。
「たとえティーツィアであっても、そんなに露骨に姿を現すのは不思議ですね」
ココロは何を考えているのだろう。
自分が、ティーツィアが、ここにいるというアピールだろうか。
「それに、最近はこの署の近くに現れるようになりましてね、警察署の関係者ではないかとか、警察署の偵察をしているのではないかとか言われていて、我々も対応に追われているのですよ。なので、今は情報をいただいても活用できる時間がなくてね」
「それは大変ですね。それでは時間を置いてから情報はお持ちしましょう。あ、さっきの子は自分はティーツィアだって言っていたのですよね。あの子の仕業ということはないのですか?」
「あの子を住まわせている古い宿直室をこっそり捜索したのですが、そんな衣装は出てきませんでした。ま、もっと疑わしい状況になればみっちり取り調べますがね」
「何があってもティーツィアの人が名乗り出てくることはないでしょうから、あの子は関係ないかもしれませんね」
助けられない代わりに、一応彼女をかばっておいた。
それにしても、ココロは何をやっているのだろう。
我々のようなある程度の組織でも手を出さないようにしているのだから、もしこの街に俺の知らないティーツィアがいても、彼女を助けようとはしないだろう。
ココロはティーツィアが仲間を必ず助ける善意の存在だと思っているのかもしれないが、我々は自分を、同胞を守ろうとしているだけだ。無条件の善意など、どこの世界にもない。
それに、困ったことになった。
ある意味彼女を見捨てる形になってしまったので、もし彼女の嫌疑が完全に晴れたらだが、せめてもの罪滅ぼしに俺の商会で雇っても危険ではないかもしれないと、思い始めていたところだ。
しかし、こんな派手なことをするような子では、身近に置いてはおけない。
次の集会では、彼女は様子見どころか警戒対象だと、みんなに報告しておこう。
せっかく居住や交流の自由を手に入れたのに、ティーツィアに対する締め付けが厳しくなってはかなわない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
魔法少女の姿を見せ続けたので、そろそろティーツィアの耳に届いてもいい頃だ。警察署内でも慌ただしい動きが感じられる。
宿直室内を捜索された気配もある。もちろん、魔法少女コスチュームが見つかるはずはない。
昼間は仕事に励み、夜は作戦に励む。
そうして、その日がやってきた。
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