魔法公証人~ルロイ・フェヘールの事件簿~

紫仙

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第五章 ノーヴォヴェルデ ~無権代理人~

新種のアンデッド

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 ディエゴと別れて
 どれほど経ったのだろうか。
 カンテラをもって迷路のような
 地下通路をさまよう事数時間。
 ドルップ商会へ至る出口どころか、
 他の地上へ至る出口も見当たらない。

「これは、迷いましたか……」

 引き返そうにも、
 どこをどう曲がったか、
 あまりに多すぎて覚えていない。
 かえって中途半端に戻る方が遭難して
 野垂れ死にする可能性が高い気がする。
 それならば腹を括って広い通路を
 道なりに進んだ方がどこか
 開けた場所に出られるだろうと、
 ルロイは突き進んで行く。

 そして、
 地上ではないが開けた場所に、
 ルロイはようやく出ることができた。

「ここは……」
 
 カンテラの光をあたりに振りかざす。
 洞窟のようにも見えるが、
 地下に埋まったダンジョンのようだ。
 その中でルロイは、
 朽ち果てた看板を見つける。

『冥府の泉 最深部』

 ダンジョン冥府の泉。
 随分前にネクロマンサーの少女
 アナがこのダンジョンで
 薔薇石ローゼスストーンを拾ったことをきっかけに
 ルロイもその石を巡る事件に
 巻き込まれたことを思い出す。
 あの時と比べても、
 人もモンスターの数は
 減ってしまっているので、
 そろそろ本当に
 廃ダンジョンとなる見通しだとか、
 場末が極まった穴だらけの
 このダンジョンを見て
 そんな噂を思い出す。
 もはや冒険者はおろか、
 スケルトンの一体もいない
 であろうと思っていた矢先、
 遠くから松明を持った二人組が、
 近づいてくる。
 ドルップ商会の手のものかと、
 思わずルロイは護身用のチンクエデアに、
 手をかけ息を殺す。
 光が近くなってゆく。

「オラッハー、ロイじゃねぇか!」

「うっす、久しぶりロイのあんちゃん」

 誰かと思えば、
 ギャリックとアシュリーだった。

「おや、お二人は何故ここに」

「ギルドからの討伐依頼だよ」

「討伐、モンスターのですか?」

「おぅ、ケッコーな数のモンスターが
 群れで確認されたらしいんだ」

「結構な数の群れ……
 ひと昔なら前ならともかく、
 もはや攻略発掘され尽くしたここに、
 そんなに多くのアンデッドが
 残っているんですか?」

 ルロイは釈然とせず、
 疑問を口にする。

「俺も最初はそう思ってたんだがよ」

「市の参事会から直々に、
 いままでにない。
 新種のアンデッドが何体も
 ここで確認されたから
 それの調査で可能なら
 討伐しろっての依頼なんだ」

 あれからすっかり冒険者としての
 生き方に馴染んだアシュリーが、
 ルロイに自分たちの用向きを説明する。

「これはヤバそうな仕事な気がしてな。
 久々に俺の五感も滾る予感もしたんで、
 引き受けたってワケだ」

 モンスターの討伐依頼自体なら、
 珍しくもなんともない。
 一般的な害獣退治としての
 モンスターの討伐依頼なら
 本来、冒険者ギルドのテリトリーである。
 しかし、今回レッジョの行政主体である、
 市参事会がわざわざ直接の依頼主であり、
 ダンジョンとしてはほぼ終わっている
 『冥府の泉』で、新種の
 モンスターへの調査となると、
 ルロイもまた不穏なものを感じる。

「リックのオッサン。
 あくまで調査がメインなんだから、
 あんまし暴走すんなよな。
 本当にヤバそうなら、
 とっとトンズラするんだぜぇ」

「るせい。テメェこそ
 俺の足引っ張んじゃねいぞ」

「へぃへぃ、今のアタシは武者修行中。
 ギャリック先輩のもとで
 しっかり励ませてもらいますよぉ」

「わ~りゃいいんだよ」

「ところでロイのあんちゃんは、
 なんでここに」

「ええ、実はですね……」

 今度はルロイが説明をする番になった。
 モリーの依頼でドルップ商会を探って、
 地下道を通りここまで来てしまったが、
 ギャリックたちが探している、
 新種のモンスターとやらも、
 ルロイの依頼と何か関係が
 あるのであろうか。

「それを聞いてますます
 殺りがい出て来たぜぇ!」

 ギャリックは笑いを抑えつつも、
 血の臭いとヤバい雰囲気に敏い、
 戦闘狂特有の危ない目つきが
 更に危なくなってゆく。

「おい、アシュリー。
 俺はロイと一緒に行動して、
 ドルップ商会にカチコミ決めてぇぜ。
 このまま収穫なしじゃつまらねぇし、
 話しを聞く限りそこがクセェ!」

「話を無理やり物騒な方向に
 持ってゆかないで下さいよ」

 無駄だと分かっていても、
 一応ルロイはツッコんで見せる。

「ま~他にあてもないしね。
 ここは粗方探したけど、
 新種のモンスターどころか、
 アンデッドも死体さえないんだもん。
 キレイなもんだよ」

「死体さえない。それは妙ですね」

 アシュリーの発言に、
 ルロイは頭をひねる。
 死体から金品や装備品を剥いで行く
 冒険者なら珍しくもないが、
 死体そのものを誰かが
 持ち去ったというのは不可解だ。
 ルロイは数時間前の
 ディエゴの発言を思い出す。
 商会が運び込んでいるブツが、
 このダンジョンに放置された
 大量の死体だとしたら。
 
「分かりました。
 ここは手を組みましょう。
 今回は僕が考えているより、
 巨大な陰謀があるようです」

 どうやら想像していた藪蛇は、
 想像以上に邪悪なものらしい。
 ルロイは素直にギャリックの
 提案に載った。

「ヒャァ、決まりだな」

「うっす!よろしくな」
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