勇者だって魔王だってホームに入るモン

第一章 勇者も魔王も老人ホーム

No.1

ここは魔法が存在する世界。
人間の住む世界に魔界の門が開き、人間世界に魔族が住むようになって約1000年。
生きるため、守るため数多くのハンター達がこの大都市スパーク・リッジから誕生し戦い生きてきた。

そしてどの生命も平等に訪れる『老い』というものがある。
ここスパーク・リッジの中心地に一つの施設があった。
『英雄老生笑ホーム』えいゆうろうきしょうほーむ
いわゆる、老人ホームだ。

ここで働く一人の新米介護士の少女がいた。
名をシアン・レインクレストという。

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？「シ、シアンちゃんや」
シアン「はい、どうしましたか勇者さん」
8代目勇者「お茶がの、無くての」
シアン「ふふ、いまお持ちしますね」

8代目勇者のセドリック・アイアンウォールは今年で99歳。
かつては魔王すらも恐れるほどの力を持ち一国にとどまらず世界でも名を馳せていた勇者だ。
190cm程あり逞しかったが数年前に足を悪くし特注の大きな車椅子を使う生活をしている。
最近では少し物忘れも増え、耳も遠くなってきた。

シアン「お茶お持ちしましたよ勇者さん」
セドリック「おや、誰だったかな」
シアン「シアンです。お茶ですよ～」
セドリック「なんじゃって？」

ふふっと、優しい笑みを浮かべながらお茶を渡す。

？「シアン!今日から入居の方のお迎えお願い!もうすぐ入口に到着するって内線入ったから!」
シアン「あ、はい!わかりました!」

先輩介護士のサイラス・アーケンミア
隣国バブルブルクで宮廷魔道士をしていた経歴を持つ。
姉御肌の優しい人柄である。

シアン(今日から入居の方、元⋯え、魔族の魔王!?)
少し不安を抱えながらもまもなく訪れるという入居者の下へ向かった。

この施設ができる少し前人間族、魔族、精霊族など各種族で一つの協定が結ばれた。
【各種族での悲しい争いや死を無くすために同種族、他種族に限らず争いを禁ずる。】と。
そして【各国、各種族の差別をなくし支え合う】と。

今では人間界で少しずつ魔族が街に住み歩いてる所をよく見るよえになってきた。
でも、この施設に魔族が⋯まして魔王が入居するという。