放課後、君の知らない顔

二酸化炭素を吸う人

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馴れ初め編

好き、なんて言ってない 前編

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蓮の部屋
風邪で学校を休んだ蓮の部屋。体温計が示すのは38.7度。布団の中、額に冷えピタ、横には水の入ったコップと未開封のポカリ。
親は不在。蓮は一人、寝汗をかいていた。
〔.....さみい。いや、暑い.....?もう、わかんね.....〕
うわごとのように。
「…あいつ…」
ピンポーン。
ぼんやりとした意識の中で、玄関チャイムが鳴る。
意識朦朧のままドアを開ける。
「.....入るね、蓮くん。」
顔をのぞかせたのは、陽翔だった。
右手には買ってきたスポドリと、おかゆの入ったタッパー。
制服のまま、息を切らしている。
(良かった....鍵、開けてくれた。部屋、暗い。やっぱり、ひとりきりだったんだ。)
ベッドの横に膝をついて
「....蓮くん、大丈夫?」
蓮は、ぼんやりと目を開ける。陽翔の姿を見て、ほんの少し目を細めた。
「....なんで.....来たんだよ.....」
「来るに決まってるでしょ。放課後、いなかったら、変な感じするって.....心配にもなるよ。」
〔....来なくていいのに。いや.....本当は、来てほしかった。会いたかった。....会えて、よかった。〕
陽翔が額に手を当てる。
「...熱、下がってないね。動かないで、今、氷枕つくるから。」
動こうとする陽翔の袖を、蓮の手が掴む。
「.....行くな。.....ここに、いて.....」
陽翔の動きが止まる。
(....もう。反則。そんな顔、するなんて....)
「....うん、いるよ。ずっといる。」 
陽翔は手を握ったまま、ベッドの脇に座り、蓮の髪をそっと撫でた。
蓮はその手に顔を寄せるようにして、微かに口を動かした。
「.....陽翔......」
「.... うん、ここにいるよ。」
蓮の目がふっと閉じる。寝ぽけた声で一ー
「.....好き.....」
陽翔は息を止めた。
(.....今、好きって。嘘......だよね?熱でうなされてるだけだよね?でも....でも.....嬉しい....。こんなにも、嬉しい)
胸が苦しいほど締め付けられて、涙がにじんだ。
言葉にならず、ただ、そっと蓮の頬に触れた。

翌朝ーー
陽翔が帰ったあと、目覚めた蓮は、自分の記憶に曖味な違和感を抱いていた。
〔....昨日、誰か来たような気がする。....夢だったのか?いや、違う。陽翔の匂いがする....〕
顔を赤らめて
〔まさか.....オレ、何か.....言ったか.....?〕
胸の奥が、焼けるように熱かった。
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