放課後、君の知らない顔

二酸化炭素を吸う人

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馴れ初め編

教室の端、二人の距離

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昼休みの教室。佐伯陽翔が笑いながら友達と話している。その少し離れた窓際、藤堂蓮は一人、イヤホンで音楽を聴いてる。
(また一人でいる。藤堂くんって、ほんと不思議。誰かに話しかけられても最低限の返事しかしないし、ずっと無表情で…でも)
陽翔は横目で蓮をちらりとみる。
(たまに、窓の外見ながらもすごく悲しそうな顔してるんだよね)
蓮は視線に気づいて、少しだけ視線を上げる。陽翔と目が合う。
〔…また目が合った。佐伯、また見てた。なんで。オレ、別に…なんもしてないのに〕
蓮が目線をそらす。
〔どうせ“怖い”って思ってるくせに。笑うなよ…〕
陽翔は少し迷ってから、蓮の元へ近づく。教室がざわめく。
(こんなことしたら、周りに変に思われるかな。でも…)
陽翔はにっこり笑って言った。
「藤堂くん、お昼一緒に食べてもいい?」
〔…は?…なんで?オレと?わざわざ…?〕
「….別に、いいけど」
周囲がざわつく中、二人は机を並べて弁当を広げた。陽翔の弁当は手作りらしく、カラフルで美味しそう。
〔…なんだよその弁当。めちゃくちゃちゃんとしてんじゃん〕
蓮は小さく呟く
「…それ、手作り?」
「姉ちゃんが作ってくれてる。蓮くんは?」
蓮は少し驚いたように、目を見開いた。
〔今、オレのこと…“蓮くん”って呼んだ?今まで誰もオレの名前なんて呼ぼうともしなかったのに…〕
思わず口元が緩みかけて、慌てて視線をそらす。
「…買ったやつ」
陽翔は微笑む。
(あ、今ちょっと笑った。…こういう顔、するんだ。やっぱり、怖くなんかないよ。みんな見た目で決めつけてるだけだ)
「よかったら、卵焼き食べる?甘いけど」
〔…優しすぎだろ。こういうやつが、一番…嘘つきだったりするのに〕
「…いらない。けど…ありがと」

ーー放課後の屋上
陽翔がひとり、屋上で風に吹かれていた。そこへ蓮がやってくる。
(あれ、藤堂くん….?なんで?)
「どうしたの?」
「そこはオレの場所だ。毎日放課後はここで寝てる。だから、そこどけ」
〔あー…なんでオレはまたこんなきつい言い方したんだ。またお前に会えて…変な感じだ〕
陽翔は驚いて、ふっと笑う。
「それはごめんね。じゃあ僕は邪魔しないようにもういくね」
〔は?なんで。どこ行こうとしてんの?〕
「待て。別にここはオレだけの場所じゃねぇし、お前も居ていいんじゃねぇの?」
「本当?ありがと。じゃあ隣座らせてもらうね」
「なぁ….陽翔、って呼んでもいいか」
陽翔の目が見開かれ、そして少しだけ頬が赤くなった。
(初めて藤堂くんに名前、呼ばれた。なんだろ、なんか嬉しいな)
「うん。呼んで。蓮」

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