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第1章 - 6歳の章
21. Side 東春美:緊急事態
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無線から聞こえてくる裕太様と健吾様の会話は、とても和やかなものだった。
裕太様が終始会話をリードしていて、健吾様はそんな裕太様に嬉しそうに返事していた。
……栗林が『裕太様の年下攻めと見せかけて実は健吾様の誘い受け!?』とか意味わからないことを喚いていたが、後で叱っておこう。
あと、『わ~お、一発でけんぴ堕とすとか、ゆっぴやるじゃーん』とか呟いていた姫原も同罪だな。
任務中に何をやっているのやら。
そうして呆れていると、
『マズいわ!』
無線から田代の切羽詰まった声が聞こえてきた。
『コード・ブラックよ!』
コード・ブラック。
意味するところは、「暴徒による襲撃」。
コード・レッドの一段階上で、考えうる限り最悪の事態だ。
モールの吹き抜けの2階から見下ろせば、フードコートの周辺から複数の女性が裕太様たちへと殺到していた。
どうやら、予想していた最悪の事態が起きてしまったらしい。
『総員、緊急避難体制!
プランE8!
脱出ルート2-8!
スタンガンとテイザー銃の使用を許可する!』
田代が矢継ぎ早に命令を飛ばす。
自分の隊に向けた命令だが、こちらの無線からもそれが聞こえる。
逼迫した状況だからか、それとも情報共有のために敢えてそうしているのか。
とにかく、事態は一刻を争う。
『東、そっちはそっちでなんとかして!』
そう言い残して、L261隊との通信が途絶えた。
『裕太様!』
なにはともあれ、先ずは裕太様と綾様に警告しないと。
『緊急事態です! 今すぐその場から離れてください!』
今の状況でうちの隊を大々的に動かせば、裕太様が男性だとバレてしまう。
であれば、ここは綾様に裕太様を連れ出された方が安全だ。
事前説明で、そういった状況への対処法や偽装プランは教えてある。
綾様であれば上手くやってくれるだろう。
我々が大きく動くのは、それでもダメだった時だ。
見れば、綾様は一秒の逡巡もなく、裕太様を引っ張って立ち上がらせた。
そのまま健吾様たちから遠ざかる。
「聞こえていたな!
各員、安全避難配置!
プランE2!
ルート3-1から脱出せよ!」
私の指示を聞いて、フードコートの東側で待機していた戸田と天堂が無言で動いた。
二人で綾様の動線を確保し、そのままフードコートの外まで誘導する。
お二人のそばに潜んでいる宮野と姫原は、裕太様へと向けられる視線を身体でさり気なく塞いでいる。
実に見事な連携だ。
誰も裕太様に注目していない。
『ちょっ、ちょっと待って! どういうこと、東さん?』
無線から、裕太様の困惑しきった声が聞こえる。
聡明な裕太様であれば、説明を後回しにするよりも、手早く説明してやった方が混乱は収まるだろう。
「女児を中心とした女性たちが、周囲から集まってきております」
『なんで?』
「健吾様が男性だとバレました。恐らく、すぐにでも囲まれるでしょう」
敢えて、真実とは少しだけズレた答えを返す。
一刻を争う状況なので、説明は簡潔に済ませたい。
それに、健吾様の過失にして裕太様をいち早く健吾様から引き離したい、という思惑もある。
なにより、裕太様が避難に専念できるようにしたかった。
ここで「周囲から女児と思われている裕太様が健吾様に接触したから周囲が暴走した」などという真実を伝えれば、裕太様は混乱なさる。
それで避難が遅れては元も子もない。
『えっ、警護の人たちは? 健吾くんにも東さんたちみたいな警護員が付いてるんでしょ?』
「はい。ただいま健吾様を避難させている最中です」
そう言うと、裕太様は安心したのか、黙々と綾様に連れられて行った。
私も、全体が見渡せるモールの2階から地下駐車場まで移動する。
お二人を乘せてきた男性専用車両を起動すると、二人が乗り込んだのを確認して、そのまま出発した。
他の隊員は、栗林が乗っている偽装指揮車両に乗り込んで、私達の後ろを付いてきている。
……ふぅ。
これで、一先ずは危機を脱せるだろう。
裕太様が終始会話をリードしていて、健吾様はそんな裕太様に嬉しそうに返事していた。
……栗林が『裕太様の年下攻めと見せかけて実は健吾様の誘い受け!?』とか意味わからないことを喚いていたが、後で叱っておこう。
あと、『わ~お、一発でけんぴ堕とすとか、ゆっぴやるじゃーん』とか呟いていた姫原も同罪だな。
任務中に何をやっているのやら。
そうして呆れていると、
『マズいわ!』
無線から田代の切羽詰まった声が聞こえてきた。
『コード・ブラックよ!』
コード・ブラック。
意味するところは、「暴徒による襲撃」。
コード・レッドの一段階上で、考えうる限り最悪の事態だ。
モールの吹き抜けの2階から見下ろせば、フードコートの周辺から複数の女性が裕太様たちへと殺到していた。
どうやら、予想していた最悪の事態が起きてしまったらしい。
『総員、緊急避難体制!
プランE8!
脱出ルート2-8!
スタンガンとテイザー銃の使用を許可する!』
田代が矢継ぎ早に命令を飛ばす。
自分の隊に向けた命令だが、こちらの無線からもそれが聞こえる。
逼迫した状況だからか、それとも情報共有のために敢えてそうしているのか。
とにかく、事態は一刻を争う。
『東、そっちはそっちでなんとかして!』
そう言い残して、L261隊との通信が途絶えた。
『裕太様!』
なにはともあれ、先ずは裕太様と綾様に警告しないと。
『緊急事態です! 今すぐその場から離れてください!』
今の状況でうちの隊を大々的に動かせば、裕太様が男性だとバレてしまう。
であれば、ここは綾様に裕太様を連れ出された方が安全だ。
事前説明で、そういった状況への対処法や偽装プランは教えてある。
綾様であれば上手くやってくれるだろう。
我々が大きく動くのは、それでもダメだった時だ。
見れば、綾様は一秒の逡巡もなく、裕太様を引っ張って立ち上がらせた。
そのまま健吾様たちから遠ざかる。
「聞こえていたな!
各員、安全避難配置!
プランE2!
ルート3-1から脱出せよ!」
私の指示を聞いて、フードコートの東側で待機していた戸田と天堂が無言で動いた。
二人で綾様の動線を確保し、そのままフードコートの外まで誘導する。
お二人のそばに潜んでいる宮野と姫原は、裕太様へと向けられる視線を身体でさり気なく塞いでいる。
実に見事な連携だ。
誰も裕太様に注目していない。
『ちょっ、ちょっと待って! どういうこと、東さん?』
無線から、裕太様の困惑しきった声が聞こえる。
聡明な裕太様であれば、説明を後回しにするよりも、手早く説明してやった方が混乱は収まるだろう。
「女児を中心とした女性たちが、周囲から集まってきております」
『なんで?』
「健吾様が男性だとバレました。恐らく、すぐにでも囲まれるでしょう」
敢えて、真実とは少しだけズレた答えを返す。
一刻を争う状況なので、説明は簡潔に済ませたい。
それに、健吾様の過失にして裕太様をいち早く健吾様から引き離したい、という思惑もある。
なにより、裕太様が避難に専念できるようにしたかった。
ここで「周囲から女児と思われている裕太様が健吾様に接触したから周囲が暴走した」などという真実を伝えれば、裕太様は混乱なさる。
それで避難が遅れては元も子もない。
『えっ、警護の人たちは? 健吾くんにも東さんたちみたいな警護員が付いてるんでしょ?』
「はい。ただいま健吾様を避難させている最中です」
そう言うと、裕太様は安心したのか、黙々と綾様に連れられて行った。
私も、全体が見渡せるモールの2階から地下駐車場まで移動する。
お二人を乘せてきた男性専用車両を起動すると、二人が乗り込んだのを確認して、そのまま出発した。
他の隊員は、栗林が乗っている偽装指揮車両に乗り込んで、私達の後ろを付いてきている。
……ふぅ。
これで、一先ずは危機を脱せるだろう。
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