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8.王子、再び現る。
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敵国との一件があってから、私も正式に団員として一緒に訓練を受けることが増えた。
そんな中、マーティン王子率いる王家の人たちが突然私たちの公爵家を訪れた。
現在、マーティン王子は公爵家の応接室に招かれる形で父親と話しているが、一体、どのようなやり取りがなされているのだろう。
とてもじゃないけれど、突然婚約破棄を言い渡して来た上に、直後私を裏で襲わせようと企んでいたような王子だ。気が気でない。
団長以外は、公爵家の敷地内で稽古だったために、私も一緒に稽古を受けていたが、今日は今までにないくらいに身が入らなかった。
「おい、ちゃんとやれよ」
私が稽古に身が入っていないことに、さすが私の稽古をいつも見てくれているルキには見抜かれてしまったようだ。
「あ……ごめんなさい」
「……気になるのか? 王子のこと」
「え……?」
「王子が直々に公爵家に訪れたから、気が気じゃないんだろ?」
確かにそうだけど、何となく「うん」と言うことに罪悪感を覚えてしまうのはどうしてだろう?
私が言葉に詰まったからだろう。
ルキは肩で息をついて、小さく言い放った。
「俺に遠慮すんなよ。とりあえず、気持ち切り替えるためにも顔でも洗ってこいよ」
「……ごめんね」
ルキに背を向けて、私は顔を洗いに行くでもなく、公爵家の中庭に来ていた。
何となく落ち着かないままその場に立ち尽くして、どれくらい経ってからだろう。
「イルア……?」
私を呼ぶ低い声が耳に届いた。
振り返ると、すぐそばにマーティン王子が私を見つめて立っていた。
「……マーティン王子、ごきげんよう」
私は姿勢を正して、社交辞令の挨拶を交わす。
マーティン王子は眉を下げて笑うと、まじまじと私を見て口を開いた。
「改まらなくていい。それにしても、本当によくなったな」
「ありがとうございます」
「そこでだが、実は、公爵には今しがた話をしてきたのだが、イルアにも話しておこう」
「……はい」
「イルアとの婚約取消をなかったことにできないだろうか。イルアの父親には、イルアの気持ち次第だと返事をもらったのだが」
「……え?」
かつては私には見せたことのなかった甘ったるい優しい表情で、この王子は一体何を言うのだろうか。
「イルアの騎士としての努力は聞かせてもらった。ものすごい上達を見せているそうじゃないか。実に僕の妃にふさわしい」
「そんな、とんでもないです。出来損ないの私にマーティン王子の妃なんて務まりません」
そもそもこの王子は、出来損ないだった私に公衆の面前で婚約破棄を言い渡してきたのだ。
今更そんなことを言われても、とてもじゃないけど、マーティン王子との婚約解消をなかったことにしたくない。
お父様との話し合いの結果、私の気持ち次第だと話したのであれば……。
「そんなことない。努力家のきみなら、きっと務まるさ。ほら、本当は、僕の妃になりたくてたまらなかったんだろう?」
けれど、私の気持ちなんて建前だけだ。
YES以外の答えは受け付けないとばかりにこちらに迫ってくるマーティン王子の目からはどこか狂気を感じて思わず後ずさった。
すぐ後ろにあった大木に背中から首ぶつかって、私は逃げ場を失った。
一気にこちらに距離を詰めるマーティン王子に顎を掴まれて、私は思わず身を強張らせて目を固く閉じた。
そんな中、マーティン王子率いる王家の人たちが突然私たちの公爵家を訪れた。
現在、マーティン王子は公爵家の応接室に招かれる形で父親と話しているが、一体、どのようなやり取りがなされているのだろう。
とてもじゃないけれど、突然婚約破棄を言い渡して来た上に、直後私を裏で襲わせようと企んでいたような王子だ。気が気でない。
団長以外は、公爵家の敷地内で稽古だったために、私も一緒に稽古を受けていたが、今日は今までにないくらいに身が入らなかった。
「おい、ちゃんとやれよ」
私が稽古に身が入っていないことに、さすが私の稽古をいつも見てくれているルキには見抜かれてしまったようだ。
「あ……ごめんなさい」
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「え……?」
「王子が直々に公爵家に訪れたから、気が気じゃないんだろ?」
確かにそうだけど、何となく「うん」と言うことに罪悪感を覚えてしまうのはどうしてだろう?
私が言葉に詰まったからだろう。
ルキは肩で息をついて、小さく言い放った。
「俺に遠慮すんなよ。とりあえず、気持ち切り替えるためにも顔でも洗ってこいよ」
「……ごめんね」
ルキに背を向けて、私は顔を洗いに行くでもなく、公爵家の中庭に来ていた。
何となく落ち着かないままその場に立ち尽くして、どれくらい経ってからだろう。
「イルア……?」
私を呼ぶ低い声が耳に届いた。
振り返ると、すぐそばにマーティン王子が私を見つめて立っていた。
「……マーティン王子、ごきげんよう」
私は姿勢を正して、社交辞令の挨拶を交わす。
マーティン王子は眉を下げて笑うと、まじまじと私を見て口を開いた。
「改まらなくていい。それにしても、本当によくなったな」
「ありがとうございます」
「そこでだが、実は、公爵には今しがた話をしてきたのだが、イルアにも話しておこう」
「……はい」
「イルアとの婚約取消をなかったことにできないだろうか。イルアの父親には、イルアの気持ち次第だと返事をもらったのだが」
「……え?」
かつては私には見せたことのなかった甘ったるい優しい表情で、この王子は一体何を言うのだろうか。
「イルアの騎士としての努力は聞かせてもらった。ものすごい上達を見せているそうじゃないか。実に僕の妃にふさわしい」
「そんな、とんでもないです。出来損ないの私にマーティン王子の妃なんて務まりません」
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今更そんなことを言われても、とてもじゃないけど、マーティン王子との婚約解消をなかったことにしたくない。
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「そんなことない。努力家のきみなら、きっと務まるさ。ほら、本当は、僕の妃になりたくてたまらなかったんだろう?」
けれど、私の気持ちなんて建前だけだ。
YES以外の答えは受け付けないとばかりにこちらに迫ってくるマーティン王子の目からはどこか狂気を感じて思わず後ずさった。
すぐ後ろにあった大木に背中から首ぶつかって、私は逃げ場を失った。
一気にこちらに距離を詰めるマーティン王子に顎を掴まれて、私は思わず身を強張らせて目を固く閉じた。
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