男が希少種ってマ?

黒井白馬

文字の大きさ
12 / 134
第1章 - 6歳の章

12. 初遭遇

 色々回っていたら、お昼ご飯の時間になった。
 なので、ママンと一緒にフードコートでご飯を食べることにした。

 勿論、ギオンモールの中には飲食店も入っている。
 「サリゲナイヤ」や「かま寿司」のような有名チェーンから「Neck Pasta」や「まる吉」のような他のところにはないお店まで、色々と揃っている。
 どれも美味しそうだ。

 ……が、俺たちはそのどれにも入らなかった。

 その理由は、東さんたちからのお願いがあったから。
 なんでも、飲食店の中は護衛がやりづらいそうだ。
 まぁ、洋服店とかならウィンドウショッピングしてる客のフリができるけど、飲食店だとそれができないからね。
 飲食店に入って何も注文しないのは不自然だし、注文しても食べないのはもっと不自然だ。
 食べたら食べたで注意力が散漫になりやすいし、何より、無理に食べると咄嗟の判断や行動に支障が出る。
 一応、飲食店には男性専用の安全個室というものもあるのだが、そこに入った時点で男性確定なので、今の俺では使うことができない。
 なので、飲食店はパス。
 で、フルオープンなフードコートでご飯を食べることになった。

 俺が注文したのはお子様ランチ。
 メインはオムライスとハンバーグ、サイドはスパゲッティとウィンナー、付け合せは人参のグラッセとスイートコーン、デザートはプリン。
 もちろん、オムライスには小さな旗が刺さっている。
 お子様なら大喜びの、ド直球のお子様ランチだ。
 この幼い身体に引っ張らているのか、俺もちょっとテンションが上がってる。

「おいしい、ゆうちゃん?」
「うん。……でも、母さんの手料理ほどじゃないかな」
「あらあら、そうなのね~、うふふ~~」

 満面の笑みのママン。
 マジで、お世辞でもなんでもないよ。
 だって、うちのママン、調理師免許持ってるからね。
 俺を産んですぐの頃に、俺のために取ったらしい。
 ゆうちゃんには美味しくて栄養のある食事を食べてもらいたいから、だそうだ。
 どうしよう、ママンの愛がい……。

 ただ、そのおかげと言うか、そのせいと言うか、俺は外食をそこまで美味しいと思えなくなってしまった。
 我が家でもたまに冷凍食品やスーパーのお惣菜といった出来合いのものを食べることはあるし、時には出前を取ったりもする。
 が、どれもママンの味には叶わない。
 有名メーカーの冷凍チャーハンだろうが、コンビニのお弁当だろうが、宅配のピザだろうが、出前の中華だろうが、どれもママンが作った方が美味しいのだ。
 果たして、これは親子バフの為せる技か、それとも純粋にうちのママンが万能すぎるのか。
 とにかく、先程の褒め言葉は俺の本心だ。
 それでママンがここまで喜んでくれるなら、こちらとしても嬉しい限りである。

 見てみれば、ママンはニコニコしながらこちらを見つめている。
 自分の分のパスタには手を付けず、俺がお子様ランチをパクつくのをずっと眺めているのだ。
 いつものことなので慣れているが……今日は違う光景が目に映った。

 それは、ママンの背後。
 同じフードコートの反対側に座る、一組の親子だ。

 母親はキリリとした雰囲気の人だが、顔がニヨニヨと崩れている。
 まるで俺に行ってらっしゃいのハグをされた時のママンのような顔だ。
 そして、我が子を見つめる母親の目は、完全にトロけている。
 家にあるジムで運動する俺を眺めているときのママンとほぼ一緒だ。
 
 対する子供は、俺よりも少し年上で、10~12歳くらい。
 男女兼用ユニセックスな格好をしているが、体つきが明らかに女の子のそれじゃない。
 肩に丸みがなく、腰の位置も低い。こころなしか眉毛が濃く、顎のラインも角ばっている。
 一番の特徴は、常に何かに怯えるようにキョドキョドしているところだろうか。
 自分の存在を隠すように帽子を目深に被っているし、身体を丸めるようにして座っている。

 これ、完全に男の子だね。
 体つきもそうだけど、態度や仕草がネットで見た「男子の特徴」と一致している。

 初めて見たよ、生の男の子。
 テレビやネットだと本人の許可や規制が厳しいから、未成年の男子って殆ど映せないみたいだからね。
 
「ねぇ、東さん」
 
 無線機越しに、小声で東さんを呼ぶ。

『はい、何でしょうか』
「あっちのテーブルの子って、男の子だよね?」
『はい。別の隊が警護しております、隣の区在住の男児です』
「あの子とお話してもいい?」

 そう尋ねると、東さんの声が一瞬だけ途切れた。

『……できれば、お控えください』

 言いにくそうに、東さんが続ける。

『当該男児は、既に周囲から注目を集めております。ここで裕太様が接触すれば、裕太様にも注目が集まることでしょう』
「……でもさ、僕とあの子がこうして同じ日にここに来たのってさ、男の子同士でお友達になれたらいいなって、東さんたちも思っているからでしょ?」

 これは俺の分析というか、憶測だが。
 国も、できるだけ男性同士で交流を持ってほしい、と考えているのではないだろうか。

 男性は貴重な存在で、周囲の女性から囲われる傾向にある。
 小さい頃から「女は狼だ」「外に出るのは危険だ」と教え込まれるので、男性は警戒心がかなり強い。
 ……その教えが結構正しかったりするところが悲しいが、それはともかく。
 その教えに加えて、男性は肉体的にも精神的にも繊細な傾向にある。
 なので、男性は年齢問わず、積極的に他者と関わろうとしない。
 大体が自宅にこもり、読書や編み物などのインドアでセルフな趣味に興じている。
 それはネット上でも同じだ。
 男性垢だとバレるとすぐに群がられるので、SNS上でも男だと公開できない。
 どのプラットフォームでも、男性は鍵垢のROM専だ。
 そうなると必然、男性同士での繋がりは作れず、交流もできない。

 俺がそのいい例だ。
 家から一歩も出してもらえない俺は、他の男どころか、他の人間にすらほぼ会ったことがない。
 ネットで「男仲間」を探そうにも、鍵垢にしていない男はほぼ皆無。
 これでは、男同士で交流を持てる方がオカシイだろう。
 
 多分、国としても、現状はよろしくないのだろう。
 だから、こうして今日のこの「出会い」を仕組んだ。

 考えてみれば簡単なこと。
 そもそも男児が外に出ること自体、普通ではあり得ないこと。
 そんな男児が二人、同じ日に、同じ時間帯に、同じショッピングモールに来ているのだ。
 これが偶然なわけがないだろう。

 そう考えたからこそ、俺は東さんに「そういうことでしょ?」と確認したのだ。


『……………………裕太様は、本当に聡明でいらっしゃいますね』

 かなりの間が空いてから、東さんは俺の言葉に肯定を返した。

『どうかお気をつけください。
 彼は、その態度や仕草で、既に周囲から男性疑惑を持たれております。
 下手をすれば騒動に発展してしまいますので、言動にはくれぐれもご注意ください』
「わかった。ありがとうね、東さん」
『……裕太様をお守りするのが私達の役目ですので』

 そう言った東さんの声は、心做しか普段よりも幾分柔らかく感じた。
 

 さて。

「初めてのお友達をつくりに行こっか」

 ハラハラしているママンにそう告げて、俺は席から立ち上がった。
感想 5

あなたにおすすめの小説

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら

普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。 そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。

貞操逆転世界に転生してイチャイチャする話

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が自分の欲望のままに生きる話。

男女比の狂った世界で俺だけ美醜逆転してるんだが…。

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、青山春。 日本によく似たパラレルワールド(男女比1:9)で彼女を作るために色々する物語。 前世の記憶のせいで、俺だけ美醜が逆転してしまっているので、この世界で可愛いと言われている子達には興味がない…。 うん。ポジティブに考えれば、前世で女優やモデルを出来る容姿の子とお付き合いできるのでは!? と、幼少期に光〇氏計画を実行しようとするも断念。 その後は勉強出来るのおもしれぇ! 状態に陥り、時が流れ大学に入学。 そこで義務を思い出し二十歳までに彼女が欲しい!いなきゃしんどい!と配信を始めてみたり…。 大学の食堂で出会った美人とお近づきになろうとしたり…! 作者が暗い話が嫌いなので、基本的に明るめの話構成になってるはずです。

男が少ない世界に転生して

美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです! 旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします! 交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?