放課後、君の知らない顔

二酸化炭素を吸う人

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恋人編

お泊まり

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季節は少しだけ進んで、秋の気配が近づいてきた頃
教室の窓から差し込む午後の陽が、蓮の髪を柔らかく照らしている。
ふと、陽翔はその横顔を見つめた。まだどこか夢みたいだった。隣に連がいて、自分の彼氏で、名前を呼べば振り向いてくれる。
「....なに?」
蓮が、ノートをめくる手を止めて、目を細めた。少しだけ困ったような、でも優しい笑み。
「んー、別に.....。ちょっと見てただけ」
「そういうの、恥ずかしいからやめてって言ってるじゃん」
そう言いつつも、蓮の耳は赤くなっていた。
熱を帯びて告白したあの夜から、二人の距離は確かに変わった。
だけど、付き合ってもは相変わらず照れ屋で、素直になれないままだ。
それが、陽翔にとってはたまらなく愛しかった。
昼休み。
「なあ、蓮」
校舎裏のちょっとした空間。体育館の影に隠れるようにして、二人だけの時間を過ごしていた。
「....ん?」
「今日、蓮の家行ってもいい?」
「....別に。俺んち、なんもないけど」
「それでもいい」
陽翔の言葉に、蓮はふっと目を逸らした。
「....そういうとこ、ずるいよな、お前」
「え?」
「そうやって.....すぐに、俺の心の中に入ってくる」
それは、蓮の本音だった。
陽翔は優しすぎて、まっすぐで、怖くなる。
こんなにも誰かを好きになるのは、初めてだった。
「なあ、蓮」
陽がぽつりと呟くように言った。
「僕、まだ好きって言ってもらってない」
蓮は、ぴたりと動きを止めた。
静かに、心の奥がざわついた。
あのとき。
熱に浮かされて、無意識に言った“好き”を、なかったことにしたのは蓮の方だった。
「....覚えてたんだ」
「うん。ずっと、言われたときのこと、考えてた。嬉しかったし、でも一一」
陽翔は笑った。だけど、その目はどこか寂しげだった。
「本気じゃなかったのかなって。不安になって、ちゃんと聞きたかった」
その一言で、蓮の胸が締めつけられる。
ずっと、陽翔の優しさに甘えていた。
自分から気持ちを伝えなくても、きっとわかってくれると思ってた。
でもーー
「ごめん」
「え?」
「....俺さ、あのとき....本気で、陽翔のこと、好きって思ってた。怖かったんだ。気持ちがバレるのも、変わっちゃうのも。だから、逃げてた」
陽翔の目が大きく見開かれる。
「今も、怖い。でも....陽翔のこと、好き。ちゃんと、今の俺の気持ちとして、言いたい」
小さく震える声で、蓮が言った。
「俺、陽翔のことが好き。すっごく、好きだよ」
陽翔は何も言わず、蓮の手をそっと取って握った。
「ありがとう。僕も、好きだよ、蓮」
それだけで、蓮の目に涙が滲む。
こんなにも心が満たされて、優しくなるなんてー。
その日、陽翔は蓮の家に泊まった。
まだ何もない、ただ隣で寝るだけの日だったけど、二人にとっては特別だった。
「....陽、起きてる?」
「うん」
「また、言ってもいい?」
「.....うん」
「好きだよ。おやすみ」
「僕も。おやすみ、蓮」
静かな夜の中、二人の“好き”が繰り返されて、重なって、確かになっていく。
これからもっと、たくさんの季節を、一緒に越えていく。
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