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第五章 ノーヴォヴェルデ ~無権代理人~
植物ゾンビ
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道中、三人で注意しながら、
冥府の泉から地下道に、
引き返し今度は迷わないよう、
ドルップ商会へと進んで行く。
「にしても、こりゃあ……
街の下に巨大な迷路いや、
ダンジョンがあるみたいなもんだな~」
マッピングを担当しているアシュリーが、
地図を確認しつつ感嘆している。
「この地下通路こそ、
レッジョがダンジョン都市と呼ばれる
最大の理由かもしれませんね」
こうなるともう、
どこからがダンジョンという境目も
曖昧になってしまって、
レッジョの街全体がダンジョンに、
覆われているようなものである。
「ダンジョンで盗掘野郎がいたら
ぶっ飛ばそうと
思っていたんだが、
本当に人っ子一人いやしねぇ」
さっきから退屈だとばかりに、
ギャリックが苛立っている。
さすがにこの狭い地下通路で、
長剣を振り回したりはしないが、
気が短いギャリックが、
発作的にやってしまわないか
ルロイは気が気ではない。
「ダンジョンの外壁を、
市内の地下道まで掘り進めるとは。
ここまで大規模な盗掘は、
僕も聞いたことがありません。
後で冒険者ギルドに報告しなくては」
がめつい冒険者がお宝目当てで
ダンジョンの外壁を掘り進めた
結果なのか、それとも地下通路側から
商会側が密かにトンネルでも掘っていた
か分からなかったが、
いずれにせよ盗掘行為は、
市の管轄であるダンジョンを
勝手に破損させる不法行為にあたる。
「ヒャァ、開けた場所に出れたぜ」
ようやく外の光らしきものが見えて、
更に進むと日に光の差し込む広い空間
へルロイたちはたどり着く。
「あう~、お日様が眩しい」
アシュリーは顔に手をかざして、
顔をしかめるも、
日光浴がまんざらでもない様子
で声を弾ませる。
「ここは庭園かなにかでしょうか」
位置的にここはまだ地下なのだろう。
が、天井から大きな天窓が幾つか
設けられており、
日光が眩しく差し込んでくる。
日の光を受けて周囲には小さな
苔に覆われた樹木が、
無数に植えられている。
さしずめ地下に設けられた
樹木園と言ったところか。
それにしても、
奇妙な型の樹木だと、
三人はそれに近寄る。
「こ……これは」
奇妙な樹木に見えたのは、
なんと人間の死体だった。
よくよく見れば、
植物の蔦や根が絡まり、
半ば死体は植物の塊に
取り込まれている。
その中にはそれは見事な
鮮血色の大きな花を
生やしている個体もあった。
ルロイたちが近寄ったことで、
死体の何体かが突然目を見開く。
うめき声こそ上げないものの、
手足をばたつかせ体に絡んだ
蔦や枝、葉を衣擦れのように
引きずりながら
ルロイたちににじり寄って来る
様はまるで樹木が人間の真似事
をして襲い掛かって来るようであった。
「ポギャ、なんだこいつらぁ!」
「そりゃ、死体が動くんだから
ゾンビっしょ」
「ゾンビが花なんか生やすか?」
「う~ん、アタシもわかんね」
植物を生やしたゾンビの異様さに、
のんきに問答している二人に
ルロイがチンクエデアを構え、
「来ますよ!」
腕を伸ばして襲って来た、
一体の植物ゾンビにルロイが、
ゾンビの腕に斬りかかる。
「堅い!」
刃はゾンビの腕を両断することなく、
腕の半ばまで止まってしまう。
体が半ば植物化しているせいか、
植物ゾンビの腕は老木の幹のように
堅く人間相手のようにはゆかない。
「ヒャア、剣が繊維に
引っ掛かって抜けねぇ」
両手に片手剣を持ち、
複数の植物ゾンビを相手に、
立ち回るギャリックが、
忌々しく力任せに叩ききっている。
「人型で動いている以上、
繊維じゃなく筋肉の部分
だってあるはずさ」
長柄の槍を振り回し、
間合いを取りつつも、
体術に優れたアシュリーは、
ぎこちない動きの植物ゾンビを、
一体一体蹴散らしてゆく。
「そうですね、
そう言う事なら」
アシュリーの助言を受けて、
ルロイはケープを腕に巻き、
襲い来るゾンビの関節に、
ケープを巻き付け、
動きを封じた上で首を斬り落とす。
「単調な動きだ。
既に見切ったぜ」
ギャリックもまた、
ゾンビの動きと弱点を見切り、
関節や首を狙い、
激流のような二刀流で、
何体もの植物ゾンビを薪割りでも
するかように次々と屠って行く。
「それにしても、数が多い」
何体目かの植物ゾンビを、
ケープ術とチンクエデアの合わせ技で
倒したルロイが、
息を乱し額の汗を腕に巻き付いた
ケープで拭う。
「オイオイ、
本職事務職だからって、
チョット運動不足じゃねぇの?
ロイのあんちゃんよ」
まだ余裕のアシュリーが、
戦いながら軽口を叩く。
「肝に銘じておきますよ」
「ポギャルゥ!
これがラスいちぃ~!」
ギャリックが庭園に残った
最後の一体の首を両断し、
植物ゾンビを全て片付ける。
「ようやく体が
本調子になってきたぜぇ。
このまま今回の黒幕共に、
ご挨拶と洒落込もうぜぇ!」
ギャリックが上へと続く階段を
睨み好戦的に微笑む。
「ああ、悪者退治なんて、
腕が鳴るねぇ」
「遠回りになりましたが、
ようやくドルップを
追い詰めましたよ」
アシュリーとルロイが、
腹を括りギャリックに続いて
階段を駆け上る。
冥府の泉から地下道に、
引き返し今度は迷わないよう、
ドルップ商会へと進んで行く。
「にしても、こりゃあ……
街の下に巨大な迷路いや、
ダンジョンがあるみたいなもんだな~」
マッピングを担当しているアシュリーが、
地図を確認しつつ感嘆している。
「この地下通路こそ、
レッジョがダンジョン都市と呼ばれる
最大の理由かもしれませんね」
こうなるともう、
どこからがダンジョンという境目も
曖昧になってしまって、
レッジョの街全体がダンジョンに、
覆われているようなものである。
「ダンジョンで盗掘野郎がいたら
ぶっ飛ばそうと
思っていたんだが、
本当に人っ子一人いやしねぇ」
さっきから退屈だとばかりに、
ギャリックが苛立っている。
さすがにこの狭い地下通路で、
長剣を振り回したりはしないが、
気が短いギャリックが、
発作的にやってしまわないか
ルロイは気が気ではない。
「ダンジョンの外壁を、
市内の地下道まで掘り進めるとは。
ここまで大規模な盗掘は、
僕も聞いたことがありません。
後で冒険者ギルドに報告しなくては」
がめつい冒険者がお宝目当てで
ダンジョンの外壁を掘り進めた
結果なのか、それとも地下通路側から
商会側が密かにトンネルでも掘っていた
か分からなかったが、
いずれにせよ盗掘行為は、
市の管轄であるダンジョンを
勝手に破損させる不法行為にあたる。
「ヒャァ、開けた場所に出れたぜ」
ようやく外の光らしきものが見えて、
更に進むと日に光の差し込む広い空間
へルロイたちはたどり着く。
「あう~、お日様が眩しい」
アシュリーは顔に手をかざして、
顔をしかめるも、
日光浴がまんざらでもない様子
で声を弾ませる。
「ここは庭園かなにかでしょうか」
位置的にここはまだ地下なのだろう。
が、天井から大きな天窓が幾つか
設けられており、
日光が眩しく差し込んでくる。
日の光を受けて周囲には小さな
苔に覆われた樹木が、
無数に植えられている。
さしずめ地下に設けられた
樹木園と言ったところか。
それにしても、
奇妙な型の樹木だと、
三人はそれに近寄る。
「こ……これは」
奇妙な樹木に見えたのは、
なんと人間の死体だった。
よくよく見れば、
植物の蔦や根が絡まり、
半ば死体は植物の塊に
取り込まれている。
その中にはそれは見事な
鮮血色の大きな花を
生やしている個体もあった。
ルロイたちが近寄ったことで、
死体の何体かが突然目を見開く。
うめき声こそ上げないものの、
手足をばたつかせ体に絡んだ
蔦や枝、葉を衣擦れのように
引きずりながら
ルロイたちににじり寄って来る
様はまるで樹木が人間の真似事
をして襲い掛かって来るようであった。
「ポギャ、なんだこいつらぁ!」
「そりゃ、死体が動くんだから
ゾンビっしょ」
「ゾンビが花なんか生やすか?」
「う~ん、アタシもわかんね」
植物を生やしたゾンビの異様さに、
のんきに問答している二人に
ルロイがチンクエデアを構え、
「来ますよ!」
腕を伸ばして襲って来た、
一体の植物ゾンビにルロイが、
ゾンビの腕に斬りかかる。
「堅い!」
刃はゾンビの腕を両断することなく、
腕の半ばまで止まってしまう。
体が半ば植物化しているせいか、
植物ゾンビの腕は老木の幹のように
堅く人間相手のようにはゆかない。
「ヒャア、剣が繊維に
引っ掛かって抜けねぇ」
両手に片手剣を持ち、
複数の植物ゾンビを相手に、
立ち回るギャリックが、
忌々しく力任せに叩ききっている。
「人型で動いている以上、
繊維じゃなく筋肉の部分
だってあるはずさ」
長柄の槍を振り回し、
間合いを取りつつも、
体術に優れたアシュリーは、
ぎこちない動きの植物ゾンビを、
一体一体蹴散らしてゆく。
「そうですね、
そう言う事なら」
アシュリーの助言を受けて、
ルロイはケープを腕に巻き、
襲い来るゾンビの関節に、
ケープを巻き付け、
動きを封じた上で首を斬り落とす。
「単調な動きだ。
既に見切ったぜ」
ギャリックもまた、
ゾンビの動きと弱点を見切り、
関節や首を狙い、
激流のような二刀流で、
何体もの植物ゾンビを薪割りでも
するかように次々と屠って行く。
「それにしても、数が多い」
何体目かの植物ゾンビを、
ケープ術とチンクエデアの合わせ技で
倒したルロイが、
息を乱し額の汗を腕に巻き付いた
ケープで拭う。
「オイオイ、
本職事務職だからって、
チョット運動不足じゃねぇの?
ロイのあんちゃんよ」
まだ余裕のアシュリーが、
戦いながら軽口を叩く。
「肝に銘じておきますよ」
「ポギャルゥ!
これがラスいちぃ~!」
ギャリックが庭園に残った
最後の一体の首を両断し、
植物ゾンビを全て片付ける。
「ようやく体が
本調子になってきたぜぇ。
このまま今回の黒幕共に、
ご挨拶と洒落込もうぜぇ!」
ギャリックが上へと続く階段を
睨み好戦的に微笑む。
「ああ、悪者退治なんて、
腕が鳴るねぇ」
「遠回りになりましたが、
ようやくドルップを
追い詰めましたよ」
アシュリーとルロイが、
腹を括りギャリックに続いて
階段を駆け上る。
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