放課後、君の知らない顔

二酸化炭素を吸う人

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馴れ初め編

すれ違いの午後

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蓮は教室の席で、珍しくそわそわしていた。
〔何やってんだ、俺。朝からずっと佐伯のこと気にしてんのか?昨日あんな風に話したくらいで…浮かれんな〕
ドアの方をチラリとみる。
〔でも、あいつまだ来てない…いつもより遅い。なにやってんだよ〕
ようやく陽翔が教室に入ってきた。でもその顔はどこか疲れていて笑顔がない。周囲の友人に挨拶しながらも、目は蓮の方を見ない。
〔...なんだ、無視か?昨日、あんだけ喋ったくせに.....やっぱり、あれば”気まぐれ”かよ。....そうだよな。あんな、陽の中にいるやつが、オレと.....〕
陽翔は笑顔を作るようにして周囲に話しながら、蓮の机の前を通り過ぎた。
(...ごめん、見れない。昨日、あんなに心が動いてしまった自分が怖い。名前を呼ばれただけで嬉しくなるなんて、知らなかった。....こんなのおかしいよ。でも今、連くんの顔、見たら....たぶんまた期待しちゃう)
昼休み。陽翔は教室を出て行った。蓮はその背中を見て、我慢できずに追いかけた。
屋上。陽翔は一人ベンチに座って、空を見上げていた。
ドアが開く音。振り返ると、蓮が立っていた。
(....来ないでよ。来てほしいくせに、そう思っちゃう。よわいところ、見せたくないのに)
「....どうして来たの?」
〔そんな顔、すんなよ。....泣きそうな顔。いつも明るく笑ってたお前が、なんで.....〕
「お前、今日.....なんか変だ。昨日までと、全然....違う。」
陽は少しだけ笑って、言った。
「....そう?そう見えるなら、蓮くん僕のこと、ちょっとは気にしてるってことだね。」
〔今、”連くん”って、また.....〕
「.....別に、気にしてなんかない」陽翔の目が、少し揺れた。
(突き放された.....そっか、やっぱり、僕の気のせいだったんだ。蓮くんは、僕のことなんて、別に....)
「....だよね。ごめん。」
蓮はきゅっと拳を握った。
〔違う。違うんだ。突き放したいわけじゃない。でも、こんな気持ち.....どうすればいいか分からないだけ〕
「....お前が、他のやつと話してるの、気にしてた。ずっと。見てた。....それで....昨日みたいに笑ってくれなかったから......」
陽翔が息をのんだ。
(え.....今、なんて....?)
蓮は真っすぐ目を合わせる。
「....オレ、お前の笑顔、好きだったんだよ。....知らなかった、こんな気持ち。だから、戸惑ってただけなんだよ。」
陽翔の目が、じわっと潤む。
(そんなふうに、まっすぐ言うなんて..反則だよ。....蓮くん。)
「...じゃあ、また笑っていい?君の前で。」
連は、ゆっくりうなずく。
〔やっと笑ってくれた。…その笑顔が見たかったんだよ〕
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