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1.公衆の面前での婚約破棄
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祝賀モードであふれる学園の卒業パーティー。
その会場中央では、そんなお祝いモードにふさわしくない会話がなされていた。
「この学園の卒業という素晴らしい良き日ではあるが、僕はイルアとの婚約を破棄する」
私、公爵令嬢であるイルア、十八歳は、生まれもって婚約者とされていた自国の王子、マーティン、十八歳に婚約破棄を告げられていた。
元々、家が王家と結びつきが深く、王子と同じ歳の女児として生まれたことから決まった婚約だった。
そのため、幼い頃から、通常の教育に加え、王家に嫁ぐための訓練も受けてきた。
けれど、私は周囲の期待に応えられる人材ではなかった。
無能の、出来損ないだったのだ。
勉学も、王家に嫁ぐための訓練も、私はなかなか身につかなかった。
幼い頃から通っていた学園も、ギリギリで卒業できたくらいなのだから。
マーティン王子も、この学園で共に過ごすうちに、こんな出来損ないの私のことに嫌気がさしていたのだろう。
私は突然の婚約破棄に驚きはしたものの、その理由については容易に想像ついたため、すぐに腑に落ちたように笑った。
「わかりました。マーティン王子がそうおっしゃるのなら、この婚約を破棄してくださっていいですよ。ご期待に添えず、申し訳ございません」
最後の一言は、出来損ないの自分を少しでも申し訳なく思って出た言葉だった。
「おう。公爵家には僕の方から伝えておく」
マーティン王子は、少し面食らったように言うと、私に事務的にそう告げた。
終わった……。
マーティン王子から直々の婚約破棄だから、私に違約金の必要性が出ることなく、この婚約は解消されることになるのだ。
そう思うと、私の中にはつらさや悲しみではなく、ものすごい解放感で満たされた。
やっと、マーティン王子から解放される。
これまでずっと王子の婚約者としての目を向けられて、出来損ないの自分は肩身の狭い思いをして生きてきた。
けれど、これからはそんな思いをもうしなくていいんだ!!
安直にそう考えた私は、思わずその場でガッツポーズを取っていた。
顔を上げると、マーティン王子が不審なものを見るように私を見ていて、思わず直立してしまったが。
「まあ、そういうことだ。これからは自分の道を歩むがいい」
マーティン王子は少し不機嫌そうにそういうと、彼の取り巻きの彼女たちを引き連れて去っていった。
哀れみを含んだ周囲の視線は気になるが、私はその彼らの後ろ姿を見て、これで良かったと改めて思う。
というのも、マーティン王子は大の女好きで有名なのだ。顔もイケメンで、王子の名に恥じないくらいに学業は優れているが、それだけだ。
マーティン王子の女癖の悪さは学園内で密かに有名だった。
そんな人との婚約が解消されたことも、私にとっては好都合だった。
結ばれるのなら、私のことをちゃんと愛してくれる人と結ばれたい。
学園をギリギリで卒業して、さらにはマーティン王子に婚約破棄された令嬢という肩書を背負うことになった出来損ないの私に、そんな未来が訪れるのかはわからないが。
私はこれ以上哀れみの目を向けられないように、そのあとは何事もなかったように卒業パーティーのご馳走を食べまくったのだった。
その会場中央では、そんなお祝いモードにふさわしくない会話がなされていた。
「この学園の卒業という素晴らしい良き日ではあるが、僕はイルアとの婚約を破棄する」
私、公爵令嬢であるイルア、十八歳は、生まれもって婚約者とされていた自国の王子、マーティン、十八歳に婚約破棄を告げられていた。
元々、家が王家と結びつきが深く、王子と同じ歳の女児として生まれたことから決まった婚約だった。
そのため、幼い頃から、通常の教育に加え、王家に嫁ぐための訓練も受けてきた。
けれど、私は周囲の期待に応えられる人材ではなかった。
無能の、出来損ないだったのだ。
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私は突然の婚約破棄に驚きはしたものの、その理由については容易に想像ついたため、すぐに腑に落ちたように笑った。
「わかりました。マーティン王子がそうおっしゃるのなら、この婚約を破棄してくださっていいですよ。ご期待に添えず、申し訳ございません」
最後の一言は、出来損ないの自分を少しでも申し訳なく思って出た言葉だった。
「おう。公爵家には僕の方から伝えておく」
マーティン王子は、少し面食らったように言うと、私に事務的にそう告げた。
終わった……。
マーティン王子から直々の婚約破棄だから、私に違約金の必要性が出ることなく、この婚約は解消されることになるのだ。
そう思うと、私の中にはつらさや悲しみではなく、ものすごい解放感で満たされた。
やっと、マーティン王子から解放される。
これまでずっと王子の婚約者としての目を向けられて、出来損ないの自分は肩身の狭い思いをして生きてきた。
けれど、これからはそんな思いをもうしなくていいんだ!!
安直にそう考えた私は、思わずその場でガッツポーズを取っていた。
顔を上げると、マーティン王子が不審なものを見るように私を見ていて、思わず直立してしまったが。
「まあ、そういうことだ。これからは自分の道を歩むがいい」
マーティン王子は少し不機嫌そうにそういうと、彼の取り巻きの彼女たちを引き連れて去っていった。
哀れみを含んだ周囲の視線は気になるが、私はその彼らの後ろ姿を見て、これで良かったと改めて思う。
というのも、マーティン王子は大の女好きで有名なのだ。顔もイケメンで、王子の名に恥じないくらいに学業は優れているが、それだけだ。
マーティン王子の女癖の悪さは学園内で密かに有名だった。
そんな人との婚約が解消されたことも、私にとっては好都合だった。
結ばれるのなら、私のことをちゃんと愛してくれる人と結ばれたい。
学園をギリギリで卒業して、さらにはマーティン王子に婚約破棄された令嬢という肩書を背負うことになった出来損ないの私に、そんな未来が訪れるのかはわからないが。
私はこれ以上哀れみの目を向けられないように、そのあとは何事もなかったように卒業パーティーのご馳走を食べまくったのだった。
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