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第八章 ダンジョンに種付けおじさん ~特別の損害~
シルキースライム
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「なーんで、この変態猟奇女の工房に
来なきゃならねぇんだよ!」
「それは、ご生憎様だねぇ。
私としても知性もセンスもない、
キミなんかの相手はしたかないからねぇ」
「んだと、ゴラァ!」
「まぁまぁ、種付けおじさんから
損害賠償をもぎ取るには、
どうしても彼女の協力が必要なんです。
どーか、ここは抑えて」
ルロイとその一行は深淵の鉱床を出た後、
アシュリーを連れて
リーゼの工房へ来ていた。
植物ゾンビの一件以来、
リーゼとアシュリーは面識があるのだが、
性格の真反対の両者は
噛み合わないばかりか
仇敵同士のようだった。
「この前だってテメェ、
アタシのダンジョンで妙な液体を
撒き散らしたろ!」
「あ?」
「そのせいで、虫型モンスターが
大量発生して荒らされまくったんぜい。
おい!」
「何を言うかと思えば、
最近死体を食い荒らすグールが
大量発生するというからグール退治を
手伝えと言ったのは君だろうに?
だから効率的かつ循環的に
グールやアンデッドを喰らう
ゾンビワームを引き寄せる
薬液を撒いてやったのさ!」
「おかげでダンジョン荒らされまくりだぜ。
今度はあのミミズ退治するのに
大変だったんぞ!ああ!!」
「だからセンスがないと言うのだよ。
ゾンビワームが土壌をも
掘り返したおかげで
水はけだって良くなったろうに、
おかげでキミのダンジョンの土壌は
随分豊かになったんじゃないかい?
ならむしろ、感謝してもらいたいねぇ」
「ぐぬぬ、この変態サイコ!
とにかくおの前やり方は過激だし
変なオプションつけるし!
とにかく気に入らねぇ!!」
因縁、浅からぬ二人が口論を
続けている様子を
ルロイはあたふたと宥めすかし、
ギャリックは面白おかしく対立を煽り、
アナはモリーといつも通り
和やかに談笑している。
アナは健気にも工房に寄ったついでに、
モリーの仕事を手伝っている。
この場に居ないディエゴはというと、
深淵の鉱床にて自らが食いきれなかった
ミツダケを採取しがめつくも
どこぞの道具屋へ
転売しに行ったのだった。
リーゼとアシュリーの口喧嘩は
益々ヒートアップしつつある。
「貴様もう許さん!
表出てアタシと勝負せいや!」
「あーだから、
そういう理性的じゃない煽り。
私は興味ないんだって……」
アシュリーを煽るのも飽きたと見え、
リーゼはルロイに向き直り
深淵の鉱床から持ち帰ったものを
しげしげと眺めている。後ろでは、
ギャリックに肩を押さえつけられ
ながらも自分を無視するリーゼに
食って掛ろうとする
アシュリーが腕をぐるぐる回して
何やら喚き散らしている。
「ミツダケねぇ……」
作業台に証拠となりそうな品々を
目の前にリーゼはまず
ダンジョンで採取した土を
薬液の入ったビーカーに突っ込んだ。
意外なことに、超レアものとされる
ミツダケを見てもリーゼは
いつものようにときめかないらしい。
「あまり、興味が湧きませんか?」
「前に見たことがあるんだ。
もう十年以上前になるか」
今度は土くれに混ざっていた
水晶の欠片のようなものを、
実験器具らしきガチャガチャした
レンズで観察しながらリーゼは呟く。
「やはり、シルキースライムだ。
これはそのスライム核の残骸さ」
「シルキースライム?」
「絹の様に白く滑らかな体を持つ
スライムの変異種
つまりはレアものさ。
そして、絹の様に希少だからこそ
この名が付いた」
「なるほど……」
「シルキースライムは鉱物のしみ込んだ
鉱山跡なんかに潜んでいるんだが、
大雨や洪水なんかで鉱山の立て坑に
水が浸入すると大量発生する事例が
古い資料で報告されている。
つまりどういうことか分かるかい?」
リーゼの後ろでは、
アシュリーがギャリックに
作業台を挟んで向かい合い、
腕相撲で負かされながらも
何度も挑戦して憂さを晴らしていた。
モリーはアナと喋り疲れてか
茶とお菓子を持ってきて今度は
ギャリックやアシュリーも交えて
歓談し始めた。
一方ルロイは渋い顔をして
考えあぐねていた。
シルキースライムが湿度や
土壌の水分が多い深淵の鉱床で
大量発生した事まではいい。
それとミツダケとの因果関係は
どこで繋がるのか。
もしや――――
ルロイの表情を見て、
悟ったリーゼが微笑む。
「そう、ミツダケが超レアものとされる
理由。それはそもそもこのレアもの
であるシルキースライムにのみ
寄生することで成長する特質ゆえなのさ」
「そのスライム核は、
ミツダケが生えていた土壌の
すぐ近くにありました。
ミツダケがシルキースライムの核に
寄生し成長するなら……」
ルロイは自ら持ち帰ったミツダケの
ツボの部分を指先で割いてみた。
「ご名答」
目を細めるリーゼの先には
ミツダケのツボに埋まっていたもう
片方のスライム核の破片だった。
「こっちのほうも、答えがでたようだ」
リーゼは先ほど土を入れた
ビーカーに目を移した。
ビーカーの中の薬液は
乳白色に輝いていた。
「この反応は、シルキースライムが
好む土壌だってことさ」
ルロイは目を輝かせる。
「ちょうど三か月ほど前だったかね。
レッジョは突然の台風に見舞われて
危うく洪水で街が水没しかけたっけ?
種付けおじさんとやらが現れたのは
ちょうどその台風の前日だったと
私は記憶してるんだがね」
リーゼがルロイにウィンクしてみせる。
ようやく、種付けおじさんを
仕留めるカードが出そろった。
来なきゃならねぇんだよ!」
「それは、ご生憎様だねぇ。
私としても知性もセンスもない、
キミなんかの相手はしたかないからねぇ」
「んだと、ゴラァ!」
「まぁまぁ、種付けおじさんから
損害賠償をもぎ取るには、
どうしても彼女の協力が必要なんです。
どーか、ここは抑えて」
ルロイとその一行は深淵の鉱床を出た後、
アシュリーを連れて
リーゼの工房へ来ていた。
植物ゾンビの一件以来、
リーゼとアシュリーは面識があるのだが、
性格の真反対の両者は
噛み合わないばかりか
仇敵同士のようだった。
「この前だってテメェ、
アタシのダンジョンで妙な液体を
撒き散らしたろ!」
「あ?」
「そのせいで、虫型モンスターが
大量発生して荒らされまくったんぜい。
おい!」
「何を言うかと思えば、
最近死体を食い荒らすグールが
大量発生するというからグール退治を
手伝えと言ったのは君だろうに?
だから効率的かつ循環的に
グールやアンデッドを喰らう
ゾンビワームを引き寄せる
薬液を撒いてやったのさ!」
「おかげでダンジョン荒らされまくりだぜ。
今度はあのミミズ退治するのに
大変だったんぞ!ああ!!」
「だからセンスがないと言うのだよ。
ゾンビワームが土壌をも
掘り返したおかげで
水はけだって良くなったろうに、
おかげでキミのダンジョンの土壌は
随分豊かになったんじゃないかい?
ならむしろ、感謝してもらいたいねぇ」
「ぐぬぬ、この変態サイコ!
とにかくおの前やり方は過激だし
変なオプションつけるし!
とにかく気に入らねぇ!!」
因縁、浅からぬ二人が口論を
続けている様子を
ルロイはあたふたと宥めすかし、
ギャリックは面白おかしく対立を煽り、
アナはモリーといつも通り
和やかに談笑している。
アナは健気にも工房に寄ったついでに、
モリーの仕事を手伝っている。
この場に居ないディエゴはというと、
深淵の鉱床にて自らが食いきれなかった
ミツダケを採取しがめつくも
どこぞの道具屋へ
転売しに行ったのだった。
リーゼとアシュリーの口喧嘩は
益々ヒートアップしつつある。
「貴様もう許さん!
表出てアタシと勝負せいや!」
「あーだから、
そういう理性的じゃない煽り。
私は興味ないんだって……」
アシュリーを煽るのも飽きたと見え、
リーゼはルロイに向き直り
深淵の鉱床から持ち帰ったものを
しげしげと眺めている。後ろでは、
ギャリックに肩を押さえつけられ
ながらも自分を無視するリーゼに
食って掛ろうとする
アシュリーが腕をぐるぐる回して
何やら喚き散らしている。
「ミツダケねぇ……」
作業台に証拠となりそうな品々を
目の前にリーゼはまず
ダンジョンで採取した土を
薬液の入ったビーカーに突っ込んだ。
意外なことに、超レアものとされる
ミツダケを見てもリーゼは
いつものようにときめかないらしい。
「あまり、興味が湧きませんか?」
「前に見たことがあるんだ。
もう十年以上前になるか」
今度は土くれに混ざっていた
水晶の欠片のようなものを、
実験器具らしきガチャガチャした
レンズで観察しながらリーゼは呟く。
「やはり、シルキースライムだ。
これはそのスライム核の残骸さ」
「シルキースライム?」
「絹の様に白く滑らかな体を持つ
スライムの変異種
つまりはレアものさ。
そして、絹の様に希少だからこそ
この名が付いた」
「なるほど……」
「シルキースライムは鉱物のしみ込んだ
鉱山跡なんかに潜んでいるんだが、
大雨や洪水なんかで鉱山の立て坑に
水が浸入すると大量発生する事例が
古い資料で報告されている。
つまりどういうことか分かるかい?」
リーゼの後ろでは、
アシュリーがギャリックに
作業台を挟んで向かい合い、
腕相撲で負かされながらも
何度も挑戦して憂さを晴らしていた。
モリーはアナと喋り疲れてか
茶とお菓子を持ってきて今度は
ギャリックやアシュリーも交えて
歓談し始めた。
一方ルロイは渋い顔をして
考えあぐねていた。
シルキースライムが湿度や
土壌の水分が多い深淵の鉱床で
大量発生した事まではいい。
それとミツダケとの因果関係は
どこで繋がるのか。
もしや――――
ルロイの表情を見て、
悟ったリーゼが微笑む。
「そう、ミツダケが超レアものとされる
理由。それはそもそもこのレアもの
であるシルキースライムにのみ
寄生することで成長する特質ゆえなのさ」
「そのスライム核は、
ミツダケが生えていた土壌の
すぐ近くにありました。
ミツダケがシルキースライムの核に
寄生し成長するなら……」
ルロイは自ら持ち帰ったミツダケの
ツボの部分を指先で割いてみた。
「ご名答」
目を細めるリーゼの先には
ミツダケのツボに埋まっていたもう
片方のスライム核の破片だった。
「こっちのほうも、答えがでたようだ」
リーゼは先ほど土を入れた
ビーカーに目を移した。
ビーカーの中の薬液は
乳白色に輝いていた。
「この反応は、シルキースライムが
好む土壌だってことさ」
ルロイは目を輝かせる。
「ちょうど三か月ほど前だったかね。
レッジョは突然の台風に見舞われて
危うく洪水で街が水没しかけたっけ?
種付けおじさんとやらが現れたのは
ちょうどその台風の前日だったと
私は記憶してるんだがね」
リーゼがルロイにウィンクしてみせる。
ようやく、種付けおじさんを
仕留めるカードが出そろった。
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