魔法公証人~ルロイ・フェヘールの事件簿~

紫仙

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第七章 竜使いの問題 ~停止条件~

罰則

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「いやぁいくら馬鹿とは言え、
 まさかここまで簡単に
 ホイホイ騙されてくれるとは!
 グハハ、楽しいひと時だったよ」

 ホークがこらえ切れずに
 馬鹿笑いを漏らす。

「てっ、テメェ!」

「チェックメイトだ。
 潔く退きたまえ。
 吾輩もこのお嬢さんを
 傷つけたくはないのでね」

「ビャアアア、テメェ!!
 どこまで腐ってやがる!」

 奥歯を噛み潰さんばかりに、
 ギャリックが歯ぎしりして
 ホークを睨む。

「なんとでも吠えたまえ、
 剣を振らずに勝てるならば、
 それが正解なのだよ」

罰則サンツィオーニ

 勝利宣言をするホークの腕の中で、
 怯えていたはずのアナの声が厳かに響く。

「フッ、フヒ!」

 眩い白い光が一閃したかと思うと、
 魔導士の小男が、
 狼狽えるた声を上げる。
 ホークが一瞬目を閉じ再び目を開くと、
 仲間の魔術師が仰向けにのびて、
 気絶している。

「こっ、これは一体!」

 そして気が付けば、
 拘束していたアナの姿がない。
 
「ホイホイ騙されるフリも疲れました。
 もう終わりましたけれど」

 いつの間にか、
 ホークの後方にたたずむアナが、
 いつぞやだったか、
 悪霊に取り付かれた自分を救ってくれた
 誰かのセリフを無意識に吐いて見せる。
 手にしたロッドには、
 霊魂と魔力を込めた白い光の塊が、
 じわじわと滾っていた。

「まっ、待ちたまえ……」

罰則サンツィオーニ!」

 ロッドから裁きの魔法が炸裂し、
 ホークが背後から勢いよく吹き飛ばされ、
 幹に顔面をぶつけそのまま
 あっけなくのびてしまっている。

「アヒャ……どいうこったい?」

 すっかりお株を奪われたギャリックが、
 脱力しながらアナに呟く。
 
「おーい、二人とも無事か?」

「その様子だと僕らの手助けは
 いらなかったみたいですね」
 
 ホークの仲間二人と戦っていた、
 アシュリーとルロイが追いつく。

「はい、無事解決です」

 アナが気絶したホークから、
 天泣グリードチェレステを手に取り、
 にっこり笑って見せる。

「今回のカラクリ。僕にも
 説明してくれませんかね?」

 アナがコクリと頷く。
 アナが見切った限りでは、
 ホークの仲間の魔導士は、
 眼鏡が回転するごとに、
 相手に幻術を掛ける術式を使っていた。
 幻術を解除するときは、
 回転に加え光が生じる。
 そんなオンオフのスイッチとして、
 螺旋の眼鏡は機能する。
 ただしこのマジックアイテムは、
 術に掛ける時に相手の全身を、
 自分の視界に入れる必要がある。
 アナが朽木の園で誰かの視線を何度か
 感じたのはこのためで、
 この仮説が正しければ、
 アナが不可解な視線の存在と、
 不自然な霊の動きを察知した時と、
 道に迷い、道を間違った時と、
 タイミングが合致する。
 術式の発動はマジックアイテムだが、
 使う媒体はダンジョン内の
 枯死した植物精霊ならば、
 死霊使いのテリトリーであった。
 あとは死霊の流れを目ざとく観察し、
 幻術に使われる死霊たちを、
 アナは逆に味方につけ
 螺旋眼鏡の魔導士の術を逆手にとって、
 敵も味方も騙しきったのだった。

 意識を取り戻したホークは、
 他の仲間三人と共に縄で縛られ、
 ルロイの尋問を受けていた。

「先ほどの説明の続きになりますが、
 故意の妨害が事実なら僕らは、
 条件を出したグラモフさんに、
 条件が成就したものと主張できます。
 この証書を使ってね」

「む、むう」

 事務的に証書を手に説明をするルロイに、
 ホークは苦々しく頷くばかりであった。

「真実の神ウェルスの名のもとに問う。
 汝ホークウッドはこちらの
 ダンジョン攻略の条件を知りつつ、
 意図的に条件成就の妨害をしたと
 認めるか」

「分かった降参だ。
 全て吾輩が指示したことだ」

 証書が白く輝き、
 ホークは負けを認めぐったり首を垂れる。
 後に白状するところによると、
 ホークたちは朽木の園を買い取り
 そこをツリーハウスとして再開発し、
 金持ち向けの宿泊施設として、
 運用するつもりでいた地主に
 雇われ動いていたのだそうな。
 先に天泣グリードチェレステを奪われそうになったので、
 仲間の幻術でルロイたちを惑わし
 その道中を妨害したのだと言う。



「お主らならやってくれると
 思っとったぞ!」

 一行は朽木の園の管理小屋まで戻り、
 天泣グリードチェレステを受け取ったグラモフ
 からもてなしを受けた。

「儂もそろそろ隠居を考える歳じゃあ。
 ドラゴンの住処でも観光地でも、
 このダンジョンは姉ちゃんの好きにせい」

 太っ腹にそう言い放つグラモフは、
 アシュリーの背中を叩き激励する。

「ありがとよ、じいさん。
 朽木の園は大切に使わせてもらうぜ」

 ダンジョンの新たな後継者として、
 しっかりやっていくとアシュリーは
 グラモフと固い握手を交わす。

「やった。たまに遊びに来てもいいかな?」

「おう、モリーや他の連中も連れて来いよ」

 我が事のように喜ぶをアナに、
 アシュリーは鷹揚に構えて見せる。

「とにかく、みんな今日はホント、
 アタシやフレッチたちのために
 ありがとうな。
 いつかこの礼はするからよ」

 ルロイやギャリックも、
 穏やかに頷く。

「さて、こうしちゃいられねぇ。
 まずはフレッチたちを迎えに
 いかねぇと。それが済んだら、
 ダンジョンの整備だよな……」

 ダンジョンでクエストを
 終えたばかりだと言うのに、
 アシュリーは既に次の行動に
 移るべく小屋を飛び出してゆく。

「気が早いですね」

「ヒヒャア、思い立ったらすぐ、
 それがあいつの良いとこさ」

 ギャリックが頼もしく笑って、
 アシュリーの背中を見守る。
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