放課後、君の知らない顔

二酸化炭素を吸う人

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馴れ初め編

手のひらと鼓動

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それから、ふたりは放課後になると、教室を出て屋上で並んで座るようになった。誰にも知られないように、そっと。
この日も、夕日が落ちる前のオレンジ色の空の下、蓮と陽翔は肩を並べていた。
(最近、学校の中で一番安心できるのは....蓮くんの隣だって気づいちゃった。)
ふと、横顔を見る
(目つきは鋭いのに、風に揺れる髪とか、ちょっと赤くなってる耳とか......すごく、可愛いって思ってしまう自分がいる。)
蓮は、ふいにため息をついた。
〔....なんで、毎日こうして話してんだろ。話すのは苦手なのに、こいつの前だと....怖くない。むしろ、もっと声が聞きたくなる〕
小さくつぶやく
「....家、帰りたくねえな。」
陽翔はそっと顔を向ける。
「なんで?」
「...うるせえから。誰もオレのことなんて見てねぇし。.....顔も合わせたくねえ。」
(あ.....なんだろ、そういうこと....話してくれるんだ。くんも、ひとりだったんだ)
陽翔は、ふと目を伏せた。
「....僕も、実はね。家って、ちょっと苦手。」
連が、驚いたように彼を見る。
〔....ウソだろ?お前みたいなやつが、そんなこと.....〕
「両親、すごく厳しくて......”いい子“でいないと、価値がないみたいに育てられた。ずっと、誰かに認められたくて、笑ってるの。」
蓮は、そっと口を開いた。
「....じゃあ、お前の笑顔って....無理してんの?」
陽翔は静かにうなずく。
(....誰にも言えなかった。こんなこと。でも、蓮くんなら....黙って聞いてくれるって、思ってしまった)
蓮は迷うように手を伸ばしーー
けれど、途中で止めた。怖くなった。
〔....触れたい。大丈夫って、言いたい。でも、怖い。もし拒まれたらーー〕
そのとき、陽翔が蓮の手に、自分の手を重ねた。
ぴたり、と指先が触れる。
〔....震えてる。連くんの手。でも…あったかい)
蓮が目を開く。けれど、手を引かなかった。
〔…触れてる。怖くない。むしろーー泣きそうだ〕
沈黙の中、風が二人の髪を揺らした。夕焼けが、まるでふたりだけを照らしているみたいだった。
陽翔が、そっと微笑む。
「…蓮くん、ちゃんと優しいね」
蓮は、ほんの少しだけ笑った。ほんの少しだけ、声を震わせながら。
「お前だけ、だよ。そう言ってくれるの」
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